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梅見坂奇譚  作者: 真桑瓜
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メイメイVS織姫

メイメイVS織姫



日曜日、僕達は公園の傍に新しく出来たドーナツ屋で会う事にした。

時間ピッタリに行くとメイメイさんは既に来ていた。カナちゃんも一緒である。

「こんにちは」メイメイさんは立ち上がって織姫に握手を求めた。

「私、あなたが話をする価値のある人かどうか、確かめる必要があるの」

「お、織姫!」僕は焦って織姫の肘を掴んだ。まさかいきなりこんな展開になろうとは・・・

「何!この人、感じ悪い!」カナちゃんが叫んだ。

然し、メイメイさんは落ち着いた声で「どうぞ」と言った。

「あなた、拳法の達人だそうね?」僕の手を振り払いながら織姫が言った。

「台湾では、私程度の者は達人とは言わないわ」

「謙遜してくれるわね。いいわ、単刀直入に言う。私と戦ってくれない?」

「穏やかじゃないわね」

「私、あなたがあの小説にふさわしい人かどうか知りたいの」

「あなたにとって、あの小説は特別なものなのね?」

「そう言う事」

「いいわ。この近くの神社の裏に、ススキの茂った空き地があるの、そこでどう?」

「異存はないわ」

僕達は、入ったばかりのドーナツ屋を出てススキの原に移動した。

どうしたら良いのか分からず、僕はただオロオロするばかりだった。

「秦さん、心配しなくていいわ」と、メイメイさんが言った。



「手加減はしない」織姫が言った。

「ご自由にどうぞ」

二人が向かい合ったその時、カナちゃんが割って入った。

「先生、私にやらせて下さい!」

「貴女、誰?」

「一番弟子!私、貴女の態度許せないんです!」

「カナちゃん、貴女には少し荷が重いわ」メイメイさんがカナちゃんを止めた。

「いえ、私、自分がどれくらい強くなったか知りたいんです」

「困ったわねぇ・・・」

「私は構わないわよ。ウオーミングアップに丁度いい」

メイメイさんは二人を見比べてから、カナちゃんに言った。

「わかったわ、やりなさい。でも無理はしないでね」

「はい、先生!」


体格的には、遥かにカナちゃんの方が優っている。然し、落ち着きがまるで違う、織姫の構えは余裕に満ちていた。

対するカナちゃんは、気ばかりが先走っているように見える。

「そんなに力むと、実力の半分も出せないわよ」織姫が言った。

「煩い、すぐに黙らせてやる!」

カナちゃんは強引に間を詰め右足を軸にしてクルッと回転した。後ろ回し蹴りが織姫の頭部に飛んだ。

織姫は軽いステップでこれを躱す。

蹴り足を下ろすと同時に右の回し蹴りを放ったカナちゃんは、蹴りが不発と知るや地に伏せ、さらに回転して織姫の脚を払いに行く。

織姫はこれを辛うじて跳び上がって避けた。

「やるわね!」織姫はなんだか嬉しそうだ。「今度はこっちの番よ!」

構え直したカナちゃんに向かって、織姫の右の回し蹴りが襲いかかる。

カナちゃんは顔面をガードしながら後退る。

織姫は脚が地に着くと更に躰を捻り跳び上がって一回転した。

右の回し蹴りがカナちゃんの頸動脈にヒットし、カナちゃんはスローモーションでススキの上に倒れていった。

「それまでよ!」メイメイさんが織姫を止めた。「見事な旋風脚ね、どこで習ったの?」

織姫はゆっくりと振り返った。「我流よ!」

「そお」メイメイさんが僕を見た。「カナちゃんをお願いします」


僕はススキの上でカナちゃんを抱き起こした。首に鞭で打ったような赤い傷があった。

「手加減はしておいたわ」

「どうもありがとう」

「貴女は別よ」

「こちらも手加減はしないわ」

「望むところ!」

いきなり織姫の右拳が飛んだ。

メイメイさんは左の掌でこの拳を受け流し、同時に突きを織姫の脇腹に叩き込む。

予測していたように織姫が左に転移してこの突きを躱す。

「そう来なくっちゃ!」

右の中段廻し蹴りから左の上段後ろ廻し蹴り、右の下段廻し蹴りからその脚を跳ね上げて右の横蹴りと息もつかせぬ蹴りの連続攻撃で、織姫はメイメイさんをススキの原の端まで追い詰めた。

気合を発して織姫の廻し蹴りがメイメイさんの上段に飛んだとき、メイメイさんの姿が消えた。

「え?」

「こっちよ!」

織姫の後ろに、メイメイさんの影が立ち上がった。

反射的に、織姫が振り向きざま裏拳を放つ。

その拳を軽く掴むと思い切り捻って、メイメイさんが跳んだ。

一回転してススキの上に投げ出された織姫の腹部に、メイメイさんの膝が落ちて来た。

グフッ!

織姫が苦しそうに息を吐き、腹を押さえて咳き込んだ。

ゴホッ!ゴホッ!

織姫は蹲ったまま震えている。


「手加減はしてないわよ」

ゴホッゴホッゴホッ・・・フフフフフ・・・フフ

織姫が咳き込みながら笑っている。

「完敗ね・・ゴホッ・・・」


「先生凄い・・・」目を覚ましていた、カナちゃんが呟いた。



アパルトメントのメイメイさんの家で二人の傷の手当をした。

「先生、私、当分この街に居座るわよ。この街には倒すべき相手がいるもの」

「そ、そんな・・・メイメイさんに迷惑だよ」

「いいわ、私に勝つ自信がついたら、いつでも訪ねていらっしゃい」

「じゃあ、いつでも貴女に挑戦して良いのね」

「その代わり・・・」カナちゃんが言った。「私もあなたに挑戦します・・・いいでしょ?」

「いいわよ、手ぐすね引いて待ってるから・・・」


三人の女性の輪の中で、僕はまたオロオロするしかなかった。




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