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がっちり掴まれたら逃げられない。

リュウに周辺警戒を任せて帰路に着く。

帰り道の間に考え付いた推測を話すも、全く理解してないリュウに何度目かの溜め息が漏れる。


リュウが既に魔法を発現させているという推測はレベルアップだけでは説明のつかない戦闘力と刻印という新たな魔道具が証明しているのだが、当の本人は全く理解してないらしく曖昧な返事ばかりしか返ってこない。


家に着いた頃には、げんなりと疲れを見せるハジメと懇々と説明を繰り返され疲れた顔のリュウという疲れた姿の正反対な二人がいた。


「リビングから飲み物取ってくるから、とりあえずシャワー浴びて着替えて来なよ。」

「おう、何から何まで悪いなっ」


流石にゴブリンの返り血を浴びたままの状態で部屋で寛がれるのは困る為、シャワーを勧めれば悪びれない態度のリュウに毒気を抜かれてしまう。


簡単な昼食をと母にお願いすれば、意気込み調理を始める母に苦笑い。


昔はカケルが家に来るたびに大喜びで料理を頬張るもんだから、友人が訪ねて来た際は気合いの入った料理が食卓に並ぶのは我が家の恒例である。


「さて、魔力水の実用性は実証出来たし、リュウの魔法問題も解決の目処は立った。あとは、俺の合った魔武器なり魔道具なりを作るか。」


自分に合った武器か、メグなら弓矢、リュウなら肉弾戦、カケルはどんな武器を作ったのだろうか?結局見れずじまいで別れちまったな、と寂寥の思いを抱きながら準備を進める。


「風呂ありがとよ。で、帰りに言ってた魔法の件だけどマジなのか?」


風呂上がりでさっぱりしたリュウが、部屋に来るなりぐいぐい来る。


狭い部屋で男二人がぐいぐいって嫌なシュチュエーションだな、とくだらない考えを明後日へと放り投げ、いくつかの推測を並べ立てる。


「リュウの魔法属性を予想したんだけど、まずは身体強化って言う王道な魔法。これはレベルアップと似たような恩恵だから除外してたけど、リュウの戦闘力を説明するのはこれが一番かな。」


身体強化。これはファンタジー物での定番中の定番で名称通り身体を強化する魔法である。


眉間に皺を寄せた、いかにもな困惑顔のリュウをよそ目に次の予想を告げていく。


「次が魔法属性の衝撃や粉砕と言ったニュアンスの属性かな。これは殴る蹴る等で生じる結果に付随して起きてる現象を魔法に仮定した場合の推測だね。」


うーむ、と唸り声を上げ始めたリュウに準備した道具を渡していく。


握力計や鉄の棒、テニスボールなどの一見すれば魔法と縁遠そうな道具の数々。


「おぅ、これが検証に使う道具か?ダンジョン対策本部だとどうやって使うかも分かんねぇような機材ばっかだから、ハジメの検証は分かりやすくていいな!」

「安っぽい道具で悪かったな、一般家庭にあんな機材置いてるとこなんてねぇよ!」


褒めてんだよ、と悪びれないリュウに検証内容を説明してしまえば後は実際に計測するだけ。


「ちなみにリュウってレベルいくつなの?」

「確か十五だったか、そのくらいだ。」


思ったよりも高い数字に驚きながら、握力を計らせる。

レベル8の俺とレベル15のリュウの握力の差は十五キロ程度しか無かった。


鉄の棒もお互い曲げる事は出来ても引き千切るような超人的な真似は出来無かった。


流石にテニスボールはあっさりと破裂してしまい検証には使えなかったが、いくつかの検証を終えた結果としては、リュウの身体能力は特別凄い訳では無いという事。


「じゃここで検証は一旦終了。母さんが飯作ってくれてるから、食べた後で再開な。」

「お、わざわざ飯まで悪りぃな。」


二人揃ってリビングへ向かえば丁度並び終えたばかりの料理があり食欲が湧いて来る。


「母さんありがと。」

「わざわざすみません、ありがたく頂きます。」

「いいのよ〜、二人とも大きい身体してるんだから遠慮せず沢山食べてね〜」


二人で食事を進めていけば、隣の男の箸が止まらない。いや、わずかに加速していく。


「これは美味いですね!」


胃袋を掴まれた男がまた誕生してしまった。

我が母ながら恐ろしいものだ。


パクパクと食べ進めて、腹八分で食後のコーヒーを啜りながら母を交えて談笑する。

リュウがいたらぬ事を話さないかと若干どきどきしながら、腹がこなれるまでリビングで過ごす。


「リュウ、そろそろ続きといこうか。」

「お、そうだな。流石に今日辺りで戻らねぇと色々五月蝿いのが来そうだしな。」


なんだか嫌な事が聞こえた気がしたが、知らぬ存ぜぬで通そうと決意し部屋へ向かう。


部屋へ戻れば早速整理した情報からリュウの魔法適正を推測し、実際に試していく。


いくつかの失敗を重ねた後、遂に正解へと辿り着く。


リュウの適正属性は衝撃関連の何かである。

流石に詳しい事まで追求していくのは、専門知識や機材等がない為出来ないが、リュウ自身の意思で魔法を発現出来たのは大きな前進である。


「これで依頼完了って事でいいかな?」


リュウの魔法によって砕かれた欠片を拾い集めながら、視線を向ければ満面の笑みを浮かべた脳筋バカの姿。


「おう、カケルの言う通り魔法関連のことはハジメに頼るのが正解だったな。世話になった分はスタンピード殲滅って形で返すから期待しとけ!」


そんじゃあな、と帰宅しようとするリュウにカケル宛の手紙と瓶詰めの魔力水を渡せば、呆れ顔で見られた後で。


「戻ってくりゃいいじゃねぇか、この魔力水だっけか?これだけで本部の連中出し抜けるぜ?」

「...まだ戻れないよ、せめてカケルを唸らせるくらいの発見をしてから、かな。」


そうかよ、と言いながら背を見せるリュウの優しさに感謝しながら、玄関までの見送りにいく。


後ろ手でヒラヒラと手を振るリュウを見送った後は、先程渡した魔力水を作った反動で気怠い身体をのそのそと動かしベッドへ向かう。


心に浮かぶのは楽しかった頃の検証班の思い出ばかりが溢れて来る。


あの場所へ戻りたい。


情け無い戦いでカケルの期待を裏切ってしまい、浴びせられた罵声に心が折れてしまったのは弱い自分のせいである。


リュウに宣言した通り、あの悪童をも唸らせるような結果を担いで戻らなければ、俺もカケルもきっと納得出来ないだろう。


今回の戦闘で得た魔石は宿代の代わりにと置いて行ってくれたリュウに感謝しながら、次なる空想を脳内で巡らせる。


疲れた身体はそのまま眠りへと落ちていった。



ニートのダンジョン攻略記。

無事にリュウを魔法使いへと変えたハジメ、次の目標は自身の強化である。

次回、危険な実験は一人でするな!!

お楽しみにしてくれてると幸いです。

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