激戦!コボルトの脅威。
昨日まで慌ただしく動いていた住民の人達も町から避難し姿は無い。
人が消えた町から2km離れた場所に築かれた拠点では、目前に迫る戦いを前にしてギルドのメンバーが最後の調整を行なっていた。
軽く身体を動かす者や武器を手入れする者、手にしたチカラを慣らす者などそれぞれが思い思いに動いている。
「ハジメ、緊張してるか?」
「そりゃするだろ。むしろこの状況で暢気に餅食ってるお前の心臓には毛が生えてるんじゃないか疑ってるところだよっ」
それもボーボーになっ、などとくだらない会話をしていれば解れる緊張にようやく落ち着く。
「なははっ!ちょっとはマシになったな、さっきまでウロウロして不審者見たいだったぞ?あ、ハジメも餅食う?」
「ひとつ貰おうかな。」
伸ばした右手には淡い光を放つ指輪。
先日、タモツの装備製作の為に核以外を失くしたケセラセラもメグの頑張りによって元の姿を無事取り戻すことが出来た。
その際にメグから、ペアリングは失くさないように、と有り難い説教を頂いたのは少しだけ意外だった。
「なぁ、カケルのそれって魔武器じゃないよな?一時期は聖剣だの魔剣だのと騒いでたのに諦めたの?」
「あーそれな。実は何度か試したんだけど上手くいかなくてさ、魔法纏わせたらそれなりに戦えるからそっち慣らすの優先してたら未曾有の魔石不足で足踏みしてるとこ。」
「あー、それは悪い事したな。次こそカケルの武器作り手伝うよ。」
苦笑いを浮かべながら返事をすれば、ひらひらと手を振り、別にかまわねぇよ、と返して来るカケルの顔が妙にニヤけている。
「それで?ユイとは最近どうなのよ。俺の武器作り断念してまでペアリング作りを優先したんだから、あっさり別れるなんて許さないよ?」
アホか、とニヤついた顔を叩こうと立ち上がれば聞こえてくる警鐘の音で一気に警戒態勢に移行する。
見張り台にいるユイの下へ急ぎ駆け付ければ、視界の隅に写り込む黒い群勢。
「おー、すげぇ数だな。とりあえずは作戦通りに動いて、イレギュラーが起きたら各自の判断で撤退ってことで、ひと暴れしましょうかー!!」
「「「了解っ!!」」」
各々が担当する場所に着いた頃には、はっきりと見えるくらいに接近したコボルトの群れが罠に掛かり隊列が乱れる。
その後も次々と発動する罠に混乱するコボルト達を一発も外れる事なく次々とコボルトを仕留めていくメグ。
負けじと接近してきたコボルトを豪腕の餌食にしていくリュウ。
盾を巧く扱いコボルト達を押し返し、時には押し潰していくタモツ。
全体を見ながら動きながらペースを守りながら戦況をコントロールしていくカケル。
各々がチカラを発揮した状況ではコボルト達は動く的のようなもので、戦況は圧倒的にこちらに傾いていた。
ここまでは全ては順調だった。
事前に確認出来る内容は全て把握出来ていたし、戦闘地点となる場所には数日掛けて築いた防備も整っていた。
いざ戦いが始まれば面白いほどに全てが機能して有利な戦況を作り上げた。
だからどこか油断があったのかもしれない。
たった一体のリーダーらしいコボルトの出現によって、烏合の衆と化していたコボルト達は軍勢と化し、その身体能力と数を活かした戦いを繰り広げ始める。
驚異的な身体能力で掘り下げた空堀は飛び越えられ、圧倒的な数を活かし最小限の犠牲で罠を乗り越え、末端まで統率の取れた動きはじわじわとこちらを追い込んで来る。
ギルドメンバーは分断されて、時折聞こえる轟音だけがメンバーの生存を知る唯一の手段。
目の前まで距離を詰めて来たコボルトを炎弾で倒しても、それが積み重なって壁となり死角を生み出し傷を負う。
限界に近い状況の中で、磨り減っていく精神と底をつき掛けている魔力が状況を更に悪化させながら戦いは続く。
ニートのダンジョン攻略記。
危機的状況の中に意地を見せるも限界は近い。
離れ離れになったメンバー達の状況も分からないまま孤独の戦いに未だ終わりは見えない。
次回、タモツの意地とカケルの決意。
乞うご期待。




