1364.試作品の実証実験へ向けて(5)
1%〜5%まで1%刻みなアルミニウム合金をシリコンと、マグネシウム、マンガン、亜鉛と鉄の五種類に対して作ったことで25枚の反重力魔法陣が出来上がった。
「寝る前に全部起動させて実験スペースに浮かべておいて、朝になったらどうなっているか確認しよう」
そろそろ夕食の時間だしという事で、隆一が荷物を纏めて3階へ行こうとした。
「もしものことがあって夜中に火事になっても困りますから、今晩は僕がここで寝ますね」
エフゲルトが当然のことの様に言った。
「いやいやいや。
寝るだけと言っても時間外労働になるし、エフゲルトにそんなことを押し付ける訳にはいかない。
俺がここで寝よう」
飛行具で野営した時のエアベッドがあるので、それなりに快適に眠れる筈だ。
なんだったら机にうつぶせになって寝たり、隣の椅子に足を載せてうたた寝するのだって慣れている。
「火が回る前に、起きますか?」
ちょっと疑わし気にエフゲルトに聞き返される。
隆一の眠りの深さはよく分かっているらしい。
目覚ましを掛ければ即座に起きるのだが、雑音などは無視して熟睡続ける癖があるので、火事が目覚ましと雑音のどちらのカテゴリーに入るかは……言われてみたら隆一もちょっと自信が無かった。
「……多分?
いやまあ、考えてみたらそれ程急がないんだ。
明日の日中、ここで朝食後から実験することにして、エフゲルトは試作品の挙動を確認しながら本でも読んでいてくれ」
夜通しで実験しておく方が時間の節約になるが、朝からやる方が良いだろう。
明日の晩になってもまだどれも問題が無かったら、夜の間は反重力魔法陣をオフにして、何日連続で使えるかを確認すればいい。
実際に航海で使う時だって、夜中は座礁を警戒して船を動かさないことが多いという話だし。
「そうしましょう!」
にっこりとエフゲルトが笑いながら応じた。
どうも最近は助手にまで色々と管理されている気がする隆一だった。
◆◆◆◆
翌朝は合金の試作品を使った反重力魔法陣を試すのと同時に、新たに入手した海水を3階の浴室のバスタブに10センチほど入れて、各種合金を順番に並べて沈めてみた。
「こっちも1時間おきぐらいに観察して、変色しているのとかがないか、記録しておいてくれ」
流石に反重力魔法陣を全部に刻むのが面倒だったので、取り敢えず単純な明かりの魔法陣を刻んである。
夕方にでも、それらが問題なく起動するかも確認すればいいだろう。
「あとは……。
保存袋やガラスのケースに入れるんじゃなくて、ホーローっぽくして浸食耐性を付与できるかも実験してみるかな?」
ホーローはそれなりな高温度でガラス質の釉薬を焼き付けるという話だったと思うが……そんな高温に熱して魔法陣は大丈夫なのだろうか?
台所でみた鍋にもホーローっぽいのがあったから、そういう加工技術は既に存在するようだが。
上手くいくか分からない試作品の実験の為に一々そんな工房を探して実験を頼むのは面倒くさい。
第一、食用の道具を作る場所で何か良く分からない素材を使うのは、工房側も嫌がるだろう。
多分アルミニウム合金に毒性はない筈だが、これがカドミウムとか水銀系の合金だったりしたら以降その工房で作る食器類が全て料理に使うのに適さなくなるのだ。
隆一としても責任はとれない。
そう考えると、それこそ工房をフルリフォーム出来るぐらいの費用を請求されそうだ。
ファイアウォールか何かで熱している間にガラスを溶かして焼きつかせるなんていうのも、ちょっと乱暴すぎて危険な気がしないでもない。
実験室の炉を使って適当にガラスを表と裏に焼き付けて、それで魔法陣がちゃんとそのまま機能するかと、海水への浸食耐性を高められるかを実験してから実用化する際には専門の工房をどちらかの商会にでも探してもらえばいいだろう。
というか。
考えてみたら、外で使うような魔道具の防水加工的に何かそういう加工方法が確立しているのではないだろうか?
『防水』機能だって『海水』をある程度は防げる筈。
まあ、実験として面白いから少し自分でやってみるし、既存の手法よりも結果が良ければホーロー加工っぽい方法を使えばどうかと提案すればいいのだし。
「取り敢えず、普通のジュラルミンに刻んだ反重力魔法陣をガラスでカバーしてみるか」
ホーロー加工モドキをした後に反重力魔法陣が使えなくなった場合に素材が悪いのか、ホーロー加工もどきが悪いのかを確認するためにも、現在ちゃんと問題なく機能しているジュラルミンでまずは試すべきだろう。
試すべきことは幾らでも出てくる……




