「異界転移」
「なんの五枕! ふう、さっきポケットにちくわを詰めておいて正解だったみてぇだな」
「油断しないで、戦士! 念のため、水筒の水をあんたの尻にかけておくわ」
「わりぃ、助かるぜ!」
(なんだか、戦い方が独特な世界だな……)
――転移勇者とその一行
稀に、なんらかの力によって別の世界から転移してきた人間が存在する。
そうした者たちは異界の文化に不慣れであり、言語もわからず、ただ生きるだけで苦労が絶えないものだ。
しかし、中には特別な存在として世界に招かれ、重大な役割を任せられる場合もあるという。
「ククク、諦めろ勇者よ。なんせ俺は、四天王最強だからな! さぁて、まずは小手調べといこうか。俺は肩の上にお餅を三つ重ねるぜ」
「っく、初手から餅を三つもだと!? しかもつきたてほやほやで、肩がべちょべちょじゃねーか! チィ、おい勇者! こいつはヤベェぞ!」
「俺、こういうのよくわかんねぇけどよぉ! 勇者の力と勢いが大事ってことだよな!? 行くぞ!」
「ば、馬鹿な!? アリさんの巣の上で縦回転しながらラーメンを作るだと!? それが勇者のやることか……ぐあああ!」
――勇者一行と五人目の四天王
異界では、文化、法則、種族、あらゆるものが異なる。
強力な能力に見えても、それを活用できる場面が訪れないことも、往々にしてあるものだ。
神から授かった力とて、それだけで乗り越えられるほど、どの世界も甘くはない。
あるいは、全く無駄だと思われた力が、世界を救うほどの可能性を秘めていることもあるのだろうか。
「さ、次は勇者の番よ。こんな雑魚くらい、ちゃちゃっと倒しちゃいましょ」
「なら俺は、さっき拾ったパンを食べながら、女忍者の尻を叩かせてもらうぜ!」
「きゃ!? ちょっと勇者! いまは戦闘中よ!」
「おいおい勇者、そういうのはせめて終わってからにしろよな」
「これは駄目なのかよ! わっかんねぇよ、お前らの世界!」
「当たり前でしょ。お腹へったなら後で私がなんか作ってあげるから、拾ったものなんか戦闘中に食べちゃ駄目よ?」
「しかもそっちかよ!」
――勇者一行




