1355. 商会との話し合い(5)
カジーヴ・ピケッタとのミーティングが終わって、隆一がダーシュと告げられた言葉の内容や意味合いの確認をし終わったところで、丁度次のミーティングの相手が現れた。
「ゼルゲーヴァ商会のフィニウス・ゼルゲーヴァです。
招かれ人であり、色々と新商品を開発していらっしゃると評判のリュウイチ様にお会いできて光栄です」
大げさなまでに嬉しそうに小太りした初老の男に挨拶された。
「招かれ人のリュウイチ・エノモトだ。
今日は来てくれてありがとう。
ちょっと南大陸との交易で得られている素材の中に、故郷で広く使われていた香辛料が幾つかあることが分かってね。
交易量を大幅に増やしたいと思って、それに協力してくれそうな相手を探しているところなのだ」
第一印象的にはカジーヴの方が好ましい気がした隆一だったが、取り敢えず先ほどと同じ言葉を掛ける。
「香辛料ですか!
当商会は色々な商材を発見して流通させるのを得意としています。
あまり知られていない香辛料とその使い方を広めるのも最も得意とする分野の一つなのですよ!
是非、当商会をご利用ください」
大きく手を動かして世界を示しているかのようにジェスチャーしながらフィニウスが応じる。
「色々な商材とは、どんな物を含むんだ?」
何とはなしに、口ばかり上手くて適当に大風呂敷を広げて客に安易な約束をした後に実際にその約束を守れなかった際のペナルティを部下に押し付けるのが得意だった元上司に印象が似ていて、既にこの時点でゼルゲーヴァ商会を切り捨てたくなってきた隆一だった。だが社会人になって直ぐの頃の好ましくなかった知り合いと印象が似ているからと話を聞かずに否定的な判断を下すのは良くないだろうと、質問を続ける。
「そうですね、新しい生地や染料、食材もありですし防具などでも効果が高いと評判になった素材や新工法などで造られたものを新しく見出して売り出すのを得意としています」
得意そうにそう話したフィニウスが更に今までゼルゲーヴァ商会が発見して広めた商品の話を語り始めた。
どれも中々凄そうに聞こえるが、何といっても隆一にとってはそれが本当の事かは分からない。あとでダーシュに確認する必要があるだろう。
第一、これだけ凄い発見をして全てがフィニウスの言うとおりに爆発的に売れたのだったらゼルゲーヴァ商会が『新興商会』とは言えもっと大手になっていそうなものだが。
しかも、ちらっと先ほどダーシュが何やら一瞬微妙な表情をしたのが隆一の目に入っていた。
「ふむ。
ちなみにゼルゲーヴァ商会の人員や船の数、どの程度の損失に耐えられるのかを大雑把でいいので教えてもらえるか?
南大陸との交易を新たに増やしたいとなると、それなりにリスクはあると思うから最終的に事業が落ち着くまでどの程度耐えられるか、知りたい」
フィニウスの自慢話に近いようなゼルゲーヴァ商会の得意分野の話が一息ついたところで、隆一が体力についての話を確認し、フィニウスには帰って貰った。
水中翼船のことは話す気にもならないぐらい、隆一と相性が悪そうだ。
「なんかこう、気が合わなくてアレが幹部であるような商会と協力するのは遠慮したいんだが。語られていた話などで、個人の薄らとした嫌悪感なんて無視すべきぐらい何か特に優れている点があるんだったら教えてくれ」
ちょっとぐったりソファに体を投げ出しながら隆一がダーシュに尋ねる。
「いえ。
フィニウス・ゼルゲーヴァの語っていた『ゼルゲーヴァ商会が発見して売り出した』商品の内の少なくとも染料に関しては私の知っている中小商会が根気よく内陸の生産者と一緒に開発して売り出しを始めた物だった筈です。
確か、何か問題があって売り出しが止まったとは聞いた気がしましたが……どうもゼルゲーヴァ商会に横取りされて、そのうち信頼関係が崩れて流通そのものが途絶えてしまったのかも知れませんね」
眉を顰めながらダーシュが言った。
「おやま。
自分より弱そうな商会の新規商品とかを奪い取るのを得意とする商会なのかな?
なんか得意分野と称していた商品が妙に取り留めないというか纏まりが無い気がしたが、単に奪い取っても大丈夫そうな中小商会が扱っていた新規商品ってことなのか。
取り敢えず。
無しだな」
隆一を害そうとするほど愚かではないだろうが、あれでは新規の船や航路を試して一緒に試行錯誤するような信頼できる人員が商会内に居るかも怪しい。
「そうですね、興味深い話をありがとうと伝えて、適当な言い訳を付け加えて今回の話はこれで終わりだと連絡しておきます」
ダーシュが頷いてメモを取った。
さて。
午後の商会はどんな感じになることやら。
ピケッタ商会も多角化っぽく色んな商品を扱っていますが、何故各商品を扱っているかの話がもっと倫理的で説得力がありましたw




