1365. 試作品の実証実験へ向けて(6)
ジュラルミンの板に反重力魔法陣を刻み込み、スイッチの部分だけカバーをつけた上でガラスの粉を掛けて実験室の炉に放り込む。
「鑑定」
『ジュラルミン板とガラスの粉』
敢えて最小限の情報を求めた鑑定をしたら、ガラスの粉と出てきたから、これを何度か鑑定してガラスが溶けるまでやればいいのではないかと隆一は考えながら炉がガラスを溶かすのを待った。
「鑑定」
『ジュラルミン板と溶けた液体状のガラスとガラスの粉』
どうやら、ガラスが溶け始めたようだ。
「鑑定」
『ジュラルミン板と液体状のガラス』
良い感じに溶けたようなので、炉の魔力を切る。
「さて。
どうなったかな?」
炉の中が冷めるのを待つ間に、錬金術ギルドから入手した通常の魔道具の防水加工方法についての資料を読む。
どうやらスライムジェルに何か触媒を足した液を吹き付けると、空気に触れた瞬間から固く乾き始めて、それが撥水及び防水効果があるらしい。
まあ、考えてみたら保存袋だって水を通さないのだ。
あれを作る素材と同じような物を噴き付ければ、同じような効果が得られるのだろう。
探索者ギルドから入手した防水袋用の錬金加工方法をそのまま流用しても良いのかも?
そんなことを考えている間に炉の温度が下がってきたので扉を開き、中に入れていたジュラルミン板を取りだした。
「うん、ホーローっぽくなったな」
ホーロー鍋っぽい艶やかな光沢のある仕上がりになっている。
ガラスの粉の振りかけ方が一様ではなかったのか、ちょっと凸凹があるが。
「なんかこう、魔法陣が薄くなったように見えるのはガラスの表面で光が反射するからだと……思いたいな」
思わずまだ熱いジュラルミン板を皮の手袋を嵌めた手で持ち上げ、斜めにしてもう一度よく見てみる。
「……確かにちょっと薄く見えるような気も、しますね?」
横に来ていたエフゲルトが合意した。
そう言えば、ジュラルミンは魔防が非常に弱いというかほぼ皆無な素材だった。
だからこそ莫大な量の魔力が通る反重力魔法陣を刻んでも魔力がほぼ素通りするから発火しないのだが、もしかして魔力で温度を上げる炉に入れるのには向いていないのだろうか?
微妙に嫌な予感がしたのでシンクの上でスイッチ部分のカバーを外して魔石を嵌め込み、試作品のスイッチを入れてみた。
……何も起きない。
「ジュラルミンって魔力炉に入れちゃダメなのか???」
基本的に素材の加工は錬金術の加工スキルで出来る為、ここに引っ越してからも素材を熱して曲げたり加工したりする必要が無かったから魔力炉を使う必要が無かった。なので実はほぼ使ってこなかったのだが……もしかして、『魔力炉』と言うだけあって、魔力を叩きつけるような効果があって、魔防が低い素材には使えないのだろうか?
「ガラスの粉なしに魔法陣を刻んだジュラルミン板を魔力炉に入れてみるか」
別のジュラルミン板に簡単な照明の魔法陣を刻み、再度熱し始めた炉に突っ込む。
先ほどと同じぐらいの時間を待って取りだしたところ……やはり、ちょっと魔法陣が薄れて見えた。
「こりゃ駄目かな?」
ジュラルミン板に魔力を通したが、一瞬明るくなったと思ったらプツっと切れてしまった。
どうやらジュラルミンは魔力炉に入れると魔力で刻んだ魔法陣が劣化するらしい。
というか。
「他の基盤だったらどうなんだ?」
ちょっと気になったので、銅板を取りだして同じように照明の魔法陣を刻み、魔力炉に入れる。
「あまり魔道具を炉で熱するとは聞きませんが……何かそうする予定があるんですか?」
エフゲルトが尋ねた。
「いや?
特にはないが、知っておきたいだろ?」
魔力を当てたら魔法陣が壊れるとなったら、いつの日か人造魔石が作られるようになった際に、それから魔力がうっかり漏れたら使っていた魔道具自体が壊れかねない。
魔法陣の基板に魔力を当てた時の効果を知っておいて損はない。
まあ、人造魔石が成功する見込みはまだまだないようだが。一応、いつの日かは成功すると言う想定で研究が行われ、研究費が出されているのだ。
人造魔石の欠点というか人造魔石を魔道具に使う際の注意点は明らかにしておくべきだ。
と言う事でほぼ同じぐらいの時間がたったところで銅板を取りだす。
急いで冷やし、魔力を通す。
普通に明るくなった。
どうやらジュラルミン特有の問題らしい。
新規素材は思いがけない欠点が色々出てくるw




