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11 厳しいレッスン-2

感想や評価、ブックマークありがとうございます!

励みになります~!


異文化にジェネレーションギャップを感じつつ、レッスンがんばってます。

『歌うんですかっ!?』


 移動中、蒸気機関車の一等室の中でアイドル計画を練っていた私に、驚いた声を上げたのはワンコ騎士のチェスター。引きつった表情だったから、ちょっと面白くなる。


『ええ。もしかして音痴なの?』

『そうでは……ないと思います、多分……』


 からかうように聞いてみたら、そもそも歌った経験がさほどないらしい。

 確かに音楽の授業もカラオケもない世界では歌う機会ってそうないかも。


『クリスは?』

『私は洗濯の手伝いのときに少し……でもあまり自信は……』


 大きな洗濯はみんなで協力して足踏みするみたいだから、そのときに歌うのだろう。だが敏腕メイドにも苦手なものがあるとは。憂い顔も美しいなぁ。

 最後にシリルに問いかけてみると。


『私は平凡かと思いますが……』

『へぇ、自信あるんだ』

『え、いやっ!? そういうわけでは……』


 こういうときに『普通』とか『平凡』とか言う人はたいてい上手にこなすのよ。

 お酒の強さと一緒ね。


『じゃあちょうど良かったわ。ひとまずセンターはシリルに努めてもらおうと思ってたから』


 やっぱり優しげな正統派イケメンは中心に立ってもらわないとね!


『ダンスの方はチェスターに期待してるわ。なんてったって体力あるし』


 バク転とかできるのかな。ワクワク。やっぱりアクロバティックな技ができれば注目されるものね。クリスはその中性的な美しさで魅力的にダンスしてくれれば問題なし。

 ああ、3人がアイドルしてる姿が今から頭に浮かぶわ! 楽しみ!




 ***




「……って、安直に考えてた時代もありました」


 現実は、結構厳しかった。


「お嬢様? どうかされましたか……?」

「ああ、何でもないの。クリス、さっきステップ左右逆だったわよ」

「も……申し訳ありません!」


 クリスは3人の中ではやっぱり一番体力がなくて、集中力が切れるとミスを連発した。華奢な体で普段は立ちっぱなしが多い仕事で、こちらの女性はあまり激しい運動はしないからだ。

 それでも、ダンスレッスンの前哨戦である基礎レッスンでぜいぜいはぁはぁしてたのには驚いたけれど。


 ……まぁ、それは教えるために一緒に基礎レッスンした私も同じなんだけどさ。


 令嬢様の体力のなさ、舐めてたわ。ということで私も3人と同じくらい体を動かしている。お陰で、最近は朝の寝覚めが非常に良い。


「シリルはなんか……卒がないわよね」

「そうですか? お嬢様のために努力していますから」

「でも、もうちょっとオーラ欲しい。センターの覇気っぽいの」


 困った顔をされた。確かに執事見習いという影の存在にオーラとか求めることが間違っているのは分かる。

 分かるけど、3人の個性がバラバラな分、ちょっと序列が欲しいのよね……。

 この世界のイケメン基準だと、シリルが一番女の子たちにウケが良いのは間違いないし。センターでありトップのシリルと、それを支える硬派チェスターに、中性的な個性派クリス……って感じで、わかりやすくキャラ付けしたいのよ。


「で、チェスター。貴方はいつになったらフリを全部覚えてくれるのかしら?」

「うっ……すみませんお嬢様……努力はしているのですが……」

「努力してもできなかったら一緒だわ。ほらほら、休んでいる暇があったらステップ覚えなさい! いくらでも前で見本を見せてあげるから」

「ううっ、辛い……でもお嬢様を堂々と見つめられるこの絶好の機会……っ!」


 ちょっと、わざとじゃないわよね?

 私だって体力削ってやってるんだからしっかりしてよ!


 本番にと思っている休日まではあと2週間。

 どうにかそれまでに形にしないといけない。3人は本業もしないといけないから、時間はあるようでないのだ。


 幸い、3人はもともと仲が良いし忠誠心からかとても勤勉だから、空いた時間に集まって練習してくれたりしているらしい。

 ありがたい限りだわ……。


 私は私でこの国の流行りの情報収集のために叔母にくっついてお茶会に出たり、楽曲指導したり、ステージの構成練ったり、衣装の最終手配したりして色々と忙しいのよ!


 衣装はひとまず貴族の私服である絹の白シャツにジャボ、下は黒スラックス。その上に燕尾服っぽい裾が二又のしっぽみたいに長い上着を用意している。

 それぞれのイメージカラーを決めて、ジャボと上着はその色にした。


 3人が衣装を身に付けた姿を見たときは膝から崩れ落ちたわ、完璧な衣装だって。本番で見るのが今から楽しみすぎる。


 本番。

 今からすっごくワクワクしてる。絶対に見た人みんなが虜になるに違いないわっ!

 そのためにも。


「ダンスレッスンが終わったら次は歌よ!」

「歌……っ!」


 チェスターが絶望的な顔になった。




 ***




「き、きみの笑顔を……」

「チェスター、恥じらいは捨てて!」

「む、無理ですっ!」


 恋愛色というか、女性が欲しい萌え言葉を押し出しまくった歌詞は、硬派なチェスターには辛いものがあるらしい。否、チェスターだけでなく、クリスもシリルもやりにくそうにしている。


 でも、女の子はいつだって甘い言葉が欲しいのよ!

 少なくとも私は聞きたいしっ!


「情けないわねぇ」

「お嬢様、私もちょっと恥ずかしいです。この『世界の中心には君しかいない』とか『どんな空の下でも見つけ出してあげる』とか、こんなに刺激の強い……本当にお嬢様が考えられたんですか?」

「わーっ! 歌うのは良いけど、読み上げるのはやめてっ!」


 私だって素面で考えるのはかなり恥ずかしくて、ベッドでのたうち回りながら考えたんだからっ!


 トランペットメインの1曲目は騎士と少女がテーマなのよっ!

 ちょっと強引系男子にグイグイ攻められる感じ、女子は好きでしょ?

 私は好きよ!


「シリルは飄々と歌ってるけど、耳が赤いのがちょっと萌える……」

「……モエル?」

「ああ、こっちの話」


 は~うちの部下たち可愛すぎか?

 この魅力を庶民の女の子たちに見せびらかすの、もったいなく感じてきた……。


 ああいやいやっ! この素敵ぶりを披露できることこそ、プロデューサー冥利につきるってものよ!


「さあっ、練習続けるわよ! 音楽スタートっ!」


 私の言葉にバックバンドが曲を奏でる。トランペットのメロディが映える前奏が終わると、まず歌い出すのはチェスター。


「君、の笑顔が見たい~♪」


 この中で一番騎士らしいチェスターは真っ赤な顔で歌う。歌詞に照れてるけど、歌唱力の方はすごく良かった。

 音程は合ってるし、何より声が良い。低い声で囁くように歌われるとやばい。


「君と手をつないで歩いていきたい~♪」


 シリルは自己申告通り、非常に器用にこなしている。照れは押さえつけて、笑顔さえ浮かべているから本当にセンター向きだと思うわ。

 歌唱力の方も無難で何より。ちょっと高めの甘ヴォイスって感じで非常にそそります。


「君を守ってあげる~♪」


 クリスは甘めの掠れ声が非常にセクシーで、雰囲気で押し流す感じだ。歌唱力の方はたまーに音を外すんだけど、まぁ許容範囲内かな。

 もともとそれぞれ歌うか、ユニゾンで3人は違う音を歌っていることが多いから、なんとか誤魔化せると思う。練習でもっと良くなると思うし。

 何よりがんばって歌ってる感がすごく応援したくなる。庇護欲がそそられるというのは、アイドルとしては最高点だ。


 よしよし、この調子で練習していけばいつか照れも消えるでしょう。

 とにかくレッスンあるのみ! まだまだ、ビシビシ行くわよ!

次はついに本番です!

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