1350. 20階(12)
ノンビリ昼食を食べ、果物類を大量に採取し、更に16階でエルダートレントの苗木まで掘り起こしていたので当然20階の問題は解決しているだろうと思っていたのだが、隆一達が20階に降り立った時、遠方で何やら言い争っている声が聞こえた。
「おや?
まだあの3人組を上へ引き摺り出していないのか?」
剣がぶつかり合う音や攻撃魔術の魔力は特に感じられないので、既に捕縛した後なのだろうとは思われるが。
「……取り敢えず、様子を見に行くか。
しっかり全員捕縛されていないのだったら面倒だ」
ちょっと顔をしかめながらデヴリンが言った。
妙にメロンや桃の採取に熱心だったと思っていたら、どうやら確実に20階での捕り物が終わるように時間稼ぎをしていたらしい。
まあ、隆一もそうだろうと思って何も言わずに協力していたのだが。
普段はやはり護衛役として同行している二人なので、あまり果物採取に熱中しては二人の雇用主に悪いと思って遠慮(一応)していたのだが、今回は思う存分、それこそ運搬具がほぼ一杯になるまで集めたのだ。
タルニーナの所にこれのかなりの部分を前払い的に渡しておけば、暫くはケーキを注文し放題だろう。
「そうだな、リュウイチに対する反応も確認してみたいし」
ダルディールが頷く。
という事でデヴリンが先頭、その後ろに横に並んだダルディールと隆一と三角形的なフォーメンションで声がする方へ進んだ。
「誤解だ!!!
単に手伝おうと思って手を出したら少し狙いが悪かっただけなんだ!!」
誰かが喚いている。
「要請されていないし、特に怪我人も出ていなかったパーティへの横殴りは手伝いと考えるよりは横取りか、殺意があると推論されるのが探索者の常識だ。
問答無用で殺さなかっただけ、感謝して欲しいな」
アズィールの声が聞こえてきた。
どうやら囮兼捕縛用に『丁度いい人材』の一人が『|暁の輝き《昔のデヴリン達のパーティ》』の元パーティメンバーだったらしい。
そういえば、彼は適当に探索者ギルドの依頼を受けるのんびりとした半引退状態でやっていくつもりだと言っていた。
どうやら怪しい襲撃狙いの探索者の捕縛も最下層まで到達して大規模迷宮の攻略間際だったパーティの一員にとっては問題ない依頼だったらしい。
「おう。
何か手伝いがいるか?」
デヴリンがアズィールとその傍に居た2人組に声を掛ける。
地面には先ほど見かけた3人がバラバラに拘束用魔道具でぐるぐる巻きにされて転がっている。
「そうだな、一人転移門まで引きずって行ってもらえるか?
倒すのも殺すのも問題ないんだが、流石に暴れる成人男性を引きずって行くのは危険そうでな。
誰を殺すか、迷っていたんだ」
アズィールがにやりと笑いながらデヴリンに答えた。
地面に転がっている3人組の顔色が悪くなっている。
というか。
迷宮内での計画的な殺人未遂なのだ。
何か裏が無いか徹底的に調べた後は処刑なのではないのだろうか?
ここで殺される方が拷問とかが無くて楽そうな気がする隆一だったが、もしかしたらこちらの世界の情報収集手段はもっと無痛なのかもしれない。
そして今回の行動の裏に誰か黒幕がいるならば、そいつに助けてもらえると思っているのか。
とは言え。
隆一を狙ったと言えるような状況で動いていたのだ。
許される可能性は限りなく低そうだ。
まあ、隆一達を見ても特に反応しないところを見ると、隆一を狙ったのではないのだろうが。
「じゃあ、俺は後ろからついていく感じで良いかな?」
デヴリンが相変わらず無実だと喚いている男を引きずり、代わりにアズィールが周囲を警戒しつつダルディールが必要に応じて隆一を守るという形で動けば安全は確保できるだろう。
ここで立って時間を潰す方が無駄だ。
「ああ。
だが、これの素材を載るだけ載せて持っていくからちょっと待ってくれ」
急いでアズィールが後ろに転がっていたゴールドゴーレムの足を切り離して運搬具に載せながら言った。
どうやらギルドから依頼費が貰えるにしても、折角倒したゴールドゴーレムを全部捨てていくというのは選択肢として無いらしい。
まあ、昔ならまだしも、今だったら妖精の手にがっつり魔力を籠めれば運搬具を浮かして引っ張れるのだ。
持って帰っても問題はないだろう。
何だったら隆一が手伝ってもいいのだが……口を開いたところでダルディールが隆一の腕に触れたので、取り敢えず何も言わずに黙った隆一だった。
もしかしたら、捕まえた悪党を引きずるのを手伝っても特に何もなく、せいぜいギルドからの依頼費の一部を貰えるだけなのが、倒した魔物を持ち帰るのを手伝うともっと事態が面倒になるのかも知れない。
倒すのを手伝っている訳ではないので自動的に分前請求権が生じる訳ではないですが、一部無くなったとクレームを付けられるとか、実際に盗む輩がいたりと、高額な素材の時は色々揉めやすいので、素材には近付かないのが一番w




