危険な実験一人でするなっ!!
リュウが去ってから三日が過ぎた。
迫るスタンピードの脅威は変わらず、すでに自分の住む町にも被害が出始めている。
一番の被害は電力供給が断たれた事か。
明かりを失った町からは活力が失われ、わずかに残っていた人達も去っていった。
そんな中、スタンピードに抗う事を決めた男が一人、自室で黙々と準備を整えていた。
目の前にデンっと積まれた魔石。その数残り4個。
自分に合った武装を散々に考えてはみたが、これまでの妄想の中で生み出した武器は数知れず、それこそ星の数ほどに存在している。
その憧れに明確なカタチは無くて、思い描くたびに変化しその姿と中身を変える。
定まらないイメージに悪戦苦闘しては、魔石を魔力水へと変化させてしまい、リュウの残した魔石12個のうち8個は既に魔力水へと変化させてしまった。
「くそっ、もう魔武器を作るには魔石が足りない。」
手から零れ落ちる魔力水に焦りだけが募る。
流石に危険だからと両親も避難に参加させた今、残されたのはハジメ一人。
いつも優しく支えてくれた母も、厳しくも正しさを教えてくれた父もいない。
守りたい。
両親の帰る場所を、自分の家を、生まれ育ったこの町を。
残り一つとなった魔石を握りしめ、ただ願うのは現状を打破するためのチカラ。
手の中で輝きを増す魔石。
先程よりも強い輝きに目を見張れば、生み出されたのは魔力水。
零れ落ちる雫に落胆しながら、大量に作り出した魔力水を眺めながら思う。
これまでの人生は、いつも周りに流されるままに働いて、気が付けば心が擦り切れて逃げ出した。
自分が一番に輝いていたのはいつだっただろう。
有名な企業に就職を決めた時?
若手の中で割と早く昇進した時?
大きな仕事を任せられた時?
いや、違う。
誰かに言われてやる気を出してたのは、ただその場の雰囲気に流されていただけだ。
俺が一番輝いていたのはきっと、悪童の背に追い付こうと全力で駆けていた頃だ。
大人になって、社会という化け物に飲まれ、子供の頃の情熱なんか忘れていた。
あの頃の想いはもう風化して明確なカタチなんて残っちゃいない。
ならば、そのままを作り出そう。
カタチなんてものは言わば枠でしかない。
そんな枠に囚われてちゃ俺のヒーローには追いつけやしない。
変わらぬ憧れを不変の核として、形作るのは流され揺らぐ度に形を変える自分の意思。
これは俺である。
不安定な自分が描き出す形無き魔装。
「根底にある情熱さえ忘れなけりゃ、どれだけダメな状況からも何度でも這い上がれるさ。その可能性を今ここで創り上げるっ来いっ!ケ・セラ・セラっ!!」
魔石12個分という大量の魔力水が巻き上がり、その姿を変動させながらのカタチを成す。
その中心にある輝きに手を伸ばせば、指先から伝わる硬質な感触。
それは導かれるように右手に描いた刻印へと向かっていき、銀色のリングへと形を変える。
目の前に広がっていた魔力水が、右手のリングに吸い込まれるようにして消えていく。
(よしっ、出来たっ!!)
そう思ったと同時にぼやける視界と急激に襲ってきた脱力感に抵抗出来ないまま意識を失う。
-ぼふっ。
ハジメの大きな身体をベッドがしっかりと受け止めた音を最後に、スタンピードの迫る最前線の町からは音が消えた。
ニートのダンジョン攻略記。
性懲りも無くまた意識を失ったハジメ君。
以前のように火事を起こさなかっただけマシではあるけども、スタンピードはもう目前まで迫って来ている状況で呑気に寝ていて大丈夫なのか?
次回、目覚めのキスはご所望ですか?
乞うご期待!!




