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絶体絶命!水洗トイレの落とし穴。

未だ目覚めぬ意識の中に微かな音が届く。

何度も繰り返される音にようやく覚醒しかけた意識が、侵入者により一気に覚醒を迎える。


-あらま、お邪魔しまーす。


目覚めたはいいが、現状の把握が出来ず気怠い身体が起き上がる気力を奪っていく。


次第に近付いてくる足音に、ようやく目覚めた危機感が慌てて身体を起こすも、起き上がる前に謎の訪問者が部屋の扉を開ける。


「お、起きてんじゃん。電話出ないから心配したんだぜ?」

「か、カケル?何でここのいんの?」

「ん?スタンピード殲滅とハジメの安否確認?」


あんな別れ方をしたというのに、こうもあっさりと再開してしまうと言葉も出ない。


次々と部屋へ入ってくる検証班のメンバーに驚きながら、どうしたものかと考えていれば、涙ぐみ駆け寄ってくる人影が一つ。


「何で電話に出ないの?心配したんだからっ!」

「え?あーうん?ごめんごめん、寝てた...うん、寝てたわ。」

「...今の間は何?もしかしてだけど、また倒れてたの?」


まずい。

非常にまずい。

怒っているのか、泣いているのか、俯向き僅かに肩を揺らす情緒不安定なユイの対処法が全く分からない。


そしてそれ以上に膀胱の限界が近い。


ジワリと滲み出た汗がポツリと布団へ落ちる。

ポタリと零れ落ちる涙が頬を伝う。


(こんな状況でトイレとは言い出せないよな?いやでも待て待て、人に見守られた状況でお漏らしってのは流石に社会的に死ぬ。どうする俺、どうしたらいいんだ!?)


「なぁに辛気臭い顔してんだよ!スタンピードも目前まで来てんだから気合い入れろって!!」


バシッっと背中を叩いてくるリュウによって部屋に漂っていた嫌な空気は消え去ったが、一つだけ懸念すべき事項がある。


不意に背に走った衝撃によって、僅かに洩れたのである。


何がとは言わないが、言葉を濁し表現するならば、大人の尊厳といったところか。


漏れ出た瞬間に慌てて下半身に力を込め、急ぎ立ち上がり一階のトイレへと駆け込む。


間一髪だった。

限界を一歩越えた先でどうにか尊厳は守られた。


安堵と共にさっさと流し去ろうと洗浄のスイッチを押すが流れぬ水に困惑する。

あれ?と思い何度も押すが反応しない水洗トイレに次第に焦りが出てくる。


(昨日まで流れてたよな?あれ?停電だけじゃなくて断水まで来たのか!?)


やや濃いめの黄色に染まった便器の中を見て、しばし考える。


こういう時は便器に直接水を流してしまえば、水圧とかそういう関係で流れる筈だ。


思い立ちすぐさま行動しようと思えば響くノックの音に汗が吹き出る。


「...入ってまーす。」

「...ん。なるべく急いで。」


まさかの人物が順番待ちしてる事実に更に吹き出る汗がいっそのこと流してくれないか、と馬鹿な事を考えるも現実は非情である。


「メグ、悪いけど水流れないからちょっと待っててくれない?」

「...?うん、分かった。」


ばたばた風呂の残り湯をバケツで汲み上げ、便器へと流し込めば流れていく様子にようやく安堵する。


「悪い待たせた。」

「...ん。こんな不便ならハジメも対策本部に来るべき、うん絶対そうした方がいいよ。」


妙に力強い頷きを見せるメグの新たな一面を見る結果となった朝の騒動は、ようやく落ち着きをみせた。


「さて、ハジメの家に来てこんな味気ない食事を摂るのは非常に遺憾である。故に我らは戦う事にしようか。」

「なんだよその理由は。」


カケルの下らない冗談と共に済ませた食事は、水無し電気無しの状況で作った缶詰定食である。


「さて検証班も勢揃いした事だし、こっから巻き返すとしましょうか。気合い入れてけよ野郎どもっ、なははっ!!」

「...野郎じゃないけど頑張る。」

「あたりめぇだ、とりあえず左腕にも刻印入れてくれや。」

「ハジメ、無理だけはしないでよ?」

「微力ながら力になろう。」


カケルの声に応える検証班のメンバーの一人一人の顔を見渡しながら決意を語る。


「前はさ、情けないとこ見せちゃって目指す場所から遠ざかっちゃう結果を招いちゃったから、正直まだ自信ないんだけどさ。一人になって色々と考えて、俺は検証班の一員で居たいと思ったんだ。情けない俺だけど、また仲間に迎えてくれるかな?」


「おう、おかえり。こっからは期待してんぜ?」

「任せとけよ、新しいチカラも手に入れたしスタンピード殲滅?デビュー戦に丁度いい相手だ。」


右手のあるケセラセラから伝わる硬い感触を信じ、強気な台詞を吐けば盛り上がる検証班のメンバーに御披露目をする事に。


「これが俺のチカラだよ、ケ・セラ・セラ!!」


銀の指輪から滲み出るようにして現れた魔力水がジワリと宙に広がり理想を形作っていく。


手の中で収束した魔力水が剣へと姿を変え、すっぽりと手に収まる。


「それが新しいチカラか?」

「そそ、まだ詳しい事は調べてないけど、とりあえず魔力水をベースにした武器を作り出せる魔装って感じかな?」


流石ハジメだな、と軽い称賛を受けながら気を締め直し今後について計画を練り始める。



ニートのダンジョン攻略記。

再び集結した検証班が目前に迫ったスタンピードを迎え撃つ為に作戦を練っていく。

ダンジョン攻略において最前線を走る彼らを待つ運命はいかに。

次回、ゴブリンの王現る。

乞うご期待。

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