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27 伯爵子息と朝から遭遇しました

50ブクマありがとうございます! 嬉しいです~!

これからもブクマや評価など増やしてたくさんの方に読んでいけるよう、続きを書いていきたいと思います~!

 

実力テストの日です。


※誤字修正しました。ご報告ありがとうございます!

 雨の日ライブを見事成功させた私は、昨日の余韻に浸りながらも憂鬱な今日のことを思ってこっそりため息を吐いた。


 あぁ、昨日は楽しかったなぁ。


 いつも来てくれる子たちは『伝言』をしっかり理解して集まっていてくれた。更に、駅舎でライブをしたことで、この国の住人ではない旅行者にも見せることができた。


 見たこともないような音楽や歌や踊りに驚く人々の顔が忘れられない。私はほくそ笑む。


 もしかしたら「さすが音楽の国ノイシュテッター王国だ」なんて思われてしまったかもしれないな。いきなり満足度が高すぎるとこのあとがっかりするかなぁ……。

 まぁでもこの国のオペラや演劇は祖国なんて及びもつかないほど良いし、別の国がどれほどの娯楽水準なのかはあまり詳しくないが、ノイシュテッター王国には追いつけないだろうしきっと大丈夫だろう。


 そんな感じで、私は憂鬱と歓喜両方の感情を持て余し、かなり早く学園へ到着してしまった。


 今日は因縁の実力テストの日。

 殿下との謎の勝負について、私は結局何も言及できないままだった。

 なんといったってクラスメイトとはいえ相手は王族で、気軽に話しかけることなど不可能だった。

 更に、殿下は毎日学園に来られる訳ではなかった。優秀がゆえか、すでに公務を行っているようだからだ。そういう日はエーギンハルトも休んだりする。そうなると彼を捕まえるのもかなり難しかった。


 第一、あの男と話をしたところで「殿下に言ってくれ」とか慇懃に言われるだけに決まっている。


 はぁ……どうしたら良いんだろ。


 全教科満点を目指すか、目指さないか。殿下相手に負ける方が角が立たないのは間違いない。だが、それをしたときに彼がどう思うか、そのことを考えると胸が痛い。


 たぶん、殿下は私が手を抜いたら悲しむんじゃないかなと思うのよね。


 なんとなくだけど。ああやって私のことをわざわざ構ったり煽ったり笑いかけたりするのは、きっとこれまで頭の良さで勝負になる相手がいなくて退屈なのかもしれないと思ったのだ。エーギンハルトはその立場や忠誠心から本気を出すことはないと、私は判断していた。


 殿下を超える実力はありそうだと思うけどなぁ。


 とにかくテストが始まるまでの僅かな時間しか、チャンスは残されていない。今日の座席は順位に則った形だから、私は殿下の後ろの席になるのだ。仕掛けるならそこしかない。懸念事項としては、私の後ろの席がエーギンハルトだということだろうか。


 あの2人に挟まれる私……なんだか寒気が。

 末恐ろしい席順に今から震えるが、席が前後なら小声で話せないこともない、と思いたい……。


 そうよ。きっとなんとかなるなる!


 現実逃避気味にポジティブな思考をあえてして、私は意気揚々と教室の扉を開けた。


「おはよう……ございます」


 寮ではまだ朝食時間のような速さ。だからまさか誰かがすでに登校しているなんて思ってもいなかたのだが、果たしてそこには先客がいた。

 しかし、声を上げたが答えは返ってこなかった。

 なぜなら先客は机に突っ伏して眠っていたからだ。


 あの緑色の髪は、攻略対象のシーヴェルト・ヘンゲン伯爵子息。殿下たちのご学友で、彼らからはシーヴェと呼ばれている。いわゆる長髪チャラ枠なのだが、眠り属性もついているので攻略対象っぽい行動を取っていない今、私の中では『よく寝てる人』である。


 そんな彼は窓際から2列目の1番前の席で突っ伏していた。

 普段は廊下側1番後ろという眠るには特等席である場所でぐでっと伸びている。

 近衛騎士団長子息で本人も訓練を受けがっしりとした筋肉を持っていることを知っている私は、彼の座席配置が廊下側からの不審者があったときの壁であることは悟っていた。


 普段からも来るのが早い人だとは思っていたけど、まさかいつもこんなに早く来ているのかしら?


「……、朝?」

「シーヴェルト様、おはようございます」

「まだ早い……ふぁぁ」

「申し訳ありません、起こしてしまいましたか?」


 本格的に眠っていた気もするが、私の気配を察知して起きたのかもしれない。

 非常に眠そうな彼だったが、なぜか程なく身体を起こしてしまった。こうなると会話しないといけない気がして、私は自分の本日の座席――彼の斜め後ろに座りながら問いかけた。


「いや……まぁ、大丈夫。それより君、ずいぶん来るのが早いね……」

「道が空いておりまして」

「はは……なるほど」


 私が煙に巻いたことがなぜか面白かったらしい。彼は肩の下ほどまである長い髪をさらりと揺らし、唇に拳を押し当てていた。くつくつと笑っている。


「実力テストの日は、悪あがきをする者も多いからギリギリに混み合うんだよね」

「そうでしたか」


 それは知っていたが、それを考えてもずいぶん早い到着なのだ。それをきっとシーヴェルトは気づいている。エーギンハルトみたいに謎の陰謀論とか信じてないと良いけど……。


 彼はいつも寝てばかりだし、移動教室のときなどは殿下の護衛のごとく後ろを歩いているから私は彼と個人的に話すのは初めてだった。


 うーん、やっぱり将来エリートが約束された伯爵子息。それに攻略対象だけあって、一筋縄ではいかない人物であるようだ。


「キャロル嬢は、朝に詰め込むタイプ?」

「いえ、私は勉強は特に……いえ、そうですね。そうかもれません。いえ、そうでした」

「ははっ!」


 くぅ……腰を曲げて本気で吹き出されてしまった……。


 私は勉強を口実にすればシーヴェルトと話さなくて良いと気づいて軌道修正したのだが、ちょっと言葉が多すぎたようだ。

 今の対応は侯爵令嬢失格よ、私……。


「はは、さすが殿下のお気に入り。面白いねぇ、キャロル嬢」

「……事情を把握しておられるのなら、満点を取ってくださいません?」

「それは無理。俺、この順位キープするのもギリギリだから。むしろ後ろからめちゃくちゃ追い上げられてる」

「まぁ……」


 私はちょっと驚いて目を軽く見張る。シーヴェルトの次はフィリーネなのだ。

 そうなんだ、フィリーネってやっぱり頭良いのね。私に取っては気さくで髪フェチのちょっと変な友人だというのに。


「でも、どうしてジークと『順位対決』なんてすることになったの? あいつは負けず嫌いの上にしつこいから、今回勝ったら大変なことになるよ」

「……では負けた方がいいのでしょうか」

「うーん、わざと負けるのは止めたほうが良いかな。手加減された、勝たされたと思われて、負けず嫌いが加速する」

「ではどうすれば!」


 思わず立ち上がって机を軽く叩いてしまう。令嬢の手なので大した音も立たなかったが、そんな動きが意外だったのか、彼は面白そうに笑みを浮かべる。


「キャロル嬢って動きが面白いね。小動物みたい」

「それは淑女に向ける言葉ではない気がします」

「ああ、そうだね。すまない。何か詫びをしようかな」


「いいえ、いりません!!!」


 なんで上流貴族のくせにすぐそう下手に出るのだ!? まぁ借りを作るほうがまずいのかもしれないが、デジャヴを覚える展開に頭が痛い。


「はは、冗談だよ。こういう流れでジークと勝負することになったって聞いたから試してみただけ」

「……はぁ」

「まぁ俺としては面白い方につく方が楽しいし、キャロル嬢につくのはやぶさかでないかな。ジークが負けるところを見るのも久々だし」

「愉快犯ですか」

「でもまぁ俺は傍観者だよ。けしかけるならエギンとかヴィンツの方が勝率が高い。でも、あいつらも全教科満点なんてとったことないんじゃないか」

「そうなんですか?」


 エリートだし攻略対象だから、満点くらい余裕だと思っていた。

 ちなみにテストは7科目あって、いわゆるリベラル・アーツというやつである。量は多いし複雑な科目もあるが、それくらいは幼い頃から家庭教師をつけて勉強しているものだと思い込んでいたのだが。


「君が規格外なの自覚した方がいいよ」

「……お気遣い、痛み入ります」

「すでに手遅れだけどね」


 ジークに目をつけられているんだから。そんな風に言ってにやっと笑われてしまい、私はもうへたりと椅子に座って頭を抱えることしかできなかった。

他の攻略対象ともちょこちょこ交流をはかっていきます。

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