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忌み子と黄昏の守護者  作者: 村木隼


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4 俺に任せて

「ここは何処……?」


 リアナと名乗った女の子がそう言う。


「ここは、リーン村の俺の家だよ。君、リリルエの森で倒れててさ、動物に襲われでもしたら大変だから、ここまで連れて来たんだ。」


 俺は、リアナがここにいるに至った経緯を教えた。すると、リアナは焦った様子を見せた。


「リーン村!?そんなに離れるなんて……速くあそこに急がないと……」


 リアナがベッドから降りて立ち上がった瞬間、彼女がよろめきだした。


「う……んぅ……」


「あ!」


 リアナが倒れそうになった所を俺が腕で受け止める。やっぱり、まだ身体が本調子じゃないんだ。この子は森の奥にいた。なんであそこにいたのかは謎だけど、この子の周りには乗り物らしき物も、それがあった形跡もなかった。だったら、自分の足であそこまで行ったに違いない。この子は運動が得意そうにも見えないし、その時の疲れが残ってるんだと思う。


「まだ起きたばっかりなんだから、無理しちゃダメだよ」


「でも!私……!」


 その時、外がなんだか騒がしい事に気付いた。この村は娯楽が無く、イベントが起こる事も少ないが、それに伴う穏やかで静かな環境が長所で、騒がしさとは縁がないのが普段なんだけど……やっぱり騒がしい。


「ちょっと待って」


 俺は、どうしても外の様子が気になったので、リアナにそう言い残し、窓の方へ向かい、窓の近くに立った。フリンも俺と同じ気持ちだったようで、窓辺に飛んで来たから俺が左腕を真っ直ぐ横に伸ばすと、フリンが俺の腕にとまり、一緒に外がどうなっているのかを見た。


「ん?あれは…俺が隣町で見かけた兵士達か。この村まで来たんだな。騒がしい理由はこれだったみたいだぜ……って、ティオ?どうし……」


「兵士だ!兵士が来た!」


 俺は、バッと両手を上げて歓喜した。


「おわっと!危ねぇだろ!」


「ごめん!でも来たんだぞ!この村にも兵士が!初めて見た!それに騎士もいる!スゲーカッコイイ!」


 俺は初めて目にする兵士に目を輝かせる。強さの秘訣を教わりたい!握手したい!サインも欲しい!何でもいいから話しがしたい!憧れの兵士を目にして、妄想が止まらなかった。そんな時、ふと、リアナの方を見てみると、彼女が身を抱えて震えていた。


「どうしたの?震えているけど……」


「みんな来た……逃げられない……」


 ”みんな”って兵士達の事か?どうして怖がっているんだ?兵士は国と国民を守る英雄、つまりはすごく良い人達という事だ。怖がる理由なんてないはず……


 リアナの手を見る。でも、確かに震えている。怖がる理由はわからないけど、確かに震えている。本当に兵士達が怖いのだろう。その時、俺は夢で見た女の子の「助けて!」という言葉を思い出した。あの子とリアナは違うのかもしれないけど、今、確かにリアナは震えている。だったら、やるべき事は一つだよな。


「大丈夫」


「え?」


 俺はリアナの手を取る。


「リアナに怖い思いはさせないから。俺に任せて」


 俺は真っすぐリアナの目を見て言った。リアナも俺の目を見ている。この時、確かにリアナの手の震えは止まっていた。


「あ!おい、兵士がこっちに来るぞ!」


 窓から外を見ていたフリンがそう言った。兵士がこの家に来る?いつもなら泣いて喜ぶ所だけど、今はリアナがいるから、そういう訳にはいかないな。とはいえ…この家小さいから玄関から内装が筒抜けで、隠れられる場所が無いんだよな……風呂は無いし、トイレは家の外にあるし……仕方ない。


「リアナ、ちょっと布団にくるまってて」


「ティオ……」


 リアナが不安そうに俺の名前を呼ぶ。


「大丈夫。俺がなんとかするから」


 俺は少しでも不安が無くなるようにリアナにそう言った。すると、玄関をノックする音が聞こえた。兵士が来たみたいだ。


「じゃあ、待ってて」


 俺は玄関の前に立ち、一度後ろを向いて、リアナが布団にくるまっているか確認した後、深呼吸をしてドアを開けた。


「この家の者かな」


「あ…はい、そうです」


 うわぁぁカッコイイ!!シュッとして厳格な佇まいに、洗練されたデザインの兜、肩当、胸当て、そして腰の剣!カッコイイ……まさに理想の兵士像だ……


「えっと……君、大丈夫か?」


「え?あ!いえ、大丈夫です!何のご用でしょうか!」


 危ない危ない。本物を目の当たりにして見惚れちゃってた。リアナに「任せて」って言ったんだからちゃんとしないと。


「ああ、実はこの人物を探していてね、何処かで見かけなかったか?」


 兵士の人はそう言って一枚の人相書きを見せてきたが……


「これは……」


 その人相書きに描かれていたのは長い黒髪の少女……そうリアナだった。そして、傍らにはカラスが一緒に描かれていた。やっぱり、森でリアナの居場所を教えてくれたあのカラスだ。リアナは指名手配されているのか?でもどうして?何をして?リアナは見た感じ12~13歳の女の子だ。そんな女の子がこんな大々的に指名手配されるなんて普通じゃない。一体なんで……


「君?」


「あ!そ、そうですね……すみません。知らないです。」


 リアナにも何か事情があるのだろう。ここはそう思って、噓をついて誤魔化した。


「そうか…知らないか……ん?あの、家の奥で布団にくるまっているのは誰かな?」


「ギクッ」


 目ざとい、流石は兵士。だけどやはり本当の事を言う訳にはいかない。


「ええっと……あれは妹です。寝坊助な性格で、昼過ぎだっていうのにまだ寝てて困ってるんですよ……」


「それに……あれはカラスか?どうしてカラスが……」


 兵士の人が家の中にいるフリンを見つけた。人相書きにはカラスも描いてある。これはマズい!


「あー!あれは!ええっと……今朝、捕まえたんです!夜に焼いて食べようかなって……」


「え!」


「ハアァッ!?」


「ん?今何か……」


 フリンが驚きで声を上げた。頼むから黙っててくれよ……!


「えーと……これは……ハアァックション!!すみません…くしゃみしてしまって……」


「くしゃみ?ふうむ……」


 やばい。これはちょっと下手な噓だったかも。バレちゃったか……?


「そうか、今日は肌寒いものな。お大事に」


 バレてなかったぁぁ!良かったぁぁぁ!


「では、話しを聞いてくれてありがとう。妹さんと仲良くね。あと……カラス料理は程々にね……」


「は、はい!」


 兵士の人はそう言って去って行った。他人を気遣うあの姿勢、見習わないとな。俺は家の中に入り、玄関の鍵をしっかり閉めた。とりあえず危機は去ったな。


「もう、行った?」


 リアナが布団にくるまった状態で言った。


「うん、もう行ったから大丈夫だよ」


 リアナは俺の言葉を聞くと布団からゆっくりと顔を出し、起き上がった。リアナは悪い子には見えないけど、指名手配について聞いた方がいいかな。


「リアナ、あの人相書き……」


 一瞬、リアナの身体がビクッと震えた。顔色も暗い。怖がっている……うん、そうだな、やっぱり聞かない方が良いよな。「怖い思いはさせない」って言ったし。


「いや、なんでもない。何か事情があるんだろうし、俺はリアナを信じるよ」


 すると、リアナの顔色が晴れて、彼女は俺の顔を見た。その後、なにか悩むかのように俯きだし、やがて口を開いた。


「ティオ」


「何?」


「お願いが……あるの……」


 リアナは一拍を置いた後、決心をしたかのようにお願いを口にした。


「私を……リリルエの洞窟に連れてって」

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