FF
手から出る光弾は空中で十個に分裂し、炎の敵に直撃した。
一発一体。
ダメージは赤の文字で9が沢山。
追尾すべき敵を失った光弾は壁に、地面にと当たって砕けた。
奥の扉が開く。
再びボス戦。
今回は誰も戦闘不能になっていない。
体力無限、スタミナ無限、ステータスMAX、熱さ寒さ無効、スピード16倍等々。
さまざまなコードを重複させている。
これらはNPCには適用されていないようだが、関係ない。
近接職の魔法でもこの威力。
完全に無敵。
穴があるとすれば一撃で体力が持ってかれる場合だろう。
これまでの戦闘で分かったのだが、一瞬体力が減っている。
その後すぐに最大まで回復している。
スタミナも同じく、スキルや魔法を使った瞬間は減っている。
それでも被ダメージは今の所全て1。
対して体力は99万9999
防御力は9万9999
この数字は防御力だけではない。
全てステータスがこれと同じ数字だ。
目の前にはサラマンドラ。
奴の瞳がこちらをとらえた。
立ち上がるよりも早く、地面をける。
16倍速のスピードで接近しつつ、鞘に入った剣の柄を握る。
スキル発動のチャージ時間も16倍速。
この瞬間にスタミナがわずかに減り、まだ回復していない。
一気に潜り込み、腹部を切り裂いた。
スキル抜刀居合切り。
赤の数字が表示されると同時に、スタミナは全快した。
土埃を舞い上げながら、勢いを殺す。
巨大だった敵は、黒く小さくなり消えた。
剣と盾が落ちている。
今使っている物よりも性能はいいのだが、見た目がダサい。
そうだ。
その場で十回ジャンプする。
すると時間が止まり、目の前が真っ暗になった。
一瞬の間をおいて白の英語が溢れてくる。
そのうちのいくつかは赤色の文字に変化していた。
目的のコードを探す。
あった。
全アイテム入手済み。
それを選択し、ゲームに戻る。
奥の扉に入っていった。
気が付くと街の前。
一番近くのアイテムボックスに行こうと門をくぐる。
その瞬間、体の自由は効かなくなる。
バグではない。
奥から街の娘が走ってくる。
ありきたりなやり取りの後、顔を赤らめながら去って行った。
ストーリーの進行上仕方のない事なのだろうけども、正直体の自由が利かなくなるのは怖い。
これがまだ何度か続くのかと思うと、ため息が出た。
兎にも角にも、ボックスの中を見る。
そこには全種類、一つづつ武具が入っていた。
その中から一番強いと思われる剣、ワールド・ドレインを取り出す。
与えたダメージの半分を回復する特殊効果付き。
上半身アーマー、下半身アーマー、アクセサリの三種類も同様特殊効果のみ選んで装備した。
状態異常無効、一発ツーヒット、シックスセンス。
これだけの力を手にしたんだ、誰だって試してみたいだろう。
さっそく次のダンジョンへと向かった。
エリア3海上
圧倒的なスピードで早くもボス戦前。
ここまで剣なんて使わなかった。
スキルレベル10の光弾は、防具の特殊効果により二度のカンストダメージを与える。
溜めの時間は必要ではあるが、それも含めて16倍速になっている。
敵からしたら溜めの時間なんて無いように感じられるだろう。
後ろの扉が閉じる。
円形の開けたフィールドの空は満天の星空が広がっている。
全体に三センチくらいの水が溜まっている。
さぁ、敵はどこに?
特殊能力のおかげで敵の位置を察知することができるようになっていたのだが、まだ何も感じ取ることができない。
まだ現れていない?
不気味な水音だけが響く。
手の上に光が集まる。
さぁ、来い!
一瞬強く風が吹いた。
突然強い光と轟音が響く。
フィールドの中央に落ちたそれは、水を伝い全体に電気のダメージを与える。
さすがチート。
全く痛くない。
が。
後ろのNPCは全滅している。
ッチ。
使えない。
先ほどまで何もいなかった位置に、提灯アンコウにカエルのような足をつけた敵がいる。
ずんぐりむっくりしたそれは、無い尻尾を水につけた。
わずかな間を置いた後、足元の水は一気に凍りつく。
しまった。
動けない。
普通なら。
状態異常無効により、問題なく動ける。
だが、動く必要なんてない。
手を突き出す。
そこから十の光弾が飛び出し、全て直撃した。
全二十ヒット。
口から長い舌を出し、右に左へと振り倒れた。
やっぱり経験値はおいしくない。
というか、もう必要ない。
レベルもすでに最大まで上げてある。
街に行けばNPCもすぐに復活する。
俺は一人だけ街に戻った。
なんだかんだで、エリア4付近空の村。
これまで通り村人は討伐を依頼してくる。
次の敵はキング・オブ・スカイ・エンペラー
見た目はクジラらしいが、名前が長い。
王なのか皇帝なのかはっきりしてほしい物だ。
とりあえずダンジョンに入る。
いきなり巨大な何かが、はるか上空を飛んでいる事に気が付いた。
クジラ?
何かが分離し、こちらへと迫ってくる。
とてもでかい。
それはすぐ俺の近くに落ちた。
なるほど。
ボスからの爆撃という訳か。
NPCはそれに巻き込まれて全滅。
弱すぎやしないか?
ここからアイツに攻撃を当てられないだろうか。
手の上に光の球が形成される。
これしか使わないのでない、これしか使えないのだ。
近接職の俺には魔法なんてほとんど習得できない仕様なのだ。
十の弾丸は、一部近くの雑魚へと追尾したが残りはあの巨体へと向かっていった。
遅いな。
しばらく空を見上げていたが何も反応はない。
やはり射程圏外かとあきらめかけたとき、なじみの数字が何度か見えた。
ただでさえ大きな影は、さらに大きくなっていく。
辺り一帯の大地を揺らし、豪快に着地した。
ふー
たぶん顔がゆるんでいた。
ボスをさっそくやっつけたことだし、戻ろうと後ろを見ると相変わらず扉は閉まっていた。
仕方ない、攻略するか。
こうして割とあっさりと空のダンジョンは攻略した。
エリア5、地下ダンジョン
糸攻撃は出が速く厄介だったが、糸絡みつきも状態異常無効で回避できた。
大きな蜘蛛の敵。
こう、カサカサとカサカサと……
キモーイ。
ので、説明はここまで。
エリア6、砂漠ダンジョン
動く足すべてに当たり判定に加え、一瞬の怯み効果。
どうやら怯み効果は効くらしい。
おかげでちょくっとだけ時間が掛った。
大きなムカデ。
こう、カサカサとカサカサと……
キモーイ。
ので、これで終わり。
エリア7、宇宙ダンジョン
何があった?
冗談抜きで。
ストーリなんて特に気にせずにいた。
おかげで何があったのかが分からない。
とりあえずいつも通りダンジョンを攻略したのだが、目の前にあるのは個人用の宇宙船のような物。
これに乗り込まなくては何も始まらない。
乗り込みレバーを握る。
すると開いていたコックピットのフロントガラスが降りてくる。
シートベルトを締めると同時に、ゆっくりと回転し初め目の前にトンネルが口を開ける。
徐々に明かりが灯り、奥の真っ暗な宇宙空間が見える。
一気に左手のレバーを奥に倒す。
同時にこれまで経験したことのない加速に、呼吸がつらくなる。
カタパルト出撃なんてこんなゲーム内でしか経験しないだろう。
敵の迎撃を潜り抜け、月の内部に侵入し破壊した。
まさかラスボスが月だなんて、シナリオ担当は何をしている?
まぁ、斬新な内容だと思う。
とりあえず今は、月の爆発に巻き込まれ目の前は真っ黒な状態だ。
「……きろ。」
「……っかりしろ。」
なんか聞こえる。
ハッキリとは聞こえないが何か。
ゆっくりと目が開けられる。
体の自由が効くならとっくの昔に開けていた。
「おう、起きたか。」
知らないおっさんがそこにいた。
「ここは?」
意図して言ったわけでない。
強制だ。
「ここはインフィニット・アドヴァギアだ。」
「にしても、よく生きてたな。」
「あんな空高くから落ちてきてよく生きてたもんだ。」
インフィニット・アドヴァギア……
ゲームタイトルと同じ。
オンラインの世界にやっと到着したようだ。
「ここには他にもあんたと同じ境遇の奴らもいる。」
「まぁ、早い話よく空から人が降ってくるんだ。」
「そいつらの元にでも行ってみたらどうだ?」
唐突に小さくウィンドウが現われる。
(ようこそ、インフィニット・アドヴァギアへ)
(ここでは多数のプレイヤーと協力しダンジョンを攻略することが目的となっております)
(とりあえず、自由に探索してみましょう)
ようやく自由になった。
装備は全て外されている。
改めて付け直す。
が、なぜか体にノイズが走っている。
なぜだ?
ひとまずログアウトしようとメニューを出す。
が、選択できない!?
馬鹿な。
ひとまず友人と合流しよう。
メール画面を開き、メールを送った。
すぐにこちらに来るらしい。
それまでの間、おっさんの家にいた。




