表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

14 雑用係の戦い方

黒い騎士は怒っていた。


誰の目にも分かった。


なぜなら。


顔面に看板が直撃したからである。


しかも戦闘中に。


しかも相手は剣士でも魔導士でもない。


雑用係。


怒るのも無理はない。


「……」


黒い騎士が無言で立ち上がる。


周囲の空気が重くなる。


石畳が軋む。


赤い瞳が俺を睨みつける。


「対象危険度を修正」


機械のような声だった。


「危険度DからAへ変更」


「上がりすぎだろ」


思わずツッコミが出た。



次の瞬間。


黒い騎士が消える。


速い。


アレスですら反応できない。


だが。


俺は違った。


「左」


短く言う。


ロイドが反射的に動く。


直後。


黒い剣がさっきまでロイドがいた場所を切り裂いた。


「見えてるのか!?」


「見えてない」


「じゃあ何なんだ!」


「予測」


簡単な話だった。


敵の動き。


地形。


重心。


視線。


全部見れば大体分かる。



黒い騎士が再び突撃する。


俺は周囲を見る。


噴水。


馬車。


石像。


旗竿。


十分だ。


「アレス」


「何だ!」


「三秒後に剣を振れ」


「は?」


「いいから」


アレスは戸惑いながらも従った。


三秒後。


勇者の剣が振られる。


そこへ。


黒い騎士が飛び込んできた。


ガキィィン!!


剣がぶつかる。


アレスが目を見開く。


偶然ではない。


完全に待ち伏せされていた。



「エリナ」


「なに!?」


「右上へ火球」


「敵いないわよ!?」


「撃て」


半信半疑で魔法が放たれる。


そして。


その瞬間。


黒い騎士が回避先として飛び込んできた。


直撃。


爆発。


周囲が静まり返る。



ロイドが呟く。


「気持ち悪いな」


「何が」


「お前」


失礼だった。



だが。


黒い騎士も学習していた。


突然。


後退する。


距離を取る。


そして剣を掲げた。


嫌な予感がした。


非常に嫌な予感だ。


『まずい!』


ダンジョン精霊が叫ぶ。


『虚無斬だ!』


黒い剣が光る。


漆黒の光。


見ただけで危険だと分かる。


「避難!」


騎士団長が叫ぶ。


遅い。


間に合わない。


王都の中心部だ。


回避しても被害が出る。



俺は周囲を見回した。


一秒。


二秒。


三秒。


考える。


何かある。


必ずある。


そして見つけた。


王都中央広場。


噴水の位置。


地下水路。


城壁。


風向き。


全部繋がった。


「なるほど」


答えが出た。



「全員伏せろ!」


俺が叫ぶ。


同時に。


広場の中央へ走る。


「カイン!」


アレスが叫ぶ。


無視した。


俺は噴水の制御弁へ飛びつく。


蹴る。


壊す。


爆音。


次の瞬間。


大量の水が噴き上がった。


空高く。


まるで巨大な壁のように。



そして。


黒い騎士の斬撃が放たれる。


漆黒の光が街を飲み込む。


だが。


その直前。


噴き上がった水。


風向き。


地形。


全部を利用して。


光の軌道が僅かに曲がった。


ほんの数度。


だがそれで十分。


虚無斬は王都中心部を外れ。


無人の訓練場へ着弾した。


轟音。


大地が抉れる。


住民たちは青ざめた。


もし直撃していたら。


王都の半分が消えていた。



沈黙。


誰も喋れない。


国王も。


騎士団長も。


勇者も。


ただ一人。


黒い騎士だけが俺を見ていた。


「理解不能」


その声には初めて困惑が混じっていた。


「戦闘能力は低い」


「その通り」


「しかし脅威度が高すぎる」


「ありがとう」


褒められた気がした。



そして。


その時だった。


空が光る。


王都の上空。


巨大な魔法陣が展開される。


全員が見上げた。


「何だ……?」


エドガー老学者が震える。


見覚えがあった。


古文書で見たことがある。


遥か昔。


古代文明の資料に。


そこに記されていた名を。


彼は震える声で口にした。


「管理都市アルケイン……」


空に浮かぶ巨大な都市。


雲の上から姿を現したそれは。


まるで神話そのものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ