(9)新たななる都市伝説
そうか……そうだったのか、オジサンは心配してたんだな。
ネットで情報だけが増えて、それが何なのか、本物の情報なのかニセ物の情報なのか知ろうとしない人々へ、警鐘を鳴らしたかったんだ。
信じたいことだけを信じ、自分の世界へ閉じこもる人へ、もっと大きな世界を見ろと、言いたかったんだ…………。
ん? いやまて。
だからって、この状況とは関係ないだろ!?
オジサンのペットがのたうち、オジサンの股からヌッ! と現れて俺のズボンを掴み引きちぎる。
ぎゃぁぁぁあああ!!?
そのまま虫のような腕が、俺のボクサーパンツを掴み、ひん剥く。
あらわになり、怯え、プルプル震える俺のケツを眺めて、オジサンは満足そうにニヤけてから言う。
「いろいろ深いこといったけど、結局、ゲイのオジサン。若い肉体が、単に好きなだけなんだよね……」
ウソだろ、来んな、来んなよ……やめろぉぉぉおおお!!
「ゲ、ゲ、ゲゲゲの、ゲイ!」
俺の絶叫は、真夏の夜の夢に溶けこみ、消えっていった。
高校生の俺には、世の中には大人でさえ踏み入ってはならない、危険な場所があることを知らなかった。
俺が公園のベンチで無防備にガチャを回していた場所、そこは、そっち系の聖地、新宿二丁目の近くだったということを……。
若さ溢れる肉体を持て余す10代の高校生など、この聖地では、蜘蛛の巣にかかった獲物と同じ。
とあるオカマバーでは、こんなの噂が流れていた。
新宿二丁目では古から言われている怪異、「恐怖、ゲイのオジサン」
それは、現代に蘇った、変なオジサンだったのかもしれない。
巷では、女子高生の間でこんな噂が広がっていた。
「ねぇねぇ? これさ、友達から聞いたんだけど、その友達も、友達の他人の従兄弟の親友の悪友の親戚のオジサンの友達の息子から聞いたらしいんだけど……」
「え? それ絶対ウソじゃん!」
終