1362. 試作品の実証実験へ向けて(3)
「まずは、新しい合金に反重力魔法陣を刻んで使えるかが重要だよな」
色々と集めた素材を前に、隆一は腕を組んで何をするか考え始めた。
海水への耐性の強さが求められるが、どれだけ耐性があろうと反重力魔法陣を刻んで使えなければ意味がない。
取り敢えず、10%から90%までの素材とアルミニウムの比率を10%刻みで合金サンプルを作りまくり、それに反重力魔法陣を刻んで適当な重さの物を半日載せて宙に浮かせて問題が起きないかを確認すればいいだろう。
シリコンと、マグネシウム、マンガン、亜鉛と鉄を10%刻みでとなると、45種類も合金の試作品が出来上がる。
これでアルミニウム以外の素材を2種類もしくはそれ以上なんてことになったらほぼ無限大に選択肢は増えていくが、取り敢えずは2種類の素材でやって行って、どれもダメだったら種類を増やすことを考えればいいだろう。
余りにも面倒過ぎたらチョコレートへの熱意も冷めそうだし。
というか。
隆一個人としてはそこまでチョコが無くても構わないのだ。
あったらそれなりに懐かしい思いはあるし、煌姫が喜びそうだし、水中翼船を作るというのも面白そうだからやっているが。
考えてみたら、自分一人の実験ではなく商会を2つも巻き込んだ新規事業なので、上手くアルミニウム合金で使える物が見つからなかったからといって飽きたら『や~めた!』と投げ出すわけにもいかない。
異世界人基金からナフザート商会とピケッタ商会が払った分の費用を補填するのは難しくないが、費用だけの話ではない。
……そう考えたら、使える合金が見つからなかったら、反重力魔法陣を刻んだジュラルミンに何か塗って防水加工する方法も考えた方が良さそうだ。
と言うか、海水にそれなりに耐性がある素材が見つかったとしても防水加工の方法は見つけておいた方が良いだろうし。
今回の実験のついでに、保存用袋やガラスの容器へ反重力魔法陣を刻んだジュラルミンを入れて暫く起動させておいて問題ないか、今からテストさせておいてもいいかも?
先にそちらを確認しようと思い立った隆一は、実験室にしまってあったジュラルミンの板に反重力魔法陣を刻み、魔石を取り付けて保存用袋に包んで加工スキルで密封し、先ほど届けられた海水を入れたタッパーモドキに入れて上に重しを載せて実験室の端で浮かばせた。
いや、考えてみたら海水が実験室で飛び散るのは不味いか。
「エフゲルト、これを裏庭に持って行って宙に浮かせておいてくれるか?
一時間おきに何か異変が起きていないか確認して、記録しておいてくれ。
ガラスケース入りも今から作るんで、戻ってきたらもう一つ持って行ってもらうことになるからよろしく」
傍で待機していたエフゲルトに宙に浮いているテスト用反重力魔法陣を渡す。
「紐に結んで、風に流されないようにしておきますね」
エフゲルトが素早く引き出しから紐を取りだして、重しごと結び付けた。
「そうだな。
変に飛んで行かれても困る」
飛行具を飛ばす魔法陣なのだ。
実験室内ならまだしも、確かに裏庭に浮かべておいたら風に流されかねない。
という事で次にガラスの素材を使って反重力魔法陣を刻んだジュラルミン板を密封する。
保存袋と違って上からスイッチを動かせるように柔らかく出来ないので、これは夜の間も浮かばせておく必要がある。その間に魔石が枯渇したり何か問題が起きて試作品が落ちて割れてもガラスが飛び散らないように、海水に浸けた後に更に厚めな保存袋と布袋で覆っておく。
「これもよろしく」
裏庭から戻ってきたエフゲルトに試作品二号を渡した。
さて。
次はアルミニウム合金の試作品作りだ。
「取り敢えず、まずは30%と70%比率のを全素材で作ってから有望そうなのを10%刻みでやっていくか」
30%と70%比率で魔力の保有率を確認してみて、ジュラルミンと似たような挙動をするのから先に細かい10%刻みの実験をする方が、成功する組み合わせに早く出会える気がする。
どちらにせよ最終的には全種類を試すつもりではあるが、只管失敗実験を重ねた挙句に最後にやっと成功するよりは、最初に成功した上で更に良いのが無いかと残りの選択肢を潰す方が、気分的に良いと感じる隆一だった。
試行錯誤は長い道のり……




