1358. 商会との話し合い(8)
「これが水中翼船ですか!
これを大型船でも再現できると?」
カジーヴ・ピケッタに連れられてきたフェムト・ピケッタが庭で水路っぽく繋いだ桶の上を水しぶきをあげながら動いているミニチュア水中翼船へ身を乗り出して舐めるように見ながら聞いてきた。
どうも中小な商会だと重要な職務というのは一族の中に適性がある人間が居たらその人間に任せるのか、技術主任として連れられてきたフェムトはカジーヴの従兄弟だと紹介された。
そしてピケッタ家というのはどうもひょろっとした体形になる体質なのか、フェムトはひょろっとしたカジーヴを10年程度年を取らせたらこうなるかな?と思うようなひょろりとしたよく似た体形だった。
カジーヴよりも更に熱意マシマシで新しい技術に夢中なようだが。
まあ、水中翼船のコンセプトが新しすぎて我を忘れているだけかもしれないが。
「出来る筈……と期待している。
それを確認するための人員が欲しくて商会に声を掛けているんだ」
水路の終わりに辿り着いてドンドンと壁にぶつかっていた試作品を取りだし、向きを逆にして水に戻しながら隆一が答える。
「ちなみにスピードが普通の船よりも早く出来るとか、風に影響されないで航海できるというのは、どのような仕組みでなっているのかお伺いしてもいいでしょうか?」
ピルトン・ジャスナルが尋ねる。
アルザック・ナフザードに連れてこられたナフザード商会の技術主任は一族の人間ではないらしく、少なくとも名前は違った。
こちらは30代ぐらいの、これまたがっしりした体形のしっかり日に焼けた男だった。
ナフザート商会は働く人間が日焼けするのがデフォルトなのだろうか?
カジーヴもフェムトも多少は日焼けしているが、浅黒くはない。ピケッタ家は日焼けしにくい体質の一族なのかも知れない。
「帆を付けなくても進めるので、凪だったり向かい風でも進める。
まあ、魔石を使うからどうせだったら三角帆でもつけて風を活用した方がより航海が効率的になると思う。
船の本体は海面の上に浮かべているから水の抵抗がぐっと少なくなるので、推進器の方は使わなくても帆だけで同じ大きさで同じサイズの帆がある帆船よりも速く動けるはずだ」
地球の船が最終的には帆を使わなくなったことを考えると、ある程度以上推進器を効率化出来たら帆は無しで魔石の力だけで動く方が良いのかもだが。いや、海洋性魔物が居るこちらの世界では海面下の推進部が魔物によって破損するリスクがあるので、帆を完全に無しにするのは危険な気がする。
と言うか、推進部を魔物に齧られたらスピードが遅くなるし、その時点で詰んでいる気もする。そこら辺は実証実験で色々と試してもらう必要があるだろう。
敢えて海洋性魔物に船を襲わせた場合、その船の船員をどうやって救助するかが問題になりそうだが。
「船を浮かべる魔法陣なんて……最近、飛行船の小型化と量産化が可能になる発見があったと聞きましたが、それに関連した技術ですか?」
アルザックが低い声で隆一に尋ねた。
「まあ、近いな。
これを作るために必須な素材の使用契約に侵略的な戦争行為に使ったらその組織全体に対して目が飛び出るような罰金が請求されるという契約を商業ギルドと錬金術ギルドを通して締結して貰うんで、悪用は考えないでくれ。
ただまあ、その素材が海水に長期的に触れるような環境で使い続けられるのかはこれから色々と実験する必要がある」
地球でジュラルミンは塩に弱いと聞いた気もするから、こちらの世界でも同じ性質を有しているのか、それをどうにかして保護できるか、保護しても半重力魔法陣に影響が出ないかはこれから試す必要がある。
「使用契約なんて、海賊にはあまり関係ないと思いますが……」
カジーヴが微妙そうな顔で指摘する。
「船が実用化出来そうだとなったら海軍にも声を掛けて、あちらに海賊討伐用の船を準備してもらってこれを悪用する海賊は徹底的に根絶してもらう話にはなっている。
あとは、それこそちゃんとした錬金術ギルドに名を連ねる錬金術師に整備させないとすぐ壊れるようにするしかないかな……」
商会側の4人が嫌な顔をしたが、異議を申し立てずに溜息をついた。
必要な整備の頻度が高いのはコストに繋がるが、それのお陰で海賊に悪用されにくいとなったらメリットの方が高い。
多分。
まあ、そこら辺も色々と実験しつつ試すことになる。
沈ませなきゃ問題点は不明だが!




