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043 指示

 エルの案内で訪れたのは、機材の置かれた部屋よりも、更に奥に位置する部屋だった。

 部屋に入ると、コレまでの電子機器特有の匂いに加えて、新築の商業施設の様な建材の香り、更には病院のような強いアルコールの匂いが混ざる。

 秘密基地という匂い缶詰があるのなら、まさにそれがこの匂いだろうと思えるような雰囲気のある匂いだった。

 そして僕が最初に匂いに意識を持って行かれたのは、連れられてこられた部屋に照明が付いていなかったからに他ならない。

 ゴウンゴウンと低い音を立て、熱気を振りまく大型機械のようなものの気配はあっても、視覚で確認出来ないせいで、なかなかにおどろしい雰囲気だった。

 廊下から漏れ込む光で辛うじて見えるエルが振り返り僕を見る。

「では、服を脱いでください」

「は……い?」

 唐突に告げられたエルの言葉に、僕は完全に固まってしまった。

「服を? なんで?」

 役目が終わった筈なのに……というか、服を脱がせてどうしたいのかというまるで意図の掴めない指示とその内容に対する羞恥心で、僕は思わず後退る。

 すると、そのタイミングで部屋が一瞬にして、カッと強い光に照らし出された。

 突如、目の前で明らかになった巨大なパイプが這いまわり、これまでの洗練されたオフィスという印象からはガラリと雰囲気が変わり、重機械が動き回る巨大な品物を作り出す工場のような光景に圧倒されて、僕は言葉を失ってしまう。

 そんな僕の視界の中で、テテテと軽い足取りでエルは機械の一つへと駆けよった。

「レンタさんには、この水槽の中に入って貰います」

 言われてエルの後ろに視線を向ければ、そこには曲線を描く巨大なガラスらしきものが見える。

 近づいて確かめてみれば、ガラスの中は空洞になっていて、液体は入っていないものの、水槽というのはなんとなく理解できた。

「ここに入るの?」

 エルに確認の為に聞けば、いい笑顔で「はい!」と頷かれてしまう。

 直後、轟音を立てて、ジャバジャバと水槽の中に水が注ぎ込まれ始めた。

「うぇっ!?」

 思わず変な声を出してしまった僕に対して、エルは特に反応することなく、にこにこと笑っている。

 ロボットとはいえ、自分より幼い外見のエルに平然としていられると、動揺しているのが恥ずかしくなってきた。

 頭の中で『水が入れられているだけ』と言い聞かせて、気持ちを落ち着ける。

 それから気持ちの建て直しのためにも、一度大きく息を吐きだした。

 吸い込むタイミングで、プールで鼻にする独特の匂いが満ちてきたのを感じて、これはプールみたいなもんかと変な納得をしてしまう。

 それから、ようやくこれまでの流れを振り返る余裕が出来たので、整理を付けることができた。

「えっと、つまり、この水槽の中に入るから、服を脱げと?」

「はい、服のままだと服が濡れてしまいますから……それから、水着の方はこちらに用意してあります」

 エルは迷いのない動作で、水槽近くの壁を操作すると、バクンと勢いよく扉の一箇所が上向きに開く。

 その中には黒や紺の光沢のある生地でできた、おそらく水着であろう品々がいくつも、ビニールの袋詰めで収納されていた。

修正報告

2021.05.23

前:服を脱いでどうしたいのか

後:服を脱がせてどうしたいのか


前:工場のような光景圧倒されて

後:工場のような光景に圧倒されて


前:死入りを

後:整理を

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