新たなチカラの正体。
完全に出来上がったリュウを筆頭に深夜まで続いた宴会も終わりも見え始め、メグとユイは割り当てられた部屋へと戻り、カケルもリュウの二人は文字通り酒に溺れて眠りについた。
「タモツ、風呂場で大したことないチカラだって言ってたけど、それの使い方は把握してるの?」
「ああ、これの能力は一つだけだからな。ハジメのケセラセラほどの汎用性は無いよ。」
二人の散らかした机を片付けながら、タモツのそんな話を聞けば検証担当の血が騒ぐ。
「その能力ってどういうものなの?」
苦笑いを零しながらグラスを傾けるタモツがポツポツと語りはじめる。
「ハジメは俺が元自衛官というのは知ってるよな?自衛官の仕事は様々だけど、俺が現役の時にした事は災害現場の救出作業だったんだ。意気込んで挑んだ現場は悲惨だったよ、地に倒れ臥す人や重篤な怪我を負い苦しむ人、何故助けてくれないのかと責め立ててくる人もいた。俺はそこで自分の無力さを知ったんだ。」
飲み干したグラスをそっと手放せば、次に手にしたのは未だ名も無きチカラ。
それの表面を指先でそっと撫でるようにすれば僅かに光を放つキューブ。
「それはカケルの呼び掛けに応えた後も一緒だった。モンスターにこれまで培った力は通じず、どれだけ守りたいと願っても魔法は発現しない。そんな中でも前に進むお前達が羨ましくて、妬ましくて、そんな事を思う自分が醜く思えてずっと苦しかったんだ。」
淡い光が解けるようにしてキューブが形を崩していけば、現れたのは勲章のような何か。
それを大事そうに握りしめるタモツの心中を察する事は出来ないが、その表情はどこか安堵したような風にも見える。
「ようやく戦う為のチカラを手に入れたんだ。お前の憧れがカケル達だったように、俺の憧れは自分のなりたかった自分。全てを守れるチカラ。」
チカラの発現。
タモツの魔力を糧に生み出されたのはタワーシールドと呼ばれる大きな盾。
頑丈さを感じさせる重厚な盾にはタモツの意思の強さがありありと感じさせられる。
「ハジメ、お前のおかげでチカラを得る事が出来た。使わせてもらったケセラセラの分も活躍してみせる。」
強い意志を感じさせる視線をこちらに向けながら熱い思いを口にするタモツを揶揄うわけにもいかず、頼りにしてるよ、と口にすれば大きく頷くタモツを見て少しだけタモツという男の評価を改める。
普段は寡黙で黙々と己の仕事を全うする男の中もコンプレックスを抱えており、自分と同じように大切に思う誰かを守る為のチカラを求めていたとは思っていなかった。
「願いをカタチにするのは相当な魔力を消費するから魔力切れには気をつけてね。さて、そろそろこの呑んだくれ達を片付けて明日に備えて寝ようか。」
「そうだな、リュウは俺が運ぶからカケルは任せるよ。」
酔い潰れた二人を担ぎ上げ、各々の部屋へと向かえば襲ってくる眠気に身を委ねそのまま眠りにつく。
そして朝がやって来る。
二日酔いで唸る飲兵衛二人をよそ目に朝食を済ませれば今日の日程をタモツが伝えて来る。
迫るスタンピードに備え防衛線を築くという肉体労働に残された時間を費やしながら、ギルド結成後初のスタンピードと対面することとなった。
ニートのダンジョン攻略記。
遂に対峙することとなったスタンピード。
それは予想通りの激戦となる。
その戦いで何を得て何を失うのか。
次回、激戦!コボルトの脅威。
乞うご期待。




