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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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385/1420

385.防御力が最適解ではないとは:スフィーナ

魔防布のミラーレースを売り込まれる前段階のスフィーナさんの視点からの話です。

「ちょっと守秘義務ありの調査依頼をしたいんだが」

『ロールケーキ』という至高のスイーツの最終試食会が終わった次の日、夕方に迷宮から戻って来たリュウイチ氏が受付に来て声をかけてきた。


デヴリンは既に帰ったようだったもののダルディールが一緒についてきたが・・・一体どんな調査依頼なのだろう?


「調査依頼、ですか?」

探索者ギルドでの調査依頼なら当然守秘義務は含められるし、招かれ人である上に今までも色々と有益な開発をしてくれたリュウイチ氏の信頼を裏切って得るものは無いから、依頼を頼む相手も細心の注意を払って選ぶが・・・一体何の調査依頼なのだろうか。


リュウイチ氏が新しい食感と味の砂糖を精製してくれたとタルニーナが先日興奮していたが、13階では果物以外はコボルトとホブゴブリンしかいなくて特に目新しい発見があるとは思えないのだが。


「ちょっと中からは見えるけど外からは見えにくい魔防布の生地を開発したんだ。

これでテントを造ったらどの程度魔物から襲われなくなるのか、調査してもらいたいんだが」

何やら淡いグレーの薄いレースのような生地を取り出しながらリュウイチ氏が言った。


「・・・魔物から襲われない魔防布のテント、ですか?」

魔防布というのは名前の通り、魔力攻撃に対する防御効果の高い生地である。

基本的に防具に使う物だが・・・それをテントに使うというアイディアは今までなかった。


荷物になる上に襲撃しようと近づいてくる魔物の様子も分からないテントを使う探索者は殆どいない。

荷物持ちを使う大人数のパーティで体力回復の為にテントを持ち歩く場合でも、それに態々魔防布を使うことはまずない。


魔物というのは初撃は突進してくるタイプの方が圧倒的に多いのだ。

その為、態々高価な魔防布で確率の低い魔力系の攻撃に備えてテントを造るなんて言う無駄をする理由がない。


とは言え。

魔物に襲われない??


「魔物の索敵手段っていうのは視力情報と魔力感知が主で、後は臭いと音だろ?

テントで休む場合は静かにしていりゃあ多少は音も抑えられるし、臭いもテントの入り口を閉めておけば周りに漏れる量を軽減できる。

生地で視力情報と魔力も遮っておけば、理論上は魔物に襲われる可能性がかなり下がる筈なんだが・・・実際に理論通り上手くいくかどうか、各階の魔物相手に確認して欲しい。

もっとも、蛇系の魔物やアラクネは熱感知もあるんでそう言うのが潜むエリアは避けてテストしてくれ」

何やら棒と生地を組み立ててグレーの生地を小さなテントの形にしながらリュウイチ氏が説明し始めた。


「テントで魔力感知を遮ぎるんですか?」

確かに魔防布を使えば魔力感知を遮れるが、襲撃を警戒する為に外で見張る人間が必要になる関係から、態々テントを高価な魔防布で造って魔力感知を遮るという考えはなかった。


テントだけ隠したところで見張り目当てに魔物が寄ってくるのだ、意味がない。


「この生地は外の方が中より明るい場合、外が透けて見える仕組みなんだよ。

だから一応姿は隠れるし、王都迷宮だったら近づいてくる魔物だって見えるから、テントの中で隠れて見張りをするという使い方も可能だ。

まあ、一般に売り出す場合は見張りも焚火もしない一人旅用ってところかな?

焚火をしないとどの程度危険なのか、焚火だけだと魔物や獣が寄ってくるのかとかも調べてもらう必要があるだろうが」

入ってみるか?とリュウイチ氏が組みたてたテントの入り口を開けてみせた。


思わず体をかがめてテントの中に入り、入り口を閉めてみる。

中は多少薄暗いが、ちょっとした着替えや鞄の整理程度ならば出来るだろう。

そしてなによりも、確かに外が見える。

考えてみたら、普通に窓にかけてあるレースのカーテンでも外から中は覗き込みにくいが中からはそれなりに見える。

その効果を高めた物なのだろうか?


確かに防御力はカスだろうが・・・夜を平和に過ごすという目的に対しては『防御』より『隠密』が最適解な可能性も高い。

ちょっと新しい視点だ。


「どのような調査をすれば良いのでしょうか?」


「取り敢えず、2組ずつ同じ階層に入って似た様だけど離れた地形の場所で夜を過ごして貰い、1組は普通に過ごしたら何度襲撃を受けたか、もう1組はこのテントの中でしゃべらずにじっとしていた場合に何度襲撃を受けるか、記録を取って欲しい。

15階まで各階で3晩ずつぐらいかな?

一応2人ずつで出来るようにテントももう少し大きいのにする。ただ、担当する探索者にはテストに行く前にきっちり入浴して服も汚れを落とすよう厳命しておいてくれ」

紙に要件をリストアップしながらリュウイチ氏が条件を挙げていった。


なるほど。

上層で夜を過ごす探索者はあまりいないが、テストの為に泊って貰って襲撃回数を確認すればある意味外での有効度も確認できそうだ。


後は魔力感知を使わない普通の獣相手にどうするかだが・・・元々、個人レベルの行商人が回るようなルートに狼などの肉食獣はそれ程出現しない。

ハグレ魔物から襲われるリスクを下げられるテントというのは価値がありそうだ。


中層や下層での襲撃を削れるなら、パーティ単位での使い方に工夫がいるかも知れないが利用価値は更に高い。


「分かりました。

リュウイチ殿に納品して頂いたドアマット型掃除魔道具は隙間に入った細かい埃等も除去できるせいか、あれを使うと防具の悪臭もかなり落ちると人気なんですよ。

あれで汚れを落とした上で、ちゃんと洗濯と入浴をして仕事に取り組むよう指示して出発前に臭わないことを確認もしますね」

そう。

ドアマット型掃除魔道具で痒いノミやダニが除去できるというだけでなく、手入れが難しく悪臭が染みつきやすい防具の汚れ落としにも効果があるというのは受付嬢だけでなく全ての人間にとって非常に嬉しい驚きだった。


慣れてて気にしていなかった本人すら恋人や家族から好評だと、最近では探索の後に態々並んであれを使う若い探索者が増えてきたぐらいだ。


今回のテントも、想定外に何か良い使い道が見つかる可能性もある。

しっかり色々と試してくれる人材に調査依頼をやって貰おう。


軍は行動する人数が多いので、隠蔽効果の高いテントへの需要はあまり無いと見てデヴリン氏はさっさと帰っちゃいました。

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― 新着の感想 ―
このマット歯垢も除去されそうだしそっちの健康面でも良さそう。
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