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11 依頼

断る」


俺は反射的に答えた。


「即答!?」


ロイドが叫ぶ。


リュミエル王女も目を丸くする。


だが俺には理由があった。


「町の水路整備が終わってない」


「それは大事ですね」


「西地区の橋も補強途中だ」


「それも大事ですね」


「トマトの収穫時期だ」


「……」


王女は黙った。


ロイドは頭を抱えた。


銀竜は遠い目をしている。


『たぶん、この人に世界を救わせるには世界の危機を説明するより、野菜が危険になるって説明した方が早いよ』


ダンジョン精霊が真顔で言った。



結局。


話を聞くだけは聞くことになった。


リュミエル王女は地図を広げる。


そこには王国の東方、広大な山岳地帯が描かれていた。


「ここが竜王国です」


地図の中心には巨大な山。


《天竜峰》。


竜族の聖地らしい。


「現在、この周辺で異変が起きています」


王女が指差す。


黒い印。


一つや二つではない。


何十か所もある。


「虚無の侵食です」


空気が重くなる。


あの黒い霧。


銀竜を傷つけた災厄。


「既に三つの集落が消滅しました」


ロイドが息を呑む。


「消滅?」


「はい」


王女の表情が曇る。


「破壊ではありません」


「存在そのものが消えるのです」


誰も言葉を発せなかった。



虚無。


古代文明を滅ぼした災厄。


その正体は未だ不明。


だが一つだけ分かっていることがある。


侵食された場所は失われる。


建物。


森。


川。


生物。


歴史。


記録。


全て。


まるで最初から存在しなかったかのように。


「厄介だな」


俺は呟く。


「それだけか?」


ロイドが叫ぶ。


「十分厄介だろ」


「いやそうだけど!」



王女は机にもう一枚の紙を置いた。


古びた羊皮紙。


そこには古代文字。


俺は読んだ。


そして眉をひそめる。


「これをどこで?」


「王家の宝物庫です」


「なるほど」


書かれていた内容は簡単だった。


虚無に対抗するには


七つの管理都市を再起動せよ


「管理都市……」


俺は机の上の金属板を見る。


先日届いた招待状。


第三管理都市アルケイン。


偶然ではない。


「他にもあるのか」


「全部で七つです」


王女が頷く。


「そして」


そこで一度言葉を切った。


「万職者だけが起動できます」


沈黙。


全員の視線が俺へ向く。


やめてほしい。


本当にやめてほしい。



その時。


ドンドンドン!!


また扉が叩かれた。


最近来客が多すぎる。


俺は立ち上がる。


扉を開く。


そこにいたのは――


王国騎士だった。


息を切らしている。


相当急いできたのだろう。


「カイン・レイヴン殿!」


「そうだが」


「王命です!」


嫌な予感しかしない。


騎士は巻物を差し出した。


開く。


読む。


内容は短かった。


王都へ来られたし。


至急。


国王より。


「……」


「……」


「……」


部屋が静まり返る。


王女が言う。


「大変ですね」


「他人事みたいに言うな」



同じ頃。


王都では。


勇者アレスたちがラウルへ向かう準備をしていた。


古代遺跡。


万職者。


虚無の災厄。


そして。


追放した元仲間。


知らないことだらけだった。


だが一つだけ確かなことがある。


彼らはもうすぐ再会する。


かつて見下していた雑用係と。


世界の運命を握る男として。

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