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17 学園生活は波乱万丈の予感-3

感想ありがとうございます!嬉しいです!

今回で攻略対象が出揃います。

「明日より授業が開始される。早速だが来週は実力テストだ。最終学年の成績は今後の君たちの人生にも関わってくるだろう。手を抜かぬように」


 担任教師は慇懃に言って、教室を出ていった。

 私は無意識に詰めていた息をふうっと抜く。


 あれからエーギンハルトたちとの会話は、担任教師がやってきたことでなあなあに解散した。タイミング良かったよ、ほんと。

 エーギンハルトとは関わりたくないけど、同じクラスだと難しいよね……。何か対策を考えたほうが良いかな。


 ところで、このクラスは座席が成績順ではなかった。

 なんと自由席なのである……。頭がいいクラスだからなのか、非常に自主性に富んでいる。

 テストのときは実力順みたいだけど。


 というわけで、新参も新参の私は座席競争に破れ、空いていた一番前中央の特等席と相成ったのである。無念。ちなみに5列×4人で20人なので、本当にどセンターである。担任が目の前すぎて少しでも横向いたら速攻見咎められるやつ。

 後ろから教室の様子をじっくり観察したかったなぁ……。

 最前列が人気ないのは、どれだけ学習意欲がありそうなクラスでも同じらしい。結局私は禿げ茶瓶なのに口の上にちょび髭を携えた、恐ろしく厳しそうな担任の威圧的な顔しか見ることができなかった。


 でも座席の人数はなんとか確認できた。空席は1つで、つまりジークフリート殿下以外は全員出席しているらしい。つまりヒロインがこの教室にいて、悪役令嬢はこの教室にいないようだ。


 ヒロインがステルスすぎて発見できない……。


 それより、悪役令嬢は何処……?

 ハッ、もしかして私がこのクラスに入ったから、悪役令嬢がSクラス落ちした?

 いやまさか、それだとヒロインのライバルポジションとして不足過ぎる。

 あ、でも成績競争はあくまで攻略対象相手のみで、悪役令嬢とは成績争いはしないのかな? 他の淑女らしい競争をするとか?


 う~ん、ゲームについては殿下を出歯亀するヒロインから話が始まるのと、攻略対象と成績争いすることしかあらすじからは読み取れないんだよなぁ……。

 成績争いというのが一週間後の実力テストのことなら、そろそろゲームも開始されるはずだけど。

 そもそも殿下はなぜ今日お休みなんだろう。公務? ほんと情報が足りない……。


 他にあらすじから分かることと言えば、ヒロインは1年時はAクラス以下で、2年になってからSクラスになったと思われるってことくらいか。殿下とクラスメイトになったことに驚く文面があらすじにあるからね。もしくは私と同じように去年に途中編入している……線はないか。多分。


 とにかく、今日はもう解散のようなので、私は明日の1限目で使う移動教室の場所だけ確認してさっさと帰宅しようと立ち上がった。この教室にずっといたら、またエーギンハルトに話しかけられるかもしれないし。


 ちなみに空席――殿下の席は中央列の後ろから2番目、つまり私が座る席の後ろの後ろで、エーギンハルトはその後ろ。外からの狙撃や廊下からの侵入者に配慮した座席と思われる。ちなみに他の二人は、廊下側の最後尾に緑髪チャラ男のシーヴェルト、窓側の前から2番目に青髪ドS眼鏡のヴィンツェンツが座っているようだ。


 前世の学校と違って教室は広いし、机と椅子は木で作られた横幅が随分広いもので、結構場所を取っている。だから同じ列と言えどそこまで距離は近くなかった。

 前の扉から出ればエーギンハルトを見ずに、また見咎められずに出られるだろう。そそくさと教室を出て、帰宅する生徒でやや混み合う廊下でため息を吐く。


 はー、いろいろと憂鬱だ。初日だっていうのに、色々ありすぎる。


 とりあえず、ヒロインはまた明日探してみよう。悪役令嬢も明日かな、Aクラスはうちのクラスの後ろ側に教室があるから、歩いている間に後ろの扉からエーギンハルトと鉢合わせする可能性をなくしたい。


 あ、そうだ。

 なら下級生の教室を通りかかって残りの攻略対象でも確認するか。


「ええと、2年の教室はひとつ上かな?」


 この学園は1、2年が3階、3年が2階を使い、1階は食堂やサロンに購買部があったり、ちょっとしたパーティ用の広間なんかもあった。特別教室や教職員の部屋は残りの2階にあるようだ。つまり、かなり敷地面積が広い。外には厩や演習場があったり、広い庭に温室、森っぽい木が連なった場所や湖もあると聞いている。


 建物は上から見ると凹の文字のようなコの字型で、3階の右翼に1年の教室、左翼に2年の教室があり、3年の教室も左翼の2階なので、そのまま階段を上がれば2年の教室を覗くことができる。


「よし、行ってみよう!」


 明日使う特別教室は右翼側だから、1年の教室の方から下に降りれば、きっと同級生には見つからずに移動できるだろう。




 ***




 そして私は2年Sクラスの教室へ向かっていた。おそらく攻略対象だから頭良いと思うんだけど、どうだろう?

 すでに解散済みなのでいない可能性もあるけど……と、思っていたら教室から出てきたばかりの橙色の髪がこっちに歩いてきたわ! 目立つ! すぐ分かって便利だ……。


「えぇ、そうなんだ」

「だからディートも街へ行ってみようぜ」

「うーん、でも今日は父に呼ばれているんだ。教会本部に寄らないと……」

「そうなのか。相変わらず手伝いしてるんだな」

「跡継ぎだからねぇ」


 クラスメイトらしき茶髪の男と談笑しながら歩いているのが、ディートことディートリヒ・コッケル。この国で広く周知されている宗教は女神・クラングを唯一神としたクラング教で、彼はその神官長の息子である。家自体も侯爵家と位が高い。

 橙色の髪に夕陽の瞳。華奢で小さくて可愛いタイプ、典型的な年下きゃるるん系である。こういうタイプにありがちな腹黒要素はないと思いたい……。


 特に面識もないのでさらっとすれ違った。ヒロインではないから、乙女ゲーにありがちな特殊な遭遇イベントも発生しなかった。


 Sクラスの教室から出てきたから、私の予想は間違っていないようだ。ついでにこっそりと空いたままの扉から覗き込んでみると……紫髪はいなかった。


 さすがに全員遭遇とはいかないか。


 私は誰かに声をかけられないようすぐ歩き出し、特別棟の方へ移動した。

 階段を降りると急に人気がなくなる。今日は授業がないから当たり前だと思いつつ、美術室を確認。明日は1限目から美術なんだよね。絵心はいまいちなんだけど大丈夫かしら。

 そんなことを考えつつ、一応特別教室を全て確認しておくことにした。

 ひとつひとつ、扉の上にあるプレートを確認しながら歩いていく。


「あ、音楽室」


 音楽室を発見すると……我慢できずに中に入った。


 ふふ、何か楽器あるかな?


 この学園では当然のように楽器の授業というものがある。普通の音楽というか、歌う授業はない。歌は吟遊詩人やオペラ歌手のもので、貴族が歌う文化はあまり根付いていないからだろう。庶民が多く通う学園ではあるのかもしれない。


 教室部分には楽器はなくて、私はすぐに準備室ぽい続き部屋に入る。そこにはあるわあるわ、木の棚に大量の楽器が置いてあって興奮した。


「わ~すごい……いっぱいだ」


 リュート発見。ギター代わりに弾ける人材欲しいなぁ。

 ん……この蛇みたいな楽器はセルパンかな? 確か中世に聖歌用とか、軍楽隊で使われていた音の低い管楽器だ。

 あっ、ポルタティーフ・オルガンがある。オルガネットとも言うけど、小さなパイプオルガンのことだ。あんまり大きな音は出ないけど、ピアノ代わりにライブで使えるかなぁ。音鳴らしたいけど、さすがにやばいよね。


「はぁー……すごい、歴史博物館みたいだわ」


 前世の資料本でしか見たことがないような楽器がたくさんあって、私はつい興奮しながら部屋の奥へ進んでいく。部屋は10畳以上はありそうで、棚が所狭しと置かれているのでまるで楽器の森みたい。

 テンションが上がってついうきうきと歩いていたら。


 ……っと、え。……誰か寝てる?


 部屋の一番奥、窓の下に置かれた三人がけのソファの上に誰かが寝転がっていた。熟睡しているのか全く気づかない。多分。

 顔を制服の上着で隠しているから顔が見えないのだ。


 いやでも待って、あの髪の色……紫!?


 ちょっと薄暗いけど、上着からはみ出ている色が見えた。間違いない。あれはおそらく最後の攻略対象であるイヴァン・クレムラートだろう。顔見えないけど。

 でも私は見ずとも顔を知っているのだ、二次元の方ならば。


 彼は国の東側を守る辺境伯の長男で、紫の髪にアメジストの瞳を持つ。父親は辺境騎士団長だ。この国の東側は海になっているので、海軍も有しているし、交易などで領地は豊かだとか。そんな重要拠点なので父親が国の東西南北それぞれに拠点がある辺境団をまとめる団長となったのだろう。

 父親の跡を継ぐ予定で卒業したら騎士団に所属することが決まっていて、今も鍛錬を欠かさないような脳筋ワンコ系だったよね。唯一見える下半身の筋肉がなかなかすごいし。


 はっ、もしかしたら気配でバレているかも!?


 攻略対象と関わる気はない。私は慌てて楽器室から出たのだった。

後輩キャラを見かけました。悪役令嬢とヒロインが見当たりません(byお嬢様)

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