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異世界最強の節約勇者 〜神も魔王も全員、俺の財布の敵〜  作者: 勇者ヨシ君
第4章:習慣は、呪いより強かった

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「SSSランク、皿は落ちなかった(ミントだな)」

 世界の終点より移動して、とうとうベッカーの街が見えてきた。


 はじめ、グラで着地しようとしたが「街が驚く。歩け。コストが下がる」という田中の一言で最後は徒歩になった。


エリュシア(コスト基準で移動手段を決める人です)(それが田中さんです)(よかったです)

ベータ「徒歩(処理中)(非効率)(でも別にいいか)(なんで別にいいんだ)(処理中)」

ネネ「......いつもの街だな」

田中「ああ――」


 それだけだった。全員が歩いた。



 ベッカー支部のギルドの扉を開けた瞬間、職員全員が立ち上がった。


「「「「「田中様!!!!!」」」」」


 椅子が倒れる音がした。冒険者が十数人いたが、全員がこちらを向いていた。田中が半歩下がった。


(多い)


 ギルドマスターが奥から走ってきた。分厚い書類を両手で持っている。


「田中様!!世界をお救いになったとのことで!!報告が入りました!!SSSランク認定です!!おめでとうございます!!」


「......で、費用コストは」と田中は言った。


「......」「......」「......」


 ギルド全員が固まった。


「費用って何の話ですか!!!おめでとうございますを素直に受け取ってください!!!!」


「ランク認定に費用がかかるのか、かからないのか聞いている」


「かかりません!!世界を救った方に請求できません!!!!」


「そうか。ならいい。次の依頼は割引しろ」


「SSSランクが割引を要求するとか前代未聞なんですが!!」


田中「利用者、それも常連には優遇があるのが普通だろうが。常識だ」


ギルドマスター「......(前代未聞の常識が来ました)(対応マニュアルがありません)(今から作ります)」


エリュシア「(ドS)ありがとうございます、を先に言ってください!!常識だろうが!!」


田中(無視シカト


(無視されました)(でも、よかったです)(珍しくギルドマスター様に同意しましたが)(どちらでもよかったです)


 ネネが腕を組みながら言った。「......いつも通りだ」


「ネネ様、このパーティで大丈夫ですか!!と聞きたいですが」とギルドマスターが言いかけて止まった。「......申し訳ありません。何でもないです」


ベータ「(SSSランク:確認)(田中さん:費用の話をしている)(なんか正常な気がしてきた)(バグ?)(処理中)」



 ギルドの奥に入ると、リッカがカウンターに立っていた。書類を整理している。田中を見て目を見開いた。


「田中さん!!お帰りなさい!!世界を救ったって本当ですか!!」


「本当だ」


「すごいです!!でもそれよりも——」


「ヨシコさん」


「だーかーらー、リッカです!!」


「ヨシコさん......帰ってきた」


「......はい、おかえりなさい」


 少しの間があった。


 田中がカウンター端の方を見た。ルコが帳面をつけていた。顔を上げてこちらを見た。


「田中さん!!」


「ルコ。皿、あれから何枚落とした」


「一回も落としていません!!」


 間がなかった。即答だった。


「帳面は」


「全部つけています!!今日の分も昨日あらかじめ入れました!!」


 田中が帳面を三秒見た。返した。「無駄がない。よくやった」


 ルコが少し間を置いた。「ヘヘ......すべて、田中さんに教わりました」


 田中の声はとても静かだった。それだけで全部語っていた。


 エリュシアが少し離れたところから、二人のやり取りを見ていた。


(田中さんが見たことのない顔をしていました)

(三秒だけでした)

(書く欄:今日は少しだけありました)



 田中がリッカに向き直った。


「ヨシコ」


「リッカです!!(今日で何回目ですか)」


「......お前、回復が得意か」


「一応、得意ですけど!!」


「怒鳴るのも得意だな」


「それは田中さんが原因ですよ!!!」


 少しの間があった。


「なら、ミントだ」


 リッカが固まった。


「......は?」


「|テイルズ・オブ・ファンタジア《TOF》に出てくる。回復が使える。主人公を怒鳴る担当だ」


「怒鳴る担当!? なんですかそれ!? 私が怒鳴る担当なんですか!?」


「使えるな」


リッカ改めミント(旧ヨシコ)「(怒鳴る担当と言われた)(なのに使えるな、と言われた)(怒鳴る担当で使えるなとはどういうことですか)(なぜか嬉しい)(なぜですか)(怒鳴る担当で嬉しいのはおかしいですよね)(書けません)」


 田中が帰りかけた。


「あのぉ!!」とリッカが声を上げた。


「なんだ」


 リッカが少し間を置いた。


「私......ミント、でいいです」


「そうか(歩き出す)」


「でも私リッカです!!!」


「いや、リッ......ミントだ」


「どっちなんですか!!!ミントとリッカどっちなんですか!!!今ミントでいいって言ったのに田中さんが『そうか』って言ったのはどっちへの『そうか』ですか!!!!あとまたリッカって言いかけましたよね!!!!」


田中(無視)


ギルドマスター「......(この方が本当にSSSですか)(前代未聞が続いています)(マニュアルを作ります)(何ページになりことやら)」


ベータ「(田中:ミントとリッカを同時に使用)(矛盾値:高い)(でも田中は正常)(こちらが混乱している)(処理中)(むかつく)(なんで?)」



 田中が、ギルを呼んだ。


「ギル。ルコと組め」


「......帳面仕事か?」とギルが少し間を置いた。


「ベッカーを商売の拠点にする。貴族の流通知識が使える。以上だ」


「......それなら先に言え」


「使えるな(五回目)」


 ギルが止まった。


(五回目だ)

(なぜこれが一番効くんだ)

(剣を持っていた頃は、こんな気持ちになったことがなかった)

(削った後に残るものが本物だと、そういうことなのか)


「......削った後に残るものが、本物か」


 田中が一秒だけ振り返った。


「そうだ」


 それだけだった。


 ギルが帳面を持ち直した。ルコが隣に来た。「よろしくお願いします」と言った。ギルが少しだけ口角を上げた。


 田中はもう先を歩いていた。


――田中がこの世界から出発して数年後、ベッカーが一大商業都市として繁栄の極みに至ったのが、田中の一言だったことは、このときはまだ誰も知る由もない。それはまた、別のお話――。



 帰り際、ベータが当然のように田中の右隣に立っていた。


 エリュシアが気づいた。


「(ドS出る)そこは——」


 言いかけて止まった。


「そこは......?」とネネが静かに言った。


(ネネ様が拾いました)(どうしますか)(書けません)


「そこは!! 田中さんの右です!!(辛うじて言い換えた)」


ベータ「は? だからなに(ヤンキー)右とか当たり前じゃん」


「田中さんの右は私が歩きます!!(ドS全開)」


ベータ「べつに何も決まってないし(ヤンキー)(でも離れない)(なんで私は、田中から離れないんだ)(処理中)」


ネネ「(エリュシアが今、私が歩きます、と言った)(我も同じ気持ちだが)(言わない)(動かない)(でも動いた)(左に立った)(無意識だった)」


田中「うるさい(全員にチョップ一発)」


エリュシア「いたっ(いたいです)(でもよかったです)(今はそれどころではありませんが)(よかったです)」

ベータ「痛い(ヤンキー)(でもなんかいい)(なんで?)(処理中)」

ネネ「うぅ......(なぜか我も自然に左にいる)(いつからここにいた)(書かない)(書いた)」


グラ「うるさい(全員に)」


全員「「「「......」」」」


 三人とも顔が赤くなっていた。きっと太陽のいたずらのせいだろう。


 ギルドを出た。ベッカーの夕方は静かだった。


******


その頃、神界では——


「田中さん、SSSランク認定だそうですよ」とカーヴェが言った。


「寛大に」とウルダが言った。「認定を受け取りましたか」


「その前に費用を聞いたそうです」


 ウルダが少し間を置いた。


「......認定費用を聞いたんですか、ギャーハハハハハハ!!もうダメだ笑いが止まらぬ」


「(しばらく笑い転げる主神を観察して)聞きました。かからないとわかってから、割引を要求したそうです」


「フハ、フハハハ。はぁ......SEGAなら対応マニュアルがあった」


「それは関係ないと思いますよ」


「......関係ある。なんとなく」


「寛大ですね」


「......悪くない」

******


※おじさん解説!


 テイルズ・オブ・ファンタジア(1995年・ナムコ)のミント・アドニスを解説するぞ。


 白魔道士。回復担当。主人公のクレスを定期的にしかる担当だ。お淑やかに見えて口が悪い。戦闘ではサポート全般を担う頼れる存在だ。続編のテイルズシリーズにも長く語り継がれるキャラクターである。


 田中の命名基準は「回復が使える」「怒鳴る担当」の二点だ。怒鳴る担当が命名理由に入るのは本作始まって以来初めてだと思う。


 リッカは怒鳴る担当と言われて嬉しそうにしていたが、それは田中に「使えるな」と言われたからだ。どちらが理由かは本人にもわからないらしい。常識だろうが。


******


神界業務日報 第97回


本日の特記事項。


田中さんがSSSランク認定を受けました。

田中さんが「費用は」と言いました。

ギルドマスター様が固まりました。

田中さんが「次の依頼は割引しろ」と言いました。

前代未聞だそうです。


田中さんが「ミントだ」と言いました。

リッカさんが「どっちなんですか!!!」と言いました。

田中さんは止まりませんでした。

いつもそうです。


帰り際、私はベータさんに「右は私が歩きます」と言いました。

意味のわからないことを言いました。

田中さんにチョップされました。

よかったです。

なぜよかったのかは書けません。......担当女神なので。

書きません。

以上です。


担当:エリュシア(神界第七課・業務継続中)


******


魔王の家計簿 第97回


支出:宿代(通常料金・値切れなかった)


とうとう田中がSSSランクになったそうだ。

田中は費用を聞いた。

いつも通りだ。


ルコが皿を一回も落とさなかった。

田中が「よくやった」と言った。

ルコの顔が少し変わった。


帰り際、エリュシアが「右は私が歩きます」と言った。

我は左に立っていた。

無意識だった。

書かない。

やっぱ書いた。父上には言えない。

以上。


******


ギル修行(仮)日誌 最終回


帳面路線になった。


私には剣だけ残っていたと思っていたが、帳面も残っていた。

削った後に残るものが本物だと田中が言った。

それはそうだった。


「使えるな(五回目)」と言われた。

なぜこれが一番効くのか、今でもわからない。

でも効いた。


ルコと組む。

田中商会ベッカー支店の帳面を持つ。

以上だ。


******


ミントさんの業務日誌 第一回


田中さんに「ミント」と名付けられました。

テイルズ・オブ・ファンタジアのキャラクターだそうです。


回復が使える。

怒鳴る担当。


怒鳴る担当って何ですか。

怒鳴る担当で命名されるって何ですか。


「使えるな」と言われました。

なぜか嬉しかったです。

怒鳴る担当で嬉しいってどういうことですか。

理由:不明。


ミントでいいですと言いました。

「そうか」と言われました。

「でも私リッカです!!」と言いました。

「そうか」と言われました。

どっちなんですか。


ミントさん(リッカ)より。以上です。


******


ベータの観測記録 第六回


本日の観測。(システム)


SSSランク:確認。田中さん:費用を聞いた。(正常です)(なんで正常に見えてきた)(バグ?)(処理中)

ルコ:皿一回も落としてない。(計測値:成長)(田中に教わった顔をしていた)(記録する)

リッカ(ミント):怒鳴る担当で嬉しそうだった。(計測値:謎)(処理中)


帰り際:

エリュシア「右は私が歩きます」→チョップ→「よかったです」(意味わかんない)(でも少しわかる気がしてきた)(バグ)

ネネ:左に立ってた。(気づいたら立ってた顔をしてた)(処理中)

自分:右にいた。(なんで右にいた)(わかんない)(むかつく)(でもまあいい)(なんで?)


田中:前を向いていた。

チョップが来た。

(痛かった)(でもまあいい)(むしろ嬉しいしー)(なんで?)(処理できない)


記録する。

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