088 沈黙
何というか、思いの外……いや、少し予測は出来ていたけど、僕達の申請した『エル部』は名前こそ『先進技術研究会』ともの凄い固い名前に変えさせられたが、即日認可を得ることが出来た。
しかも、顧問が校長先生、副顧問……という名の監視役として、昨日赴任したばかりの先生が務めるという意味不明ぶりである。
そんな異色のとんでも研究会は、部室として教室棟から一番離れた音楽室などがある特別教室棟の空き教室一つが割り振られた。
この部室内に立ち入れるのは、研究会名簿にある人間だけで、常に見える場所に『ジョン・スミス』が一人は立っている。
ちなみに、ヤヤが席を外してる時にふらっと現れた永田さんの説明によると、見えない場所にも何人か待機しているそうだ。
部員は、ヤヤ、陽菜ちゃん、僕の三人で、今現在、新任で副顧問の『ジェーン・スミス』先生を含めた四人で部室尼置かれた大きめなテーブルの一つを囲んでいる。
そんな中で、研究会会長なヤヤが、とんでもないことを言い放った。
「さて、こうして部活は出来たみたいなんだけど……これからどうするんだい?」
言葉を失うこと、しばし、ようやく頭が回り出した僕は頭痛を覚えつつ、ヤヤに問い掛けた。
「えーと、目的があって、この研究会を発足したんだよね?」
「部活動の体験だね」
迷いのない言葉が返ってくる。
「まあ、それは知ってるし、僕も陽菜ちゃんも、その為にヤヤの研究会に入ったんだけど……」
なんだか発言の途中で、自分の言っていることに自信が無くなってきたので、チラリと陽菜ちゃんを見た。
すると、口を真一文字に結んだまま、こくこくと頷きを繰り返している。
コレは完全に話すのを丸投げする姿勢だなと察して、溜め息をつきたくなったが、とりあえずは言葉を最後まで言い切ることにした。
「研究会の発足のために提出する書類の活動目的に『部活動の体験』とは書いてないだろ?」
そんな目的を書けば、確実に今ある部活に入れと言われ……ないのか、ヤヤの場合は……と考えたところで、思わず乾いた笑いが出る。
存在が特殊すぎて読み切れないことに疲労感を覚えながらも、活動の指針として使える活動目的を書いていることを願ってヤヤからの返答を待った。
「私は内容まで知らないな」
「は?」
返ってきたヤヤの言葉の意味不明ぶりに目が点になる。
だが、固まってもいられないので、詳細を求めて「ヤヤが提出したのに知らない?」と口にして、一つの可能性に思い当たった。
それはヤヤ以外の誰かが書いて提出した可能性である。
僕は一番可能性のありそうな陽菜ちゃんに視線を向けた。
すると彼女は一文字に口を結んだままで、ふるふると首を左右に振る。
「陽菜ちゃんが代理で書いて出したわけじゃないの?」
確認のために声に出すと、陽菜ちゃんは今度は首を縦に振って見せた。
あくまで声を発しないスタンスらしい。
思わず陽菜ちゃんをジト目で見てしまったところで、ヤヤから正解が発表された。
「陽菜じゃなくて、ジェーン先生に書いて貰ったよ」
僕がヤヤの発言を受けて直ぐに視線を、テーブルを囲む最後の一人であるサングラスに、黒づくめのスーツを身に纏った女性教諭(自称)に視線を向ける。
すると、ジェーン先生は、陽菜ちゃんと同様に口を真一文字にしたままでコクコクと頷いて見せた。
「って、お前もしゃべらないんかいっ!!」




