1351. 商会との話し合い
地上に戻った後、3人組はギルド受付の奥の方へ引きずって行かれた。
隆一も黒幕が居るのかとか、尋問に使う薬や術を知りたいと、何食わぬ顔をして後をついて行こうとしたらにっこり笑ったスフィーナに止められたので、そのまま煌姫の職場にケーキを届けた後は諦めて直帰した。
「南大陸との交易に関して話し合ってみたいというミーティングの予約が取れましたよ」
帰宅して書斎に顔を出した隆一にザファードが告げた。
「お?
どことだ?」
確か3つほど候補の商会があった筈。
「全てですよ。
新興商会のピケッタ商会とゼルゲーヴァ商会、あとは交易商として大手なナフザート商会と、どこもリュウイチ殿が会って南大陸との交易の可能性に関して話し合ってみたいと考えていると伝えたら、即座にトップの都合をつけてきました」
ダーシュが言った。
「それって俺が何か新しい技術を出すと思っているのか、金を提供すると思っているのか、どっちなのかな?」
半重力魔法陣に使えるジュラルミンの話がどのくらい広がっているかは不明だが、特許使用契約のまとめは終わったので、そろそろ商業ギルドの中で共有されている筈。
飛行船を作り上げる技術は軍や国が握っていて技術的にも資金力的にも単なる商会にすぐさま作れるものではないだろうが、隆一やデヴリン達が小型な飛行具で王都の外を飛び回っていたのは目撃されていた可能性はある。
そうなると、南大陸との交易にそれらの技術を提供するかもと期待されているのかも?
まあ、実際に水中翼船を開発したいと動いているのだから、似たようなものだが。
「こういう場合って一番大きな商会のトップと先に会うべきなのか、それとも新興から始めて大きい方に向けていくべき?」
地球でのビジネスだったら失敗したくないなら小さいところから回って突っ込まれてくる問題点を潰してから大きいところに回ると良いという考え方と、大きいところが最初に賛同してくれたら他も動きが早くなるという考え方もあった。
とは言え、今回はあまり多くの商会に参画されても面倒だが。
「取り敢えず、小さいところから回ってどんな協力や伝手を相手が提供できるのかを確認していけばいいのでは?
伝手だけで考えると大手の方が多いですが、協力的でリュウイチ殿の願いを優先してくれるのは新興なところでしょう」
ダーシュが助言した。
「なるほど。
ちなみに予約の順番は?」
『予約が取れた』との話なのだ。
考えてみたら既に順番は決まっているのだろう。
「明日の朝一にピケッタ商会、その後にゼルゲーヴァ商会、昼の後にナフザート商会ですね」
ダーシュが言った。
偶然なのか意図的なのか、既に小さいところからの順番でミーティングが決まっていたようだ。
「じゃあ、デヴリン達に明日は探索無しと連絡しておかないとだな」
隆一はメモを書いて玄関の方に向かった。
インターフォンで警備担当の誰かを呼出ても良いのだが、自分で門番役なり外を見回っている誰かなりを捕まえてメッセンジャーを呼んで探索者ギルドに居るデヴリンかダルディールに使えてくれと頼む方が早い。
デヴリンが既にギルドから離れていた場合は通信具で連絡する必要があるが。
あの3人組の尋問とかで、残っている可能性が高いと隆一は見ていた。
「さて。
カカオからチョコレートを錬成出来ないか、試してみるかな」
ちょっと考えた隆一は、チョコレートを作れないか、頑張ってみることにした。
話し合いが上手くいったら水中翼船の開発の話もする予定だが、まずはカカオやシナモンなどと言った香辛料を大量に買いたいという話をしなければならず、チョコレートが魅力的であるというのを説得する必要がある。
シナモンに関してはフレンチトーストをちょっとアリスナに作って貰って小分けしてもっていけばいいだろう。
始めて会う人間から貰って続くりの食材を相手が食べるのかは知らないが。
まあ、鑑定スキルがある人間が言えば、毒性があるとか変な催眠効果があるとか言ったヤバい副作用を見ることが出来るのだ。
それなりに大きな商会のトップとなればそういう毒見に近い役割を果たす人間が傍にいるだろう。
多分。




