1363. 試作品の実証実験へ向けて(4)
バチバチバチ!!
シリコンと、マグネシウム、マンガン、亜鉛と鉄を各種30%とアルミニウム70%の合金を作ってそれぞれに半重力魔法陣を刻んで重しをつけて浮かべたところ、幾つかが火花を散らしてあっという間に魔法陣が燃え尽きた。
「どうやら鉄と亜鉛を使った合金は反重力魔法陣には向かないようだな。
魔力の保持力は殆どないから大丈夫かもと思ったんだが」
床に落ちた試作品の板を手に取りながら隆一が溜め息を吐いた。
「火花が散るのでしたら3階の実験スペースでやる方がよくありませんか?
こちらにはそれなりに繊細な魔道具もありますし」
急いで結果をメモしながらエフゲルトが心配そうに言う。
「一応床は防火加工してあるし他の物も簡単に火が付くようなものではないと思うが……確かにそうかもだな」
反重力魔法陣は魔力の流れが勢い良すぎて素材が耐えられない際の反応だが、その時の火花が電撃っぽい反応だった場合、魔法陣や魔道具がショートして壊れてしまう可能性はゼロではない。
自分が手作りした試作品や魔道具だったら壊れても構わないし直ぐに修理できるが、元のこの家の持ち主だった錬金術師が揃えていた古い魔道具に関しては修理を出来る人員やパーツが残っているかもかなり怪しい。
うっかりそれらを壊すかもしれないような実験は迂闊にしない方が良いだろう。
そんなことを考えている間に、直ぐには火花を散らさなかったものの怪しげな煙を出して黒ずんできていた残りの3つの試作品もショートしたのか更に煙を出しながら床に落ちていた。
「アルミニウム成分が少なすぎるのか、ジュラルミンじゃないとだめなのか。
取り敢えず、アルミニウムを90%にしたのをまず作ってみるか」
ジュラルミンの銅含有率は5%以下なのだ。
考えてみたら30%で始めたのはちょっと大雑把すぎたかもしれない。
これで10%の方が反応が良かったら、30%よりもアルミニウム含有量が少ない素材の実験はする必要もないかも?
そんなことを考えながら、隆一はアルミニウム90%の合金を各種素材で作り、再び反重力魔法陣を刻み込んで今度はそれを持って3階に上がった。
「やっぱ加工したその場で実験したいなぁ。
そう考えると、実験用の魔道具を3階に動かすか、もしくは俺の作業をもっと3階でやるようにするべきか。
もしくは何か魔道具を守る防御結界でも設置するのが楽かも?」
反重力魔法陣の火花を防御結界で防げるのかは不明だが、まだ反重力魔法陣を普通の素材に刻んで起動させた際の火花がどのくらい周囲に危険なのかの実験すらしていないのだ。
脅威度とそれに対する防御の判定が難しい。
「せめて安全シートや間仕切りがあったらいいかも知れませんね。
その分部屋が狭くなりますが」
エフゲルトが提案した。
「と言うか、下の実験室にちょっとやそっとの火花や煙が出ても大丈夫な隔離コーナーを作って、そこで実験出来るようにしたら一番かもだな」
実験によっては変な化学反応を起こして毒のある気体を発するような結果だって起きうるのだ。
考えてみたら、ある程度簡単に隔離できる実験スペースを作って、危険性があるかも知れない実験はそこで行うのが一番だろう。
問題は、実験室にそんなスペースは既にないことなのだが。
廊下側の一部を実験室としてその分扉の位置をずらすか、外壁をぶち抜いて部屋自体を広げる必要がある。
廊下側の一部を使う方がリフォームは楽だが、ザファード達が隆一の所に声を掛けに来る際にその危険かも知れない実験をしているスペースに直接顔を出してしまう事になったらちょっと危ない可能性もある。
まあ、実験中は廊下からの扉を開けられないようにしたらいいかも?
そんなことを考えながら、隆一は3階の実験スペースで5つの試作品を起動させた。
「……火花は飛んでいませんね」
エフゲルトが恐る恐るコメントする。
「ああ。
やはりアルミニウムの含有量が多くないと駄目なようだな。
とは言え、鉄と亜鉛はもう黒ずんできているから、長持ちしなさそうだな」
宙に浮いていた板がガタガタと不安定に揺れ始めた4番目と5番目の合金板を斜め下から観察しながら隆一が言った。
プシュ~~!
そんなことを言っている間に、まず鉄入りの合金が、そして一瞬後に亜鉛入りの合金が真っ黒になって穴が開き、床に落ちた。
残りの3つはまだ大丈夫だが、徐々に色が濃くなってきている気がする。
「う~ん、これは1%刻みでアルミニウムの含有量を増やして反重力魔法陣を刻んでどれが一番長く使えるかを確認してから、海水への耐性をテストするか」
南大陸との交易に使うとなったら何週間も連続で使うことになるかも知れないのだ。
長時間稼働のテストも必要そうだ。
休み休み使う感じで3時間ごと等にしたら大丈夫というケースになるのだったら、反重力魔法陣を刻んだ合金板を複数揃えておいて入れ替えるというのも可能かも知れないが。
取り合えず、まだまだ実験は必要そうだ。
先は長い……




