1361. 試作品の実証実験へ向けて(2)
軍による飛行機での職人達の送迎をやって貰えることになったので、帰宅した隆一はダーシュにピケッタ商会とナフザード商会の関係者にその旨を伝えて貰った。朝晩の通勤先は彼らが騎士団と話し合って決めるだろう。
隆一自身は今までの飛行具の実験を第二騎士団の拠点で行ってきたが、考えてみたら空軍モドキが出来上がるとしたら、それ用の新しい敷地を国が作ると思われる。
空軍が第二騎士団の敷地を使っていたら普通の騎士たちが鍛錬などに使える範囲が狭くなってしまうし、飛行機の運営に関して第二騎士団が突出して影響力を持つようになるのを他の騎士団や王宮の人間が嫌がるだろう。
そう考えると、新しい拠点は不可欠な筈。
いくら滑走路が必要ないとは言え、王都の中に空軍飛行場と格納庫を作るスペースは多分ないだろうと思われるから、王都の外周のどこかになりそうだが。
民間へのレンタル事業をその横でやるか、機密性を重視して隔離するかは上が頭を悩ませている問題かもしれない。
まあ、隆一の知ったことではない。
という事で、アルミニウム合金である。
彼らがヴァーレで水中翼船の試作船を作っている間に、隆一は海水に強く反重力魔法陣を刻むのに使えるアルミニウム合金を開発しなければならない。
確か、シリコンや鉄、マグネシウム、マンガン、亜鉛あたりがアルミニウムの合金を作る際の代表的な素材だった筈だ。
ジュラルミンを作る際についでにちらっと記事を読んだだけなので合金にするための比率も分からないし、どれが海水に強いかも不明だが。
と言うか。
考えてみたらそれらの鉱石が王都で定期的に入手できるのだろうか?
まあ、民間使用や空軍の創設でガンガン将来的に増えていくかも知れない飛行機と違って、南大陸との交易とそれを襲おうとする海賊を取り締まるための海軍数隻分だと思えば、極端に沢山素材が無くても問題はないかも?
最悪の場合、目が飛び出るほど高かろうと隆一の為にカカオとシナモンを持ってくる程度の大型交易船を数隻作れればいいのだ。
という事で、隆一は実験用の素材を入手するために鉱石ギルドへ行くことにした。
◆◆◆◆
「お久しぶりです!」
隆一が顔を出したら、以前魔力感知用のインクを作る際に素材探しでこのギルドに来た際に魔力感知スコープをあげた副ギルド長が早足で寄ってきた。
「久しぶり。
実は何種類か鉱石を買いたいんだが、お願いできるか?」
前回魔力の保持性を確認するためにサンプルや在庫を見て回った際に、今回求めている鉱石があったのは記憶にある。
値段を聞いていないのでどの位入手しやすいのかは不明だが。
「何をお求めで?」
副ギルド長が尋ねる。
「シリコンと、マグネシウム、マンガンが欲しいんだが」
亜鉛は家にある真鍮ゴーレムの素材から抽出できるし、鉄はアイアンゴーレムの素材が家に十分ある。
真鍮はサンプル程度しか素材を持って帰っていなかったので、今度迷宮に行った際に一体分持って帰る方が良いだろうが。
「シリコンはガラス職人のギルドに求める方が量も純度も良いです。
マグネシウムとマンガンでしたらある程度は在庫がありますが、どの程度必要ですか?」
副ギルド長がさっと受付の奥に向かいながら隆一に答えた。
流石副ギルド長。
前回会った時は魔力感知スコープへの喜びでスキップしている姿の印象が強すぎてあまり有能であるというイメージは無かったのだが、大手ギルドの副トップになるだけあって、それなりに有能らしい。
「ちょっと色々と実験したいからな。
5キロインゴット2つ分ぐらい貰えるか?」
迷宮で採れる金属は探索者ギルドから鍛冶ギルドへ送られてそこでインゴットの形にされていると聞いた気がする。鉱石ギルドでどうなっているのかは不明だが。
「マグネシウムは良いのですが、マンガンはインゴットには加工されないんです。
取り敢えず10キロ相当あればいいですか?」
副ギルド長が聞き返す。
「ああ、構わない」
と言うか、却ってインゴットの塊になっていると少しずつ取り分けるのが面倒だから、小さな塊で全部入手できる方が実験がしやすいと言えばしやすい。
まあ、加工スキルで必要な量だけ抽出できるので、実験はそれ程問題はない筈。
さて。
後は探索者ギルドに人をやって新しく海水を樽に入れて持ってきてもらおう。
そろそろ前回入手したものが異臭を発し始めた。
殺菌したら腐るのも遅らせられるが、金属への腐食効果に有機物の存在も影響があるかも知れないから、下手に海水に手を加えて長時間使えるようにするよりも、随時新しく汲んできてもらう方が良いだろう。
下水(とそれを処理するスライム)に大量に海水を流し捨てて良いのだろうか……




