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081 不穏

 顔を出した陽菜ちゃんに、僕は苦笑するしかなかった。

「はぁ……そっか、ヤヤがなんか怪しい機械でも使ったのかと思ったけど、陽菜ちゃんが合鍵を使ったのか……」

「い、いや、だってね、玄関ドアを壊す気だったのよ、それを止めるにはね?」

 妙に慌てた様子で、陽菜ちゃんは説明を始め、同意を求めるように僕に視線を向けてくる。

「まあ、確かに玄関壊されるのは困る」

 そう言いながら視線をヤヤに向ければ、歯が眩しいニッカリとした笑みに迎えられた。

 何故そんなに勝ち誇ったような表情なのかと思えば、脱ぎ終わったことを示すように、かかとを揃えて持ったローファを顔近くまで持ち上げている。

「あ、ああ、脱ぎ終わったのか」

 どうやら陽菜ちゃんの登場に気を取られているウチに、ヤヤは靴を脱ぎ終え、やり遂げたことを誇っているようだ。

「次からは、上がる前に脱いでくれると助かる」

 僕がそう告げると、ヤヤはなんだか不服そうに「はーい」と返してくる。

 その態度が、褒めて欲しかったのに、褒めて貰えなかった時の陽菜ちゃんちの飼い犬にそっくりで、思わず「でも早速対応してくれて助かる。ありがとう」と感謝の言葉を告げてしまった。

 すると、不服さなど完全にどこかに放り投げたヤヤが「えへへ」と笑う。

 不意打ちと言っても良い可愛らしい反応に、思わず頬が熱く……なるよりも背が冷える方が先立った。

「レン……たさん?」

 笑うヤヤの背後から、コチラも笑顔なのに全然笑っているように見えない陽菜ちゃんの圧が飛んでくる。

 昨日、ヤヤとは何でも無いと宣言したばかりなのもあって、陽菜ちゃんとしては話が違うと憤っているに違いなかった。

 何しろ、恋愛感情がないと言っておきながら、ヤヤの笑みに表情を緩ませてしまったら説得力が粉砕してしまう。

 普段から嘘とか、誤魔化しが嫌いな、潔癖の気がある陽菜ちゃんに、誤解とは言え、宣言とは違う態度を見せれば、ひどい目にあうのは確定だ。

 なので、僕はこの状況を打ち砕くべく、戦術的撤退を決めることにする。

 が、自室へと踵を返したタイミングで、かなりトゲのある声で陽菜ちゃんが質問をぶつけてきた。

「あれ、レンタさん、どちらに行かれるのですか?」

 そう尋ねられて、僕はようやく普段の『レン』呼びから『レンタさん』呼びに変わっていることに気付く。

 かなりの激怒状態になると出てくる症状なので、妙な刺激を与えないように、努めて冷静に答えを返すことにした。

「いや、部屋に戻って、鞄を取ってくるんだよ……そろそろ学校に行かないとな時間だろ?」

 僕の言葉に、陽菜ちゃんは殺気が漏れ出る笑みを辞めて、ポンと手を叩く。

「確かに」

 陽菜ちゃんの言葉に、流れを変えられそうだとホッとした直後、ヤヤが「あ、レンタの部屋、見たい!」と無邪気に手を挙げた。

 思わず「う、うん?」とほぼ反射で返事をすると、ヤヤは肯定と取ってしまう。

「よし、じゃあ、案内して!」

「う……うん」

 今更、拒否するのもどうかと思いヤヤの好奇心を満たすことを了承したのだが、何故か再び陽菜ちゃんが笑顔の後ろに殺気を纏い始めるのだった。

修正報告

2021.08.21


前:はが眩しいニッカリとした笑みに

後:歯が眩しいニッカリとした笑みに


前:ひどい目にあるのは確定だ。

後:ひどい目にあうのは確定だ。


前:妙なしっげきを与えないように

後:妙な刺激を与えないように


前:鞄を地追ってくるんだよ

後:鞄を取ってくるんだよ


前:陽菜ちゃんはさっきが

後:陽菜ちゃんは殺気が

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