10 招待状
ラウルの空に、無数の光が降り注いでいた。
北から。
南から。
東から。
西から。
まるで流星群のように。
住民たちは呆然と見上げている。
「綺麗だな」
「そういう状況じゃないと思うぞ」
ロイドが真顔で言った。
確かに綺麗だった。
だが問題は、その光が全部こちらへ向かっていることだ。
正確には――
俺へ向かっている。
「嫌な予感しかしない」
『正しい予感だよ』
ダンジョン精霊が即答した。
◇
最初の光が地面へ落ちる。
眩い輝き。
そして現れたのは一枚の金属板だった。
古代文字が刻まれている。
「読めるか?」
ロイドが聞く。
「読める」
「なんで?」
「昔勉強した」
「昔って何なんだよ……」
俺は文字を読む。
そこにはこう書かれていた。
万職者認証確認。
第三管理都市起動準備完了。
管理者の来訪を待機します。
「……何だこれ」
『古代都市だね』
精霊が答える。
まるで近所の店を説明するような気軽さだった。
◇
二つ目の光。
三つ目の光。
四つ目の光。
次々に降ってくる。
全部同じ。
全部が古代施設。
全部が俺を呼んでいる。
ロイドたちは完全に思考停止していた。
そして。
最後の光だけは違った。
それは小さな銀色の鍵だった。
見た瞬間。
銀竜が凍り付く。
「まさか……」
「知ってるのか?」
銀竜はゆっくり頷いた。
「知っている」
その声には恐れが混じっていた。
「竜族に伝わる伝承だ」
そして鍵を見つめる。
「世界の扉を開く鍵」
「物騒だな」
「物騒なのだ」
◇
その日の夜。
俺は自宅の机に並んだ遺物を見つめていた。
古代都市への招待状。
謎の鍵。
管理者権限。
世界滅亡級の災厄。
頭が痛い。
非常に痛い。
「全部捨てたい」
『ダメ』
「川に流す」
『ダメ』
「埋める」
『ダメ』
精霊が全部否定する。
俺はため息をついた。
その時。
コンコン。
扉が叩かれる。
「誰だ?」
返事はない。
代わりにもう一度。
コンコン。
俺は警戒しながら扉を開いた。
そこに立っていたのは――
少女だった。
十五歳くらい。
黒髪。
旅装束。
腰には一本の剣。
だが。
その顔を見た瞬間。
俺は違和感を覚えた。
魔力の流れがおかしい。
人間ではない。
「何者だ?」
少女は少し驚いた顔をした。
見抜かれるとは思わなかったのだろう。
そして。
小さく笑う。
「やっぱり」
その瞳が金色に変わった。
竜の瞳だ。
「父上の言った通り」
後ろでは銀竜が立ち上がっていた。
驚愕の表情で。
「お前は……!」
少女は優雅に一礼する。
「初めまして、万職者様」
そして。
「私は竜王国第一王女」
その言葉に全員が固まった。
「リュミエル・ドラグニアと申します」
静寂。
ロイドが口を開く。
閉じる。
もう一度開く。
「……」
言葉が出ないらしい。
無理もない。
辺境の町に。
竜王国の王女が。
突然やってきたのだから。
そしてリュミエルは微笑みながら言った。
「お願いがあります」
嫌な予感しかしない。
今までで一番嫌な予感だ。
「私の国を救ってください」
カインは空を見上げた。
最近。
平和な日が一日もない。




