3 リアナ
「ただいまー」
「遅ーぞ、もう昼過ぎで腹ペコペコ……って……どうしたんだ、それ?」
家に帰るやいなや、空腹のフリンが俺の今背負っているモノは何だと聞いてきた。
「ちょっと森の奥まで行ったら、この子が倒れててさ、動物に襲われでもしたら大変だから連れて来た。槍は流石に置いてったよ」
「いや、森の奥まで行くなよ。危ないだろ」
まさにごもっとも。実際、俺もいつもは危険だから森の奥になんか行かないし。でも、行ったからこの子を見つけられた。今回行かなかったら助けられなかったかもしれない。個人的には結果オーライだ。
「まぁ、そんな訳だから、お昼ご飯はちょっと待ってよ。まずはこの子を優先したい」
俺はベッドに女の子を寝かした。家に帰るまでにも思ったけど、この子本当に軽い。家までずっと背負っていたのに全然疲れなかった。よく見ると少し瘦せ気味だし、年も見た感じ12~13歳くらいかな?そうだとしたら俺より2歳下くらいになるか。もしも、あのまま森の中で一人残されていたらゾッとするな……
「ん?この嬢ちゃん……」
「どうした?」
「あ……い、いや、随分可愛い嬢ちゃんだなーって思ってよー。ははは……」
もう一度女の子の顔を見る。確かに可愛いけど、なんか態度が変だな…普段人になんか興味示さない癖に。よほど好みだったのか?まぁいいか。
「とりあえず、ロゾ先生の所に連れてった方がいいかな」
「……は!?ちょっと待て!ええっと……それより先に容態を確認するのが先じゃないか?」
「え?ああそうか、そうだな」
フリンの様子がおかしいけど、言っている事は正しいと思う。この子がどんな状態かわかっていれば、治療もすぐ行えるしね。じゃあ、まずは……
スッと、女の子のおでこに触れる。熱くはない。とりあえず熱は無いみたいだ。少し安心。で、次は……
「怪我してるかも……確認した方がいいよな」
「え!?脱がすのか!?スケベ野郎になるぞお前!?」
「違う!そんなんじゃない!」
そんなんじゃないんだけど……実際どうしよう?本当に脱がすのか?女の子の服を?………………ここは、少し服をめくって見るぐらいにしとこ。
「ごめんなさい」
「噓だろ!」
俺は寝ている女の子に心からの謝罪を述べ、緊張しながら女の子の服の袖をまくっていく。というか、なんかさっきからフリンがハラハラしている感じがするんだけど気のせいかな?
「腕に怪我は……無いな」
次に足を見る……のだが、スカートなんだよなこの子。どうしよう……いやいやいやいや、ダメでしょ!絶対ダメでしょ!女の子のスカートをめくるとか、人として終わるような気がする!うん、そうだな。ここは止めとこう。俺にはちょっと……荷が重い……
なんだか緊張と後ろめたさで頭がクラクラする。正常に考えられてるかな?最後は…お腹か……しっかりお腹までだ。それ以上はもう、俺が死ぬしかない……そうだ、これには俺の命も掛かっている……失敗は許されない……俺は、深く決心し、この子の服の裾を掴んだ、するとフリンが
「なぁ、もう止めとこうぜ、この嬢ちゃんも怪我は無いみたいだしさ?な?」
「止めるな!これには俺の命も掛かってんだよ!」
「何言ってんだお前!?」
自分でも何を言っているのかわからない。もうなんか頭が混乱している。別に無理してやらなくてもロゾ先生のとこの看護師さんに任せる選択肢だってあるのに、緊張と恥ずかしさで頭が回らない。もうやるしかない!ってヤケクソになってる。
「よし、いくぞ!」
「ちょっと待てぇ!」
「うおおおおおお!」
目をつむってゆっくりと裾をめくり、めくり終えたらゆっくりと目を開けた。すると、女の子に怪我が無い事がわかったが、同時に奇妙なモノが目に飛び込んだ。
「紋……章?」
そう、女の子のお腹には紋章のような痣があった。とても自然にできるとは考えにくい紋章のような、そういう痣があったのだ。
「あれ……これ、何処かで……?」
俺は女の子の痣を見てそう口にしていた。何処かで見た事がある。この女の子と同じだ。思い出に無く、経験もしていない、なのに記憶はある。何処でこれを見たのか?俺が記憶を巡らせていると、女の子の痣が紅く光り出した。
「うわ!何だ!?」
痣の光は瞬く間に広がっていき、家の中全体を包み込んだ後、次第に光は小さくなり、やがて光らなくなっていった。
「何だったんだ……?」
「う……ん……あなたは……?……ッ!」
痣が完全に光らなくなった後、女の子はゆっくりと目を開けて、俺を見た直後、お腹がはだけている事に気付き、服の裾を下してお腹を隠した。
「あなた…!み、見た!?」
見た!?もしかして、服を全部めくったかって事か!?やばい!誤解を解かないと!
「み、見てない見てない!全部は見てない!」
「そうじゃなくて!お腹の……」
「え?あれ?そっち?それがどうかしたの?」
思いっ切り光ってたけど、乙女のデリケートな問題なのかもと考え、口にするのは止めた。
「え?知らない?これについて知らない?」
「う、うん、知らない」
すごく、ものすごく気になるけど。
「知らない……か……なら、いいのかな……」
女の子が何か言っているが声が小さくて聞き取れない。あのお腹の痣の正体について知っている風だったけど……それよりも、女の子が意識を取り戻したのが何よりだな。そこを喜ぼう。
「あ、自己紹介がまだだったね。俺はティオ。で、あっちの……何やってんだアイツ?なんか落ち込んでるカラスがフリン」
「ティオに、あれは……フリン……」
女の子がフリンの方を見ている。そういえば、この子が倒れている場所を教えてくれたのはカラスだったんだよな。この子とあのカラスは何か関係があるのかな?
「それで、君の名前は?」
「私は……」
女の子が言いよどんでいる。もしかして聞かない方がよかったかな?そう考えていると、やがて女の子が口を開いた。
「……リアナ……」
「え?」
「うん、私の名前は……リアナ」




