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異世界最強の節約勇者 〜神も魔王も全員、俺の財布の敵〜  作者: 勇者ヨシ君
第4章:習慣は、呪いより強かった

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「石は持っていく(当然だ)」

 ベッカーで宿泊した翌朝、フィオがベッカーの外れで荷物をまとめていた。


 大量に入った石の袋を肩にかけて、田中たちが来るのを待っていた。

 フィオが言った。


「私には私の世界がある――これでお別れだ」


「そうか。以上だ」


 間がなかった。田中は聞いていたが、反応はそれだけだった。


「......また先回りするかもしれない」


「そうか。石はタダだ」


 フィオが石の袋を持ち直した。少しだけ笑った。それで全部だった。


 歩き出そうとした時、後ろから声がした。


「待って」


 ベータだった。フィオが振り返った。


「......なに」


「あなた、面白い。私たち、また会えると思う?」


「......石投げるぞ」


「はあ?やんの?(ヤンキー)」


 石が当たった。ベータが止まった。


「い......痛い」


 どのモードでもなかった。ただ、痛い、と言った。初めて聞いた声だった。


 フィオが少しの間、止まった。


「......謝る」


「え」


「投げすぎた。謝る。すまん」


「......別にいいけど」


 フィオが前を向いた。また歩き出した。


 田中が、それだけを見ていた。



 見送りが終わった後、エリュシアが田中の横に並びかけた。


「田中さん、フィオさんの別れについて——」


 チョップが来た。


「エリ、うるさい」


「いたっ、......よかったです」


ネネ「......(田中は前を向いている)(エリュシアの頬が赤いことについてのコメントは省略する)」


ベータ「(エリュシア:赤い)(田中:普通)(なんで)(処理中)」


田中「来るな(歩き出す)」


エリ「来ます(ついていく)」


「来るなと言っている」


「いきます(一歩詰める)」


「......(止まらない)」


「もっと近寄ります!(さらに詰める)」


 三人が田中の後ろをついていった。ベータが右、ネネが左、エリュシアが後ろ真ん中を主張した。主張は声に出なかった。でも動いた。気づいたら真ん中にいた。



 トルネコが宿の前で帳面を抱えて待っていた。


「田中さん!!次もよろしゅうたのみまっせ〜!!」


「来るなら来い。利益は分配する」


「待ってましたで〜!!(帳面を開く)」


 田中がトルネコの帳面を三秒見た。返した。「無駄がない。よし」


「お代は見てのお帰りで〜!!」


「払う前に確認するのが常識だろうが」


「商売人の台詞でっせ〜!!田中さんが言うと意味が変わりますわ〜!!」


エリュシア「(ドS)払う前に確認するのは常識です!!常識だろうが!!(追い打ち)」


田中(無視)

エリ「よかったです」


ベータ「また合唱してる......」



「行くぞ」


 田中が言った。グラが肩で「グゥ」と一声鳴いた。ベッカーを出た。


 グラの背に田中一行が乗って、いよいよ、次の世界への移動が始まった。


******


その頃、神界では——


「フィオさんが別れていきましたね」とカーヴェが言った。


「石を持っていったそうですか」


「タダだそうです」


 ウルダが少しの間を置いた。「プププっ!......悪くない別れでした」


「同意します(......SEGA神笑いすぎです)」

※おじさん解説!


 メタルスラッグ(1996年・SNK)のフィオ・ジェルミを解説するぞ。


 正式名称はフィオリーナ・ジェルミ。金持ちのお嬢様で軍に入った変わり種。見た目はおしゃれだが戦闘力は高い。武器の扱いが異様に上手い。シリーズの中で地味に人気が高い。


 田中の命名基準は「銃の腕が立つ」「見た目と実力のギャップ」の二点だ。フィオが石を使う理由については最後まで聞かなかった。聞く必要がなかったからだ。常識だろうが。


******


神界業務日報 第98回


フィオさんが旅立ちました。


田中さんが「来い。石はタダだ」と言いました。

フィオさんが石を持ち直して笑いました。それで全部でした。


田中さんにチョップされました。よかったです。


担当:エリュシア(神界第七課・業務継続中)


******


魔王の家計簿 第98回


支出:なし


フィオが別れた。田中が「石はタダだ」と言った。フィオが笑った。

ベータが「痛い」と言った。初めて聞いた。

帰り際、エリュシアが後ろ真ん中にいた。我は左、ベータは右にいた。

田中は前を向いていた。いつもそうだ。以上。


******


フィオ記録帳 最終回(この世界分)


石は持っていく。当然だ。

ベータという変なのがいた。石が当たった。謝った。「別にいいけど」と言われた。悪い気持ちはしなかった。


田中に「そうか。石はタダだ」と言われたので、

また先回りしておくことにする。石はいくらでもタダだ。以上。


******


ベータの観測記録 第七回


フィオが石を投げた。当たった。痛かった。フィオが謝った。

(謝られた)(初めてだった)(なんか変な感じだった)(記録する)


エリュシアがチョップされて「よかったです」と言った。

ネネが左にいた。自分が右にいた。田中は前だった。

(また合唱だった)(なんで別にいいんだ)(処理中)


記録する。


******


リリのメモ帳


ベッカー支店の下見をした。ルコという子が支店長代理になっていた。

田中の節約指導が全部入ってた。完全に感染してた。

フィオという子が旅立った。石持ちで。石はタダらしい。

大魔王まで安葉巻にしてた。感染が広すぎる。

田中、やばいわ~(最高の褒め言葉だよ)。以上。

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