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12 再会

「行きたくない」


俺は真顔で言った。


「王命ですよ?」


騎士も真顔で返した。


「断ると?」


「たぶん大問題になります」


「そうか……」


俺は机に突っ伏した。


王都。


人が多い。


面倒事も多い。


貴族も多い。


できれば行きたくない。


本当に行きたくない。



三日後。


結局、出発することになった。


理由は単純。


王命だから。


あと王女と精霊がうるさかった。


『行って』


「嫌だ」


『行って』


「嫌だ」


『行って』


「……」


最終的に根負けした。



王都への道中。


俺たちは大所帯になっていた。


俺。


ロイド。


ダンジョン精霊。


竜王女リュミエル。


そして銀竜。


ただし銀竜は人間形態になっている。


なぜか壮年の執事風だった。


「変装です」


本人は真面目に言う。


目立ちまくっていた。



そして。


王都が見えた。


巨大な城壁。


無数の人々。


行商人。


冒険者。


貴族の馬車。


相変わらず騒がしい。


「久しぶりだな」


ロイドが呟く。


俺は特に感慨はなかった。


それより。


畑の様子が気になる。


「まだ言ってるんですか」


王女が呆れた。



王城へ向かう途中。


事件は起きた。


ギルド前の広場。


人だかりができている。


誰か有名人でもいるのだろう。


そう思った瞬間。


聞き覚えのある声が聞こえた。


「カイン……?」


俺は振り返る。


そして。


相手もこちらを見る。


勇者アレス。


魔法使いエリナ。


戦士ガルド。


《黄金の剣》。


かつての仲間たちだった。



沈黙。


広場の喧騒だけが遠く聞こえる。


最初に口を開いたのはアレスだった。


「本当にお前だったのか」


「そうだな」


「……元気そうだな」


「まあ」


会話が続かない。


気まずい。


非常に気まずい。


追放された側も。


追放した側も。


どう話せばいいか分からない。



その時だった。


「カイン様」


リュミエル王女が近づいてくる。


自然な動作だった。


だが。


周囲の空気が凍った。


王女。


竜王国第一王女。


世界的な要人。


その人物が。


俺の隣に立つ。


しかも敬語。


アレスたちの顔色が変わる。


「……様?」


エリナが呟く。


さらに。


「旦那様」


銀竜まで歩いてくる。


「その呼び方やめろ」


「失礼しました」


やめない。


全然やめない。



アレスたちは混乱していた。


目の前の男。


かつて追放した雑用係。


だが今は。


王女が付き従い。


正体不明の執事が控え。


王命で呼び出され。


古代遺跡の中心人物になっている。


理解が追いつかない。



アレスは拳を握る。


そして。


ゆっくり頭を下げた。


周囲がざわめく。


勇者が頭を下げたのだ。


「……すまなかった」


静寂。


エリナも。


ガルドも。


続いて頭を下げる。


「私たちは勘違いしていた」


「お前がどれだけ支えてくれていたか分かってなかった」


「悪かった」


誰も喋らない。


広場が静まり返る。



俺は少し考えた。


怒りがないわけではない。


追放された時はさすがに傷ついた。


だが。


今さら恨んでも仕方がない。


だから。


「別にいい」


そう答えた。


「え?」


アレスが顔を上げる。


「終わった話だ」


本音だった。


今の俺には。


町の発展。


古代都市。


虚無の災厄。


王命。


そんな問題の方が大きい。


追放の件は、もはや昔話だった。



しかし。


その時だった。


王都の中心部。


王城の方向から警鐘が鳴り響く。


カーン!


カーン!


カーン!


人々が騒ぎ始める。


騎士たちが走る。


そして空を見上げた誰かが叫んだ。


「黒い霧だ!」


全員が振り向く。


王城の上空。


そこに。


虚無の霧が現れていた。


しかも。


ラウルで見た時よりもはるかに巨大だった。


ダンジョン精霊の顔から血の気が引く。


『まずい』


「何がだ?」


『早すぎる』


彼女は震える声で言った。


『虚無の王が……』


『王都を狙ってる』


その瞬間。


王都全体に緊張が走った。


そして誰も知らない。


虚無の王が最初に探しているのが、


王でも勇者でもなく――


カイン・レイヴンその人であることを。

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