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タモツの意地とカケルの決意。

一体どれくらいの時間が経っただろうか。


無限にも思えたコボルトの群れにひたすらに炎弾を放ち続け、ようやく途切れ始めた頃には魔力は枯渇寸前で息も絶え絶え。


周りを見れば他のメンバー達の戦闘はまだ続いているようで、地面に落ちているコボルトの魔石を幾つか拾い援護へ向かう。


コボルト達は一斉に退却を始めたようで、援護に駆け付けた頃には数えるほどの敵影しかなく窮地を凌いだ事に安堵する。


多少の怪我はあるが、メンバー全員が無事に生き残れたのは今回の戦いの危険度を考えれば十分過ぎるほどの成果であり、厳しい表情を浮かべていたカケルの顔にも柔らかさが戻っている。


「正直言って予想以上の勢いだった。カケル策はあるの?」

「何言ってんだハジメっ!あのボス級を片付けて殲滅するしかねぇだろうが!アレ使えよ。」


戦いを終えたばかりで気が高ぶっているのか、少し怖いくらいにリュウが声を荒げて意見を通そうとするが、それに噛み付くのがユイ。


「また何日もハジメが昏睡状態になったらどうするのよ。リスクが大き過ぎるわよ。」

「ならどうすんだっって話しだろうがっ!」

「俺の為に争うのはやめてっ!」


嫌な雰囲気をどうにかしようとしたけど、見事に撃沈した。


「なははっ、とりあえずは現状維持で次の襲撃に備えてってとこだな。タモツ明かりの準備はどんな感じよ?メグはひと休みしたら斥候よろしく」


唯一笑ってくれたカケルが次々と指示を出していけば、それぞれ動き出す。


「さて、実際どうしようかね。」

「カケルとしてはどうなの?俺はケセラセラしか無いなら多少のリスクは構わないけど?」


うーむ、と唸りながらも作業の手を止めないカケルが出した答えは、危機的状況でのみ使用可というものだった。


「ユイの言った通りリスクが大きいからっていうのが建前で、現状を変える為には魔石が大量に必要だから使用は最小限でいきたいってのが本音だな。」

「それ俺に言っちゃダメなやつじゃん。」


なははっ、と笑いながら手早く済ませてしまった補修作業を切り上げて腹を満たせば夕暮れ。

お互いに態勢を整えたのち、二回戦が始まろうとしていた。


「初戦は痛み分け。次は圧勝とまではいかずとも押し切って勝つ!気合い入れてけよっ!!」

「「応っ!!」」


多少なり数を減らしたとはいえ、未だ数百体は残っているコボルトの群勢を正面にすれば相当な威圧感を感じる。


コボルト達の奥にちらりと見えるボス級のコボルトに狙いを定め、こっそりと開発していた大技を放つ。


炎塊。

コボルト魔石三つ分の魔力をふんだんに使用する現状で出せる最大規模の広範囲魔法。

文字通り炎の塊でしか無いが、その威力は易々とコボルト達を飲み込み焼き尽くす紅蓮の業火。


生成速度が遅い為に事前に察知されボス級には避けられたが、コボルトの数を減らし薄暗くなり始めた戦場を明々と照らしてくれる。


その一撃を合図に一斉に動き出すコボルト達を次々と打ち抜くメグの強弓は、一矢で数体のコボルトを倒していく。


それでも数の有利を活かしたコボルトの突撃は止まらず、抜けてくるコボルトを迎え撃つカケルとリュウの無双っぷりは凄まじいものがある。


相当な数のコボルトが拠点へと雪崩れ込んできた後はひたすらに乱戦。

目につくコボルト目掛けて絶え間無く炎弾を放ち続け、ボス級の襲来に注意を払う。


怒号と共に拠点に築いたバリケードが吹き飛ぶ。


その勢いのままに突っ込んできたボス級の攻撃をどうにか躱そうとするも、周囲を取り囲むコボルト達が一斉に詰めてきた為に逃げ道がない。


(やばいっ!!)


ケセラセラから剣を作り出し、どうにか致命傷は避けるも左肩から腹に掛けて浅くない傷を負う。


激痛が身体を動かす事を拒絶するのを気合いで抑え込み、炎弾を撒き散らしながら後退するも執拗に狙ってくるボス級から逃げ切れない。


溢れ出る血が意識を朦朧とさせ、痛みが集中を阻害する。

迫るボス級に炎弾をぶつけるも、集中しきれない状態では本来の威力は望めず止まる気配が無い。


振り下ろされた爪に終わりを悟れば、響く怒声と共に巻き起こる土煙。


痛みを覚悟して身体にグッと力を込めていたが、その痛みが来ない。


「遅くなって済まない。ここは俺が抑えるから一旦退いて治療を受けてこい。」


馬鹿でかい盾を構えたタモツが割り込み守ってくれた。

息を荒げて身体の至る所に細かい怪我を負ったタモツを見る限り、相当に無茶をして駆け付けてくれたのだろう。


「ごめん、助かった。」「いいから行けっ!!」


せめてもと思い周囲に炎を撒き散らしながら怪我の痛みに耐え後退する。

背後ではタモツが怒声を上げながらボス級を抑えてくれている。


急ぎ拠点の無事な場所へ転がり込めば、駆け付けたユイに遠慮なく消毒液をぶっ掛けられ悶絶。

歯を食いしばり痛みに耐えていれば、左肩からバッサリと切り裂かれた怪我に再度消毒液を掛けられ痛み止めをどんどん打たれる。

その後でホチキスで傷口を止められながら、傷跡残るからねっ、と涙ぐんだ顔できつめに包帯を巻かれていく。


「ごめん、無茶はしないつもりだったんだけど...もう行かないと、タモツが待ってる。」

「ちゃんと帰ってきてよ。」


行ってくるよ、と立ち上がれば涙ぐむユイに苦笑いを返しながら軽く口付けを交わす。


失った血は戻ってないし、人生史上最大の痛みは身体を動かすたびに襲ってくるが止まれない。


視界の先ではぼろぼろになりながらも必死でボス級を抑えているタモツがいる。


未だに他のメンバーはコボルトの群れを相手しているようで、ここにいるのは自分とタモツだけ。

タモツに群がるコボルトを炎弾で撃ち倒しながら、ケセラセラに願いを込める。


「すまないっ、この場に留めるだけでっ、精一杯だった。」

「十分助けられたよ、おかげでこうしてピンピンしてる。」


少しばかりの強がりを吐きつつ炎弾を次々と放っていく。

普通のコボルトは倒せるが、ボス級は表皮を焦がす程度で止められてしまいダメージを負わせられない。


膠着状態のままに戦いを続けていれば、フラリと現れたカケルが背後から強襲を掛ける。


金属同士をぶつけたような甲高い音と共に砕けるカケルの武器。

悪態を吐きながらこちらへ来るカケルも全身ぼろぼろで激戦だったことが伺える。


「そっちの戦況はどんな感じなの?」

「リュウが大暴れしてるから向こうは平気だな、それよかボス級倒さないといつまで経っても終わらん。」


折れた武器をその辺へ放り投げながらカケルが取り出した袋の中身は大量の魔石。


「ハジメ先生の力でいっちょすげぇ武器生み出してもらえば万事解決なんだけどな、ちらちら。」

「こんな状況で茶化すなよ。大事なのはイメージだから、強く想うことでチカラは形に変わる。」


よっしゃ、と気合いを口にして武器製作を始めたカケルをフォローするように周囲のコボルトを片付けていく。


多少疎らになり始めたコボルト達と魔力切れ間近で息切れしつつあるメンバー。

両者共に死力を尽くした戦いも決着は近く、それを悟ったかのように熾烈になっていくボス級の攻撃に必死で耐えるタモツ。


攻撃を受ける度に歯を食いしばり、血反吐を吐きながらその場を退かない必死な姿に感化されるように、残り少ない魔力を絞り出しながら炎弾を放ちコボルトを減らしていく。


「カケルまだかっ!!」

「くそっ、もう少しで掴めそうなのにっ」

「いっそ未完成を思い浮かべろっ!」


その瞬間に光を放つ大量の魔石に手を伸ばしたカケルが掴んだのは無骨な長剣。

飾り気は一切なく、一見すれば数打ちの安物にも見えるそれ手にしたカケルの顔は悪童のそれ。


「なるほど、流石はハジメ大先生。タモツ良く耐えた、こっから先は任せとけ。」


そんな言葉と同時にボス級へと切り掛かったカケルと入れ替わるようにして下がってきたタモツが崩れるようにして地面に倒れ込む。


ボス級をカケルに任せタモツへと駆け寄れば、ぼろぼろになりながらもどこか満足そうな顔。

すでに限界を超えていたらしく、意識ぼ無いタモツを守るようにコボルトを倒して行けば決着は早かった。


カケルの振るう長剣は易々とボス級の身体を斬り裂き、どういう原理か異様なまでに速いカケルの動きに翻弄されたボス級コボルトは呆気なく討ち倒される。


「それで未完成かよ、やっぱカケルは俺のヒーローだな。」

「なははっ、未完成の英雄か悪く無いね。しっかり付いて来いよ?」


そんな台詞を吐いて残ったコボルトの殲滅に向かうカケルの姿は既に見えなくなっている。

とんでもないチカラを手に入れたカケルに置いてかれないようにしなければ、と手渡されたボス級コボルトの魔石を手の中で遊ばせながらアイデアを練る。


血を流し過ぎて意識は朦朧としており、魔力切れ間近で眠気も凄まじい。

隣には意識不明で重体なタモツがいる。


相変わらずぼろぼろな決着に一人苦笑いしながら仰いだ夜空はいつも以上に澄んで綺麗だった。



ニートのダンジョン攻略記。

満身創痍になりながらも激戦を制したギルド。

その筆頭であるカケルが手にした未完成の聖剣は凄まじいチカラを秘めていた。

四国の地で発生したスタンピードは決着を迎えたが、未だ動きづらい状況の中でどうダンジョンに挑むのか。

次回、意外な弱点と超えられない壁。

乞うご期待。

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