↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/49

20 ヒロインと悪役令嬢、そして初めての友人

読んでいただきありがとうございます!


前回のライブ回の間の、学園生活のお話です。

 それは始業の日の翌日のこと。


 朝はダンスレッスンを見ていたお陰でギリギリに到着したので、誰とも会話することはなかった。殿下は今日もお休みだったけど他は全員出席だったので、ひとまずヒロインを探すことに。


 そしてホームルームのあと、私はついにヒロインを発見しました。


 リーナ・クラム男爵令嬢。

 茶色くて直毛の髪に黒っぽい瞳、しゅっと細くて華奢な女の子。第一作のヒロイン、カミラ・マレット男爵令嬢がきゃるるんあざと可愛い系だとすると、リーナ嬢はか弱く守ってあげたい系ヒロイン、なのかな? ちょっとぼんやりしている間に周りが察して動いてくれる感じ。


 なんと彼女、私の真後ろの席でした!

 移動時間に気づきました。HR中にちらちら斜め後ろを伺っていても見つからないはずだよ!


 え、ていうか彼女、メイン攻略対象である王太子殿下の前の席ってことだよね。すごい、さすがヒロイン。席次からしてすでにヒロインの貫禄が……。


 それはさておき。


 1限目は移動教室、美術の時間。

 こちらの席も自由席だったので、私はどうにか後ろの方を確保できました。美術だから絵を書くのかと思ったら、今日はとりあえず一年間の授業内容と、歴史について学ぶこととなった。前年のおさらいっぽい感じだ。

 この世界ではさほど紙が安価ではないはずなのだけど、デッサンの授業とかも普通にあるらしい。やっぱり王立学園だから予算が豊富なのかな。


 ヒロイン、リーナ嬢は学力の順位は乙女ゲームのことを考慮すると上位のはずなんだけど、クラス内では大して目立たない普通の女の子、って印象を受けた。

 教室を移動している間は同じ男爵令嬢の子数人で動いていたけど、目立った発言はなく、他のメンバーから名指しで話題にされることはなかったようだ。


 私? 私は誰からも声をかけられなかったので一人で移動しました。

 泣いてなんかない! こちらから声をかけるのも、ちょっと空気に負けてできなかった。

 あと、さすがに名前と顔が一致していない状態だと声もかけづらい。こっちは主に貴族的な意味で。下手に声をかけて家同士がめちゃくちゃ仲悪かったりしたら、義父と義母に迷惑がかかってしまう。


 まぁそんな始業早々、殿下の側近候補に目をつけられてぼっちまっしぐらかと思った私にも友人はできました。3日目にようやく。


「キャロル様、お話してもよろしいですか?」

「……あ、はい。隣の席の……ごめんなさい、まだ名前が一致していなくて」

「いいえ、大丈夫です。私、フィリーネ・ゲッツェと申します」


 艷やかな茶色の巻き毛に薄い茶の瞳。気が強そうで溌剌とした視線をこちらに向けてくる。私の右隣の席に座る彼女はこの国ではそこそこ古い伯爵家のご令嬢で、伯爵の中だと中の上というところだろうか、フォルケル家とは領地も遠く特に交流はないが、仲が悪いというわけでもない。

 そんな彼女は、昼休みが終わりかけた庭園で声をかけてきた。ベンチに座っていた私は、こちらにやってきた少女を見上げる。


 教室で私におおっぴらに声をかけづらい空気は、正直ある。たぶんこれは実際に実力テストが終わって私の順位がハッキリしない限りは続くんじゃないかと思われる。

 あの側近候補、エーギンハルトに順位で勝てば……って、それってほぼトップ狙いなんだけど、果たしてどうなることやら……。


 フィリーネはこちらを臆するような目は一切していなくて、目立つ教室ではなく人の少ないところで声をかけてきたりと配慮もできることから、かなり好印象を抱いていた。

 祖国では友達がいなかったので、はじめて友達ができるかもしれないと思うとなんだかキャロラインが不憫に思えてきた。

 前世でも大概だったけど、現代日本では別にぼっちでもそこまで目立ったりはしなかった。

 しかしこちらでは、ひとりなのは思いの外目立つというか、交流もできないんじゃ社交界でやっていけるのかしら……みたいな目で見られてしまうのよね。


 うう、キャロラインのためにも、お友達できるだけ作るからね!


 フィリーネは私の隣に座ると、きらきらとした瞳でこちらを見てくる。


「その美しいプラチナブロンドを見た瞬間、お友達になりたいと思ったんです!」

「あら、そうなの? そう思ってくれるととても嬉しいわ。プラチナブロンドはそれなりに珍しいものね」

「ええ。ヴェロニカ様のストレートのプラチナブロンドもとても素敵だったけど、ガードが固くて。あの、少し触れてもいいですか?」

「構わないけど……ヴェロニカ様、って……ヴェロニカ・ダブロフスキー侯爵令嬢のことかしら?」

「そうです。去年まで同じSクラスだったんですけど、今年からAクラスに移動になったんです」

「そう……」


 第二作目の悪役令嬢の名前がいきなり出てきて驚いた。けれど、彼女はそんなことよりも私の髪にご執心らしく、手をわきわきとさせてこちらに近づいてくる。目が爛々と輝き始めて、ちょっと怖い。


「それよりも……良いでしょうか?」

「え、ええ……」


 伸びてくる華奢な手に少々怯えつつも、髪フェチなのかなぁ……と考えている間に、そろそろと髪を撫でられた。その手は少し震えていて、感激なのか緊張なのかは私には判断できなかった。

 優しく触れてくれるから、悪い気はしない。


「ああ、この絹のような手触り……素晴らしいです!」

「そう……ありがとう」

「あのっキャロル様! 私とお友達になってくださいまし!」


 フィリーネはうっとりした声だったので、きっと感激していたのだろう。そのあと、林檎みたいに頬を真っ赤にして、ぎゅっと目をつむって意気込むように願ってきた。


「えぇ……構わないわ」

「えっ良いんですか!?」


 少し引きつつも了承すると、彼女はびっくりして目を見開いた。大きな瞳が落ちそうだ、と思う。


「どうして驚くの?」

「私、美しい髪が好きなんて、ちょっと自分でも変だなってわかってるんです。触っていいかなんて聞くと大抵は嫌がられます」


 そういえば貴族令嬢にとって髪の毛は宝だ。こうやって気軽に触れさせるものではないのかもしれない。私はそういう貴族らしい意識は、ふと気を抜くと忘れてしまうのだ。しまったと思うけど、すぐにもうどうしようもないところまできてしまったと思う。


 フィリーネは、さっきからずっと髪をうっとりと撫で続けているからね!


「そうなのね。でも、私は褒められて嬉しかったわ。それに……こうして声をかけてきてもらえたのも……嬉しかったの」


 クラスでは遠巻きにされていて、友達なんてできないかと思っていた。

 だから髪に執着するというような形でも、私は嬉しかったのだ。


「フィリーネと呼んでもいいかしら? 私のことは、キャリーと呼んでもらえたら嬉しいわ」

「えぇ、ええ、キャリー! よろしくね!」


 キャロラインもキャロルも、愛称は同じくキャリーだ。フィリーネから愛称で呼ばれると、何だか懐かしい気持ちになって自然と笑みが浮かんだ。




***




 私はフィリーネの話を聞いてから、こっそり隣のAクラスを覗きに行った。そこにはプラチナブロンドの悪役令嬢がたしかにいて、私が追い出した形になったのは間違いなかった。


 うー、恨まれてるよね、きっと……。

 2年はあまりクラス移動なかったらしいし、3年になってAクラスに行ったのは彼女だけという話だし……。


 声をかけるつもりはもともとなかった。フィリーネ曰く彼女は悪役令嬢らしい、なかなか苛烈な性格らしい。人に厳しく、友人は少なく、プライドが高くて少々癇癪持ちだとか。

 侯爵子息や令嬢の立場の人がAクラスに行ったことはあまりないことのようで、そういう意味でも話題らしい。

 彼女は休み時間だというのに不機嫌そうに眉を寄せたままひとり読書をしていて、誰かと話している様子はなかった。


 まぁ昨日までの私も同じようなことをしていたのだけど!


 今日からはフィリーネがこそこそと話しかけてくれるので嬉しい。

 横向きに座ってひっそりと話していると後ろの席のヒロイン、リーナが目に入ってくる。けれど、彼女は特に私には興味がないらしく、ぼんやりと何か空想しているような遠い瞳をいつもしていた。


 うーん、しかしリーナを見るとなんだか既視感があるのだけど、なんでだろうか。前世で見たことがあるからかな? エーギンハルトとかにはそういう気持ちは抱かないのだけど……。


 ヒロインと悪役令嬢、どちらともあんまり関わりたくないので、私に意識を向けないのはありがたい限りだ。

 心配なのは私に恨みを抱いているかもしれない悪役令嬢、ヴェロニカのことだけど、クラスが違う分、気をつければ関わり合いにはならずに済むと思う。たぶん……。


 心配なのは悪役令嬢がいなくなってしまったこのクラスで乙女ゲーム的に『悪役令嬢役』が求められた結果、私がその槍玉に挙げられることだ。

 第一作の悪役令嬢だった私の立場はいかにも悪役令嬢だもの……。現状のクラスでの立ち位置も、かなり怪しい気がする。


 どうにか関わり合いにならないように努力するしかないけど……でも一体どう努力すればいいのやら。とにかく地味にしていたいのだが、声をかけられなくともエーギンハルトの胡乱げな視線をちょいちょい感じるので、諦めてくれていなそうだ。


 成績で上位に食い込むのはやばいのかもしれないけど、そうしないとクラス内でずっと腫れ物扱いだ。本物の悪役令嬢は成績がそんなに良くないからAクラス落ちしたんだし、成績は上位でもいいのか?


 それ以前に実力でテスト受けたところで上位に食い込めるかどうかは分からない。

 上位はほぼ満点争いみたいな感じってフィリーネが言ってたし……。


 うーん。いろいろと考えることはあるけど、なるようにしかならないか。


 そんなことを考えていた私の耳に『ジークフリート殿下ご登校』の話が聞こえてきたのは、5月に入ってからのことだった

友人ができましたよ! そして悪役令嬢とヒロインも無事に発見です。

次回、少し時が進んで、推し殿下ついに再登場です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。