―序章―
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プロローグ 宇宙の記憶
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宇宙は、記憶する。
百億年の時間の中で起きた全てのことを、宇宙は忘れない。星が生まれた瞬間を、
星が死んだ瞬間を、その灰が次の星の種になった瞬間を。宇宙は黙って、全てを覚え
ている。
その記憶の中に、一つの惑星があった。
青く、水に満ちた惑星だった。宇宙の尺度からすれば取るに足らない小さな点だっ
た。しかしその点は、宇宙の中でも珍しい性質を持っていた。
生きていた。
単に生命が住んでいるという意味ではない。惑星そのものが、生きていた。意思を
持ち、感じ、時に怒り、時に悲しみ、時に喜んだ。その惑星を人々は「地球」と呼ん
だ。
しかし地球が明確な意思を持つようになったのは、ある出来事の後のことだった。
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プロローグ 落下
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それは夜に来た。
最初は流れ星のように見えた。しかし流れ星にしては遅すぎた。そして明るすぎた。
徐々に大きくなるその光を、世界中の人間が空を見上げながら見ていた。一部の者は
祈り、一部の者は逃げ、一部の者はただ立ちすくんで光を見つめていた。
隕石は、音もなく落ちた。
音がないことが、逆に奇妙だった。あれほどの大きさのものが大気圏を突き破れば、
轟音があるはずだった。しかしその隕石は、まるで水に石を投げ入れるように、静か
に地表に触れた。
衝撃もほとんどなかった。
後に科学者たちが分析して初めてわかった。その隕石は半物質系統だった。物質と
しての質量を持ちながら、衝突時には物質としての性質を半分失う特殊な素材だった。
だから被害は最小限に留まった。
しかし落下の直後、何かが地球全土に飛散した。
目に見えないほど小さな粒子だった。光でもなく、放射線でもなく、これまで人類
が知っている何とも異なる何かが、大気に乗り、水に溶け、大地に染み込み、地球の
全ての場所へと広がっていった。
それが後に「エーテル・コア」と呼ばれることになる半物質だった。
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エーテル・コアが世界に広がった後、最初に変化したのは人間ではなかった。
地球だった。
空気が変わった。水が変わった。炎が変わった。大地が変わった。それぞれが、ぼ
んやりとした意思を持ち始めた。人間の言語で言い表せるような明確な意思ではなか
った。しかし確かに、何かを感じ、何かを判断する力が、地球の構成要素全てに宿っ
た。
そして地球そのものが、目を覚ました。
長い長い眠りから。何十億年もの眠りから、地球は初めて、自分が「存在している」
ことを明確に認識した。
その目覚めは、静かだった。
人間たちは最初、何が起きたかわからなかった。しかし徐々に気づいた。住める場
所と住めない場所が、明確に分かれていった。地球意思が許さない場所には、人間が
どれほど努力しても住めなくなった。水が来なくなった。空気が薄くなった。大地が
拒絶した。
地球は、人類の住む場所を自ら決め始めた。
◇◇◇◇
その頃、世界にはラ・ロ帝国と呼ばれる巨大な国家があった。
ラ・ロ帝国は、人類の技術の頂点に立つ存在だった。「永久機関:ブリル・ドライ
ブ」と呼ばれる究極のテクノロジーを生み出し、それを動力源とした様々な兵器と乗
り物を持ち、世界を席巻していた。
しかし地球が意思を持った後、ラ・ロ帝国は変わった。
正確には、変えられた。
地球意思は、帝国を選んだ。世界の中でただ一つ、地球意思によって公認された国
として。そこに君臨する皇帝は地球自身の代弁者となり、地球の声を人類に届ける存
在となった。
以後、法は地球意思によって定められた。
あらゆる宗教、人種、価値観は廃された。これまで人類特有の差別意識はなくなっ
た。またそのような想念を起こすことすら許されなくなった。これまで文明で発明さ
れてきたものは全て廃され、唯一ブリル・ドライブで動くものだけが許された。
そして地球意思による防衛行動、「リバンド・フォース」という現象が起こされる
ようになった。地球にとって負担になる力が行使されると、その防衛反応として自動
的に発動する現象だった。
世界は、変わった。
人類の歴史が、全て塗り替えられた。
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プロローグ エーテル・コアの選択
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エーテル・コアは、人間を選ぶ。
隕石と共に地球全土に飛散したエーテル・コアは、数十年の時間をかけて、少しず
つ特定の人間と融合し始めた。しかしその融合には条件があった。強制はできなかっ
た。エーテル・コア自身が、融合する相手を選んだ。
選ばれた人間は、聖者の域に到達した。
身体能力が飛躍的に向上し、特定の属性の力を扱えるようになり、これまで人間の
限界とされていた壁を超えた。選ばれた者たちは特有の周波数を発し、それによって
帝国に感知された。帝国はその者たちを戦士として編入し、修行を積ませた。
修行によって得られる刻印を「超印」と呼んだ。
超印は段階があった。段階が上がるほど、力は圧倒的になった。そして七段階に達したとき
著しい変化を伴う覚醒が起き、それを保有した者だけが、特別な称号を得た。
――ブレイクゴッドーー。
まだ世界に6人しか存在しない、究極の戦士の称号だった。
◇◇◇◇◇
エーテル・コアには、格があった。
ほとんどのエーテル・コアは通常の力を持つ。しかし中には、通常の格を大きく超
える特別な存在があった。
その一つが「ブリリアント・クイーン」だった。
レジェンド級エーテル・コア。通常のエーテル・コアが「力や資質」を持つ者を選
ぶのに対し、ブリリアント・クイーンだけは異なる基準で動いていた。
それは「心」だった。
ブリリアント・クイーンは、長い時間をかけて世界を漂い続けた。融合できる者は
いた。資質を持つ者も、力を持つ者も、帝国が探し続けていた。しかし全員を、ブリ
リアント・クイーンは拒んだ。
心が、違った。
ブリリアント・クイーンが求めるものは、力でも才能でも地位でもなかった。もっ
と根源的な何かだった。それが何であるかは、ブリリアント・クイーン自身だけが知
っていた。
そしてブリリアント・クイーンは、待ち続けた。
◇◇◇◇◇
その存在の動向を、複数の目が追っていた。
一つは帝国の情報部門だった。レジェンド級エーテル・コアは帝国にとって最重要
資源だった。融合者が現れれば、即座に帝国の最強戦力となる。帝国はブリリアント・
クイーンの居場所を常に把握し、周辺への監視網を張り続けていた。
一つは、一人の男だった。
万能系ブレイクゴッド、ガイン・アスラ・カシュヤパ。6人の頂点に立つ者の一人
が、個人として長年ブリリアント・クイーンの動向を密かに追い続けていた。どんな
者が選ばれるのか。その者が現れた時に何が起きるのかを、彼は誰よりも正確に予測
していた。だからこそ彼は、その日も「偶然を装って」現場の近くにいた。
そして一つは、闇の側からの目だった。
まだ深い眠りの中にある存在が、その意識の端でブリリアント・クイーンを感知し
ていた。レジェンド級の光を、闇の側に引き込めるかどうかを、静かに測り続けてい
た。
三つの目が、それぞれの思惑で、ブリリアント・クイーンを見ていた。
そしてブリリアント・クイーンは、そのどれにも応えることなく、漂い続けていた。
その日が来るまで。
なろうでは3作品目となりますが、
実はこの作品はかなり昔からずっと温めていた非常に思い入れの強い作品なのです。
この度、ようやく日の目を浴びることとなりました。今回は最後まで書き上げるつもりで頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします。




