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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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386/1420

386.実務は任せちゃいたい

「なあ、王都の警備兵って夜間に街のパトロールとかするのか?」

スフィーナに魔防布ミラー生地テントのテストを依頼した隆一は、帰ってきてザファードと帰宅後の雑談をしていてふと尋ねた。


「パトロールですか?

夜間は詰所にいますが、パトロールをする程の人員を雇う予算があればやる、というところでしょうか。

貴族や豪商の住む地区や、大手の商家の店舗が集まる大通り沿いなんかはそれなりの頻度でやっていますね。

普通の一般市民が住むようなところはそこまで余裕が無いので警備兵は誰かが呼ばない限り来ませんが、たいていそう言うところは悲鳴を上げたら周辺の住民が助けに出て来てくれるので却って安全という話もありますね」

空になった隆一のカップを見てお茶のお代わりを準備しながらザファードが答えた。


なるほど。

なんとも世知辛いが、ある意味経済的で合理的なのかも知れない。

夜間に襲われる危険があるだけの資金的余裕がある住民は夜間パトロールに金を出せるし、出せないぐらい貧しい地区の住民はどうせ襲われるといっても通りすがりのひったくりに近い案件しかないのだろう。


・・・日本は世界でも有数に安全な国と言われていたが、考えてみたら警官は夜間パトロールをしていたのだろうか?

日中に街中を移動していると時々目につきにくい場所で交通規則違反者を狙った白バイが待機しているのを見たことがあるが、残業で深夜に街中を歩いている時に警官を見た記憶は余りない。


そう考えると、日本の警察は市民の安全の為に街に出ている訳では無かったような気がしないでもない。

スピード違反はまだしも、原付の3車線道路での右折禁止を取り締まる事が白バイの点数稼ぎ以外で意味があったとは思えない。


まあ、もしかしたら酔っ払いが多いような繁華街を重点的にパトロールしていたのかも知れないが、どうなのだろう?


それはさておき。

「こないだちょっとついでで造ってヴェルタン達に試して貰っている魔道具なんだけどさ、温度差や魔力感知を目で見ることが出来る魔道具なんで、夜にパトロールする時なんかに役に立つと思う。

深夜ならまだしも、夜の10時ぐらいだったら暗闇の中でも周りがそれなりに見える上に隠れている人間ははっきりと浮かび上がるし、集中しなくても魔力が視えるから変な魔道具が置いてあったら分かるっていう具合にね。

警備兵あたりが夜間パトロールするんだったら売りつけようかと思ったんだが、そんな予算はないかな?」


元々、パトロールというのはある意味抑止力的な存在だ。

警備する人間が歩き回っていることを示すことで泥棒やひったくりに犯行を思いとどまらせる・・・かも知れないという存在であり、考えてみたら実際に犯罪者を追いかけることは余りない気がする。


そうなると幾ら便利とは言え、それなりの値段にならざるを得ない魔道具は予算的に正当化出来ないか?


「ああ、そう言えば中々便利だという話でしたね。

街の警備兵に売るよりも、実際に不届き者に侵入されることを警戒している貴族や豪商に売りつけてそこの私兵に使わせる方が良いでしょう。

神殿も多分欲しがると思いますよ?」

ポットにお湯を注ぎながらザファードが答えた。


「神殿に忍び込むような奴なんているのか??

そこまで金があるようには見えなかったし、なんと言っても回復師ヒーラーの本拠地なのに」

下手に神殿の恨みを買ったら後が怖い気がするが。


大きい上に社会の全ての階層に関与する組織だけに、神殿はそれなりに情報収集力がある。

その場で捕まらなくても、神殿に侵入したなんていう情報はそのうちバレて、その犯罪組織の人間は誰一人回復してもらえないなんていう事になったらヤバい気がするが。


まあ、感染症などだったら下手に治療しない人間を残しておくとそこから周りに広まりかねないので少なくとも隔離はして最低限のケアはするはずだが。


「国最大の回復師ヒーラーの教育機関であり信仰の本拠地ですよ?

幾ら金で命を左右するような行動はしないという建前だとしても、常日頃から『貧しい人の為に』と寄付をする貴族と、病気になった時だけ頼ってくる貴族では明らかに派遣される回復師ヒーラーのランクが変わりますからね。

それなりに寄付が集まりますし、神に関与する者としての品格を保つために高価な美術品もいくつかは揃えています。

そして何よりも高価で希少な薬やその素材があるのです。

盗みに入ろうと考える人間は確かに少ないですが、入られたら損害は莫大なものになりかねないですから、神殿は警備にかなりの人力と資金を掛けていますよ」

肩を竦めながらザファードが言った。


なるほど。

薬というのは使い方によっては麻薬になるものだってあるし、そうでなくても病人が家族にいる相手には高額で売れるのだ。


確かに狙ってくる連中だっているだろう。


「そうか。

じゃあ、ヴェルタン達が使っている試作品を使ってみないかと誰に声をかけたら良いかな?

あと、そう言う金持ち用警備関係の責任者の業界団体みたいのってないのかな?

折角開発したんで売り出したいが、下手に犯罪組織とかに流れては欲しくないからあまり商業ギルドでオープンに売り出さない方が良い気がする」


商業ギルドで大々的に売り出す時は勝手にあちらで工房から販売網まで全部手配してくれるが、あまりオープンに売りたくない物の場合は製造過程をこちらで手配して販売先も見つけなければならず、面倒だ。


「・・・誰かそういう製造とか販売関係のマネージャーみたいなのをやってくれる人間っていないかなぁ?」




誘拐時用の追跡装置(トラッカー)は、子供を守る物だし見た目はアクセサリーなので貴族や豪商の口コミでちょくちょく売れていますが、警備員用の装備は金持ち本人による口コミ販売は難しいかな?と悩ましいですね。

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