表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最強の節約勇者 〜神も魔王も全員、俺の財布の敵〜  作者: 勇者ヨシ君
第4章:習慣は、呪いより強かった

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/101

「次も、まだ削れるものがある」

 ベッカーを出てしばらくはグラの背に乗っていたが、休ませる意味もあり、

 一行はグラから降りて、しばらく街道を歩いていた。


 空が気持ちよく晴れていた。一党は田中が先頭で、トルネコが帳面をめくりながらついていく。ベータはパーティの荷物を背負っている。グラは飛行で疲れた様子で、田中の肩でうとうとしていた。


「......田中さん、ここで、次の世界の情報があります」


 エリュシアが田中の正面に回り込んで、いそいそと書類を取り出した。説明者の位置だった。神界業務日報フォーマットではなく、公式の世界情報だ。


()()()()()()


「それが......節約が、通用しない世界です」


 少しの間があった。


「通用しない、とは?」


「全員が贅沢を是とする社会です。節約する者は差別される制度になっています。物の値段が高いことが品質の証明とみなされています。安いものに価値はないとされています」


「......そうか」


「田中さん、これは――」


「関係ない。なら、削り方を変えるだけだ。行くぞ」


 エリュシアが止まった。「......え?」


「通用しない、と言ったか」


「言いました」


「俺が通用させる。以上だ」


 エリュシアが書類を持ったまま、少しの間、動かなかった。


(......そうですね)(田中さんなら)(そういうことですね)(さすがです)


「......はい。以上です(書類をしまう)」



 説明が終わった後、エリュシアが再び田中の隣に並びかけた。


 気づいたら、ネネが田中の左隣にいた。


 気づいたら、ベータが田中の右隣にいた。


 エリュシアだけが正面にいた。向き直ったら三人が横並びになっていた。


エリュシア「......」


ネネ「......」


ベータ「......」


エリュシア「(ドS)二人とも、田中さんのそばから離れてください!!」


 全員が止まった。田中含む。


ネネ「(エリュシアが今、二人とも、と言った)(つまり我も——)(動かない)」


ベータ「(は? なんで私が言われてんの)(田中の右は自分のポジション)(なんで?)あ、やんのか?(処理中)」


エリュシア「(今、二人とも、と言いました)(私は正面にいます)(説明者なので正面です)(常識——)(......常識ですか?)(書けません)」


 田中がエリュシアの頭にチョップを一発。ぺちーん。


「うるさい。説明の続きはないのか」


「いたっ......よかったです(2行) はい、あります(切り替えた)」


 ネネが口角を上げた。声は出さなかった。


 ベータが「(面白い)(小悪魔)(でもむかつく)(なんで?)」という顔をしていた。


「続けろ」と田中は言った。


「......はい(赤いまま説明を再開した)」



「次の世界、わたしも行くけど」とベータが言った。


「来るなら荷物持て」


「は? なんで命令してんの」


 田中(無視)。


「......はあ、まあいっか(荷物を持つ)」


ネネ「(毎回同じやりとりをしている)(慣れてきた)(それでいいのか)(それでいい)」


「トルネコ!」


「わかってますで〜!!もちろんいきまっせ〜!!(帳面を閉じる)」


「グラ」


 グラが田中の肩で目を覚ました。少し翼を広げた。田中が肩から降ろして地面に置いた。


 グラが大型化した。


 青緑の鱗が日差しを受けて光っている。翼を広げると全員が乗れる幅になった。


「先行投資の回収だ(田中)」


「うるさい(グラ)」


「……(全員が少し間を置いた)」


「もう一回言う(田中)」


「うるさい(グラ、二回目)」


「よかったです(エリュシア)(1行)」


「なんで(ベータ)」


「黙れ(ネネ)」


「うるさい(グラ、三回目・全員に)」


 全員が黙った。


 田中がグラの背中に乗った。「確認する。全員乗れ」


 一人ずつ乗った。乗れた。グラが低く唸った。


「重いか」


「グゥ(少し)」


「そうか。全員、削れ(体重の話をしている)」


エリュシア「(ドS)削れ!!(追い打ち)」


田中(無視)「明日、この世界を出る。以上だ」


 全員が降りた。グラが手乗りサイズに戻った。田中の肩に乗って、目を閉じた。



「......もう一つある」


 田中が振り返った。全員を見た。


「この世界で会った奴が何人かいる。あいつらに別れを言いに行く。明日の朝だ」


 誰も聞いていなかった。聞く必要もなかった。


「常識だろうが」と田中は言った。


「常識だろうが(追い打ち・エリュシア)」


「常識だろうが(ネネ、静かに)」


「まあ常識じゃないの(ベータ、ヤンキー)」


「うるさい(田中)」


「うるさい(グラ)」


 夜になった。


******


その頃、神界では——


 カーヴェが珍しく笑っていた。


「エリュシアが『二人とも』と言ったそうですね」


「聞きました」とウルダが言った。「......SEGAなら解析できた」


「それは関係ないですよ」


「......関係ある。なんとなく」


「田中さんが『削り方を変えるだけだ』と言ったそうです。次の、節約が通用しない世界に対して」


 ウルダが少しの間を置いた。「......寛大に見守ります」


「寛大ですね」


()()()()

※おじさん解説!


 今回は解説するものが多すぎるので、一つだけにする。


 次の世界では節約が通用しない、と言われた。田中剛の返答は「削り方を変えるだけだ」だった。


 46歳の工場管理職が23年間体現したのは「正しいことをするたびに俺だけ負ける」だった。それでも続けた。理由は一つだ。常識だろうが。


 常識は変わらない。世界が変わっても、常識は変わらない。以上だ。


******


神界業務日報 第99回


本日の特記事項。


次の世界の情報を報告しました。「節約が通用しない世界」です。

田中さんが「削り方を変えるだけだ」と言いました。

私の報告が一秒で終わりました。いつもそうです。


説明中に「二人とも、田中さんの隣から離れてください」と言いました。

自分が正面にいたことに気づきました。

田中さんにチョップされました。

よかったです。


グラさんが「うるさい」を三回言いました。三回目で全員黙りました。

参考にします。


担当:エリュシア(神界第七課・業務継続中)


******


魔王の家計簿 第99回


支出:なし


次に向かうのは「節約が通用しない世界」と言われた。

田中が「削り方を変えるだけだ」と言った。

一秒で終わった。田中らしい。さすがだ。


エリュシアが「二人とも」と言った。

我は動かなかった。

動かないことが答えだと思った。

それで十分だ。

以上。


******


ベータの観測記録 第八回


田中が「削り方を変えるだけだ」と言った。(処理中)(なんかこれが一番やばい)(なんで?)


エリュシアが「二人とも」と言った。

(自分が正面にいた)(気づいてなかった)(面白い)(でもなんかむかつく)(なんで?)


グラが「うるさい」を三回言った。

三回目で全員黙った。

(グラ、つよい)(記録する)


田中が「明日ここを出る」と言った。

ついていく。

なんでかはまだわかんない。

記録する。


******


グラの一日 第三回


グゥ(今日も乗った)

グラ(全員乗れた)

グゥ(重かった)

グラ(削れと言われた)

グゥ(うるさいと言った)

グラ(三回言った)

グゥ(全員黙った)

グラ(悪くなかった)


******


ギルド受付嬢ミントさん(リッカ)の業務日誌


田中さんたちが明日旅立つそうです。

「別れを言いに来る」と田中さんが言っていました。


怒鳴る担当なので怒鳴りに行こうと思います。

違います。ちゃんとお見送りします。


ミントより(リッカ)。以上です。


******


リリのメモ帳


遠くから見てたけど、引力爆発してた。

エリュシアが「二人とも」と言った。

全員やばい。


田中が「削り方を変えるだけだ」と言った。

節約が通用しない世界に対して一秒で。

この人、本当に怖いわ~(最高の褒め言葉)。


以上。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ