044 準備
疑問はたくさんあった。
何故、どうしてを挙げれば、ヤヤとエルをしばらくの間質問攻めにできるだろう。
けれど、今更だが、あれこれ説明を求めて、それに納得しないと行動を起こさない男というものはどうなのだろうかと、水着に着替えながら考え始めていた。
失敗や問題を起こさないために、都度確認することは大切だと思うし、僕自身そこに間違いなどないと断言できる。
だが、いちいち説明を受けてからしか行動が出来ない男は、そのなんというか力強さとか、頼りがいに欠けるのではないだろうかと思った。
もちろん、ヤヤによく見られたいという下心があるのは認める。
が、それよりも何よりも、エルに感情を学ばせる手本として、男らしくないのはいかがなものかと思うのだ。
正直、僕自身、慎重なせいで、決断力が弱いという実感はある。
僕としては改善したい部分であるので、できうるならば、僕の背中を見て学ぶ、エルには男らしい子に育って欲しいのだ。
まあ、エルの外見は完全に幼女なんだけど……まあ、一応、小さい頃の僕がモデルなのだから、頼もしさは獲得して欲しい。
そんな口には出せない馬鹿なことを考えている内に、黒のトランクスタイプの水着に着替え終えた僕は、エルに案内された更衣室から廊下に出た。
ちなみに、ヤヤとロボだけの施設に何故更衣室と思って確認したところ、この国の研究機関の人間もこの施設を使用することがあり、更衣室だけでなく、シャワー室やトイレなども、一応男女別々に使えるよう複数設置されいるらしい。
まあ、僕も着替え前にトイレを借りたけど、すべて個室で車いすなんかでも利用できるようなそこそこな広さがあるせいで、逆に落ち着かなかった。
「レンタさん、準備が良ければこちらへ」
廊下に出るなり、待ち構えていたエルにそう告げられ、僕は出来るだけゆっくりと頷く。
今更だが、余裕のある男ぶりを見せ、エルに学習してもらうと考えたのだ。
まあ、頷きの途中でエルは踵を返してしまったので、その目論見は達成できてなさそうだが、しかしこういうのは努力を続けることが肝心なのである。
頭の中でそんなどうでもいいことを考えながら、僕はエルの小さな背中を追いかけた。
『プールの中に浸かってもらうのは、簡単に言うと、普通に椅子に座った状態では危険を伴うからよ』
空中に投影されたヤヤがそう説明してきた。
そんな僕たちがいるのは、先ほどの水槽の直上にある部屋である。
既に眼下の水槽には水が満ちていた。
そして、僕のサポートは、エルからアダムに代わっている。
これはこの先に行う実験の為だ。
ヤヤとエルから、これから始める実験の内容を聞くまで、僕は勘違いをした上に、勝手に思い込んでいたらしく、説明の途中ですごく恥ずかしくて逃げ出したくなるという事態に遭遇している。
それでも、今の僕にはこの先の実験に対するワクワクとした気持ちしか残っていなかった。
「ヤヤ、エル……成功させよう!」
修正報告
2021.05.23
前:馬鹿なことを考えてい内に
後:馬鹿なことを考えている内に
前:既に眼科の水槽には
後:既に眼下の水槽には
前:説明の途中ですごく恥ずかしいて
後:説明の途中ですごく恥ずかしくて




