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事実は小説のように奇なり。

乱暴な目覚ましによって目を覚ましてのは、未だ太陽も見えないような早い時間。


覚醒した脳が昨晩の出来事を思い出させる。


「流石にこれは早過ぎるだろ。ソレを早く試したいのは分かるけどさ。」

「あ?そりゃそうだろ。ようやく俺もカケルやメグと同じラインに並べられるんだ、興奮しないわけねぇだろうが!」


いやいや、まだ検証もしてないのに期待持ちすぎだって。

逸る気持ちを抑えきれないリュウを見てると、逃げ出した自分の情けなさが浮き彫りになるようで心に暗い感情が訪れるが、いちいち落込んでなどいられない。


目の前の脳筋バカに急かされ、急いで準備を済ますことになり、壊れた杖と簡単な防具を身に付け朝食代わりの携帯食料を口にする。


お茶で流し込むようにして食事を済ませば、引き摺られるようにして家を後にする。

ようやく姿を表し始めた朝日にホッとしながら、スタンピードの最前線へ。


「そういえば、俺がスタンピードに関わると色々マズイんじゃないの?」


先程までは新しいチカラの検証にしか考えがいっていなかったが、よくよく考えれば監視され拘束される可能性のある危険を思い出したように口にすれば。


「どーにかなんだろ、それよか奴さんのお出ましだぜ。コレの使い方教えてくれや。」


脳筋バカに聞いた俺が馬鹿だった。


前方に見えるゴブリン3体を見遣りながら、なんとも適当な答えにガクッと肩を落としながらも答えを返す。


「はぁ。ソレは文献-ラノベ-では、感応型とか寄生型なんて言われるような魔道具の一種のつもりで作った訳で、基本的には普段通りの戦闘で大丈夫なはず。」

「おお、俺にぴったりな魔道具?だなっ、それじゃ行ってくるわ」


止める間もなく飛び出したリュウを慌てて追いかけながら、起こり得る最悪を想定して魔法の準備を整えていく。


追い付けないようなスピードで走るリュウは、勢いそのままにゴブリン一体を殴り飛ばす。その際に衝撃に耐え切れなかったゴブリンの頭部が弾けるようにして血飛沫を撒き散らす。


間髪入れずに振られた裏拳が二体目のゴブリンを吹き飛ばすも、魔力水による刺青-刻印-の入ってない方の腕だったためか頭部が弾ける様なことは無かった。


「リュウ一歩退がれっ!」


リュウの襲撃に遅れて反応した三体目のゴブリンが、リュウ目掛けて棍棒を振りかざしていたのを見て、準備していた魔法を解放する。


「ファイアバレッド!」


指先に灯した小指ほどの大きさの炎を弾丸の様に打ち出すことで、これまで使っていた魔法よりも速度とコスト低下を実現させた、新しい魔法。


今までは魔石付きの杖を補助として使っていたが、その魔石が魔力水に変わった今、杖には補助効果がなくなってしまった。

その穴を補うために使ったのが、リュウの右腕に施した刻印と同じものである。


作成前の想像通り、魔力の通りや集束が楽になり威力も高い状態で魔法を発現できたのは成功だと言っていいと思うが、欠点もいくつか見えてくる。


その欠点にはリュウも気が付いたようで、吹き飛ばしたゴブリンを倒した後、こちらへ歩み寄ってくる。


「ハジメ、威力については見てた通り申し分ねぇんだが...二発目以降は溜めが必要なのはどうにかならねぇのか?」

「やっぱりリュウの方もそうなったのか。こっちは一発が限界だった、多分だけど魔力水の質もしくは使用量によってブースト出来る許容範囲が決まってるのかもしれない。」


そう、一発放った後は効力が薄まる、消える等のインターバルのような使用制限があるのだ。


「難しいことは分からんが、改善出来る問題なんだろ?どうすりゃいい。」


然もありなん、とばかりに憮然とした態度で言い放つ脳筋バカに若干の苛立ちを覚えるも、考えつく限りを並べたてる。


「まずは魔力水の質の向上。次に総量を増やす。ほかにはリミッターのような一度の放出を絞る方法を探す。この三つが有力かな。」

「それで?」

「質の向上は現状では無理。総量はコツコツ魔力水を集めていけば可能だけどすぐには無理。リミッター説は理屈云々よりも技術的なものだと思うから教えるのは無ぐぇ。」


最後まで言い切ることは許されずに首元を絞められ、潰れたカエルのような声が思わず出た。


なんだよ、しょうがないじゃん。

納得のいかない仕打ちを受けて批判の目を向ければ、返ってきたのは傲慢不敵な脳筋バカの笑顔。


「それは無理あれも無理これも無理、そんな言葉は聞き飽きてんだ!!なんでもいいからやれること考えろよ!」

「えぇー?だから言ったじゃん教えるのは無理だけど、技術的な部分で調整出来るかも、って。」


あぁ?とどこかの強面な方々を思い出すような態度の悪さで詰め寄ってくる脳筋バカを相手に優しく説明する自称、平成生まれの天使ことハジメ。


「だーかーらー、刻印の変更だったり魔力水の変更はすぐには出来ないけど、そんな事しなくても一発一発に込める魔力を自分の意思で制限して、刻印の負荷を減らせば複数回使えるはずなんだよ。でもそれは刻印を持ってるリュウ以外には分からない感覚なわけで、教えられないし本当に可能なのかも分からないってこと。」

「お、おぅ。」

「第一これはあくまで検証段階のそれも序の序なわけで、何でもかんでも最初から上手くいくわけないし、こっから地道に試行錯誤して最適な形を探していく状況なの。それなのに、どーすりゃいい、何すりゃいい、と喚くばかりで自分では何にも考えないでさ。それならユイでもカケルでもいいから連れて来いって話だろっ、俺一人で考え付く事なんてたかが知れてるんだから!」

「すまん。」


天使でもストレス発散したい時はあるのだ。

言いたいことを言ってしまい、多少はスッキリした頭で再び考えを巡らせていく。


当然その間には喚くだけだったいつでも全力フルスイングな脳筋バカには、刻印の制御の練習をしてもらう。

時にはバントも必要なんだよ、ワトソン君。


(とは言ったものの、現状ではどうしようもないのは変わらないんだよなぁ...魔力水を作ろうにも時間も負担も掛かるだろうし、どうしたもんか。)


先程は自分一人で思いつく事なんてたかが知れてる、と言ったがまさにその通りで、検証班にいた頃は隣にいたユイとあーじゃないこーじゃない、と言い合うようにして意見を出し合い、検証の方向性を決めていたのだ。


勿論、二人で決めた内容が空振りして大失敗に終わってもケラケラと笑えるような雰囲気だったから検証をする事が楽しかった。


今は遠くの方でがむしゃらに拳を振るう脳筋バカを眺める事で心を落ち着かせることにしよう。


拳を振るう?拳をぶつけたら衝撃が生まれて、それが破壊力に繋がる?そこに刻印という魔道具が追加されることで、威力をブーストさせている...どうやってなんだ?


魔力水の性質は伝達率や集束率の高さだと思っていたけど、それだけじゃこの結果は生まれないはずなんだ。


リュウが何かしてる?いや、昨晩にリュウの不器用さは充分理解した。あの脳筋バカにそんな器用な真似出来るはずない。


リュウ本人も意識せずに行なっている可能性?


昨晩の話の中でリュウという人物のイメージは分かったが、熱血漢で情に厚い面もありながら常に最強を目指す孤高の存在。それがリュウという男だった。


神の試練が現れ、一切が効かないモンスターという異常を前にして、燃え上がった対抗心とそれを支えるリュウの精神的な強さ。

それはかつて見た連撃の凄まじさを生んだ。


(いやいや、今思えばあの連撃はおかしな部分が多過ぎる。あの頃はレベルアップも複数回しかしていなかったのに、ゴブリンを叩き潰す結果を生み出すのはおかしいだろ。)


リュウはきっと魔法が使える。

いや、今も使っている。


「リュウっ!一旦タイム!考えることが出来たから家戻るよっ」


そんな言葉を掛けながら、リュウが相手をしていたゴブリンに向け火弾-ファイアバレッド-を飛ばしてサクッと片付ける。


「お、なんか掴んだのかっ!?流石だぜ俺は魔法の魔の字もちんぷんかんぷんだってのに、ガハハっ」


期待に目を輝かせ、のしのしと近づいてくる脳筋バカが人類初の魔法使いの可能性があるとは誰も想像できやしない。


「とりあえず帰りながら話すから、周辺警戒だけよろしく。」

「おぅ、任せとけ。」


頼りになる番犬に守られながら帰路に着いた、やっぱり正反対な二人だった。



ニートのダンジョン攻略記。

まさか人類初の魔法使いが脳筋だったとは、散々悩んだ挙句ぶっ倒れてまで発現したハジメと対極な感覚派なリュウ。

性格も考え方も正反対な二人の起こす化学反応は世界を変える!?


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