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「鼠玉」
「そのとき俺は、下水道の奥にうごめく影を見た。光る目が無数に……それこそ、何百とついていて、牙の生えた無数の口も、同じくらいあった。とてもじゃないが、初心者が行っていいような場所じゃない」
――中級冒険者スウェン
下水道には、鼠がいる。
犬よりも大きい、大鼠だ。
一匹だけなら脅威ではないが、やつらは徒党を組んで獲物に襲いかかる。
知能は低いが、穴や隙間から飛び出た鼠に、いつの間にか背後を取られていることも、珍しくはない。
大鼠は名前の通り、とても大きい。
鼠なのですぐに増え、下水道の隅々を歩き回る。
しかし、時にその巨体が災いすることも、あるようだ。
かつて、何十という大鼠が狭い通路を通り抜けようとした。
すると先頭の何匹かが壁に引っかかり、身動きが取れなくなってしまう。
それでも鼠たちは勢いを止めず、流れる水のように迫り続ける後続は、詰まった最前列に押し寄せる。
鼠たちは塊の中でもがき、尻尾が絡まりあってほどけなくなると、やがて一つの鼠玉が完成した。




