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住めば都とは良く言ったものである。

ダンジョン攻略を禁止された日からギルドの活動は一旦休止し、メンバー全員が各自チカラを磨きその時を待とうと決めてから5ヶ月。


怪我のリハビリを行いながら、実家にて半同棲のような形でユイと日々検証を続けていたハジメの下に届いた一通の手紙。


なぜかユイ宛の手紙も届いており、不思議に思いつつ検証を中断して手紙を開けてみる。


差出人不明の手紙は、ダンジョン攻略を諦めていないのならば指定の日にその場所に来い、という内容だった。


とりあえずカケルに連絡を取ってみれば、ギルドメンバー全員に同様の手紙が届いているらしく、差出人は不明らしい。


ユイと顔を見合わせながら互いに首を傾げてみるも、心当たりが無い為に判断のしようがない。


ただ、ユイがこの家に居ることはちょくちょく顔を出しては飯を食っていくメンバー以外では知っている人間はいないはずなので、カケルの悪戯だろうと判断し、カケルに参加すると伝えておく。


「一体なんなんだろうね?」

「カケルはいつも突飛な思いつきをするから予想付かないよね。そんなことよりリハビリの時間だから行くよ。」


すっかり家に馴染んだユイは両親に気に入られ、今では母から料理を習う為か仲良くキッチンに並んでる姿を見るほどである。

そんなユイの先導の下、未だぎこちなさの残る左腕のリハビリを行なう為に病院へ向かう。


怪我自体は癒えたが、大きく抉られた左肩の怪我によって動きのぎこちなくなった左腕。

それのリハビリついでに行われた食事改善により、半年前と比べると20キロ近く落ちた体重は身体に軽やかさを取り戻した。


献身的に支えてくれるユイの後押しもあり、根気強く続ける事が出来たダイエットもリハビリも上手くいっていて順風満帆だった。


ただ、海外でのスタンピードは未だ各地で猛威を振るっており、それに伴い貿易等に莫大な被害を与え、日々の生活にも支障をきたしていた。


電気供給から食糧不足、上下水道までも制限された生活に変わり、ダンジョン攻略及びスタンピード鎮圧は急務とされていた。


「ユイ、もしカケルが海外のスタンピード殲滅に動くって言ったらどうする?」

「ん?そりゃ付いて行くに決まってるじゃない。どっかの誰かさんが直ぐ怪我しちゃうから心配だしね。」


病院でのリハビリを終え、二人で歩きながら他愛ない話で笑いながら穏やかに過ごしていく。

激動の足音が背後に迫るのを静かに感じながら。


指定された日付けが来た。

場所は高級料亭の一室で、久しぶりに全員揃う事となったギルドメンバーと状況報告をしながら差出人の登場を待つ。


現れたのはくたびれたスーツの男、和田。

ダンジョン対策本部にて責任者として所属していたが、橘の謀略により失脚した男。


対策本部絡みの話ならと席を立とうとすれば、待ったの声が掛かり浮かせた腰を一旦下ろす。


「いやいや、各人忙しい中集まって貰ってすまないね。私は対策本部を辞めて今は別の組織に所属しているんだよ。」

「で?要件はなんなのかって話だよ。差出人不明なんていう回りくどい方法で俺たちを呼び付けた以上は相応の話なんだろ?」


ズバッと斬り込むカケルに話しは早いと要件を伝えてくる。


和田は対策本部を辞めた後に、そのコネクションを買われ別の組織に加入したらしい。

その組織は完全実力主義という自由度の高い組織であり、権力的にも世界規模で展開するほどに組織の規模は大きく強い。

そこでギルドの力を使いのし上がろうという話だった。


上品な味付けに舌鼓を打ちながらユイから酌を受け普段は飲めない良い酒を堪能する。

他の三人も勝手気ままに食事を楽しみ、唯一真面目に話しを聞いているのはカケルのみ。


「それで?どんなメリットがあって、どんなデメリットがあるの?一回痛い目に遭わされてる以上はそれなりに譲歩してもらうよ?」

「対策本部での件に関しては申し訳無かった。橘の暴走は予想していなかったというのは言い訳になるが、次は絶対大丈夫だから。まずメリットでいうなら、ダンジョン攻略の許可と探索結果によっては賞与がある。また、提携施設や物資の提供なんかも条件付きである。デメリットは実力主義な面がある以上、評価に値しないと判断されれば組織を脱退させられるのと、一定数の探索物資の提供が要求されることくらいか。契約内容を見返しても不備は無い以上、絶対に後悔しないはずだ。勿論、君たちがまだダンジョン攻略を諦めていないなら、だがね。」


話しを聞いた限りでは非常に良い条件ではある。

だが、決定権をカケルに委ねている以上はカケルが判断するのを待つのみ。

ただ待ってるのも暇だから沸々と美味しそうな鍋に手を伸ばせば、動かしづらい左腕をフォローするようにユイがよそってくれた鍋物を食べる。


口の中でホロホロと解れていく白身の旨さと良い意味での雑味が味わい深く、非常に美味しい。

隣のユイと美味しいね、なんて話していればカケルからの冷たい視線に若干の居心地の悪さ。


「どうかな?君たちがダンジョン攻略に集中出来るように僕が最大限にフォローに回る以上は、これまでのような対策本部からの面倒な絡みも来ないはずだ。」

「...受ける。が、給与なんかの細かい数字や補償の内容、あとはギルドの扱いなんかで契約を詰めてから最終的な判断をしたい。」


心の底で燻っていた熱い感情が再び熱を取り戻すのを感じる。

そんな変化に気が付いたユイが心配そうな視線を寄越すが止まれない。


「ユイ、これからも隣で俺を支えてくれるか?」

「はぁ、どうせ止めても止まらないんでしょ?良いわよ好きにして、でもあんまり無理はしないでね。」


ほんと申し訳ない。

きっと俺は無茶をするだろう。

カケルの可能性はボス級のコボルトを討伐する際に見せ付けられた。

燻っていた期間にタモツは魔法を発現させ、リュウは刻印の拡張と効率化に成功し戦力を大幅に伸ばし、メグは魔法への理解を増していきその技能を更に特化させた。

そしてユイも自身で考えた魔道具によって強力なチカラを得た。


あの日から変われてないのは俺一人。

これから激化していくであろう戦いに現状で成長限界を迎えた俺が立ち向かうのだ。

多少の無茶をしなけりゃ付いていけない。


決意を新たにカケルを見やれば悪巧みしてる顔。

また何かやる気か、と思っていれば何事もなく終わる会談に安堵する。


その後で美味しい料理を腹一杯に楽しみ帰路に着けば、数日後に連絡が届く。

組織への正式な加入と新しい拠点への移動だ。


今では父の会社が消滅してしまったが故に金銭的な部分で厳しい部分もあった為に賞与が出るのはありがたい。

両親にそれらを告げれば名残惜しそうに見送りをしてくれた。

別れ際にユイに一言二言告げていた内容は聞こえないフリをして、急ぎ拠点へ移動する。


途中から合流した他のメンバーと和田に案内され付いたのは人里離れた場所にあるダンジョンの入り口。

あれ、と思いつつ足を進めればその先にあるのはプレハブ小屋が数軒。


メグの顔が強張りつつあるのを見て見ぬ振りするも、流石に生活するには不便そうではある。


「到着。今日からここが俺たちのきょ「有り得ない、帰る。」てん、おいおい待てって、今はこんなだけどすぐに立派な拠点作らせるからさ、なっ今はこれで勘弁してくれって。」

「実力を示せばすぐにでも環境は改善される。今は最底辺の扱いだが辛抱してくれないかな。」


「...スタンピードの時のボス級の魔石を売れば実力の証明になる、すぐにするべき。」

「ごめんメグ、私が使っちゃった。」

「...ユイの馬鹿。もういい、すぐダンジョン攻略して実力を見せつけるべき、工事を始めるのは早い方が良い。和田さんすぐに業者呼べるようにしといてね。」


いつも以上に饒舌でやる気に満ちたメグが早速ダンジョンに向かおうとするのを、カケルとユイがどうにか押し留めてダンジョン攻略は明日からという事で納得させる。


和田もメグの異様な圧力にすぐさま業者側に発注を掛けられるように部下に連絡をしていて、思わず苦笑いを零す。


割り当てられたプレハブ小屋に入ってみれば、最低限の設備があるだけの普通のプレハブに少し落胆しながらも、移動で疲れた身体を休める。


少しだけと思い目を閉じれば、起こされた時は夕暮れ間近。

暗くなると風呂が大変と言われ急ぎ風呂に向かえば、ちゃちなプレハブ小屋とは比べ物にならないほどに立派な露天風呂。


「どうよ、なかなかだろ?」

「おいまさかとは思うが、露天風呂に金掛け過ぎてプレハブ小屋になったなんてオチじゃねぇだろうな!?」


自慢気に鼻の頭を擦るカケルを問い質せば、案の定初期の資金の半分近くを露天風呂の改造に費やしたというんだから、行き過ぎた遊び心は中々に困ったものである。


ただ、金を掛けただけあって相応に立派な風呂を満喫してユイの作った晩飯を食べれば意外と居心地は悪くない。


ユイも露天風呂の出来に満足したのか、機嫌が直っていて流石はカケルと思いながらダンジョン攻略前夜が終わる。


そして朝を迎える。



ニートのダンジョン攻略記。

遂に迎えたダンジョン攻略。

半年の期間燻っていたギルドのメンバーはやる気十分でダンジョンへと挑んでいく。

そこに待つのは一体どんな試練なのか。

次回、押すな押すなはフリじゃない。

乞うご期待。

どうも源助です。

ようやくダンジョン攻略に辿り着けました。

誤字脱字、定まらない文章、不定期な更新なこの作品をここまで読んでくださった方には感謝しかありません。

色々と突っ込みどころ満載な作品ですが、これからもよろしくお願いします。

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