前へ目次 次へ 147/190 「首吊りの樹」 丘の上には、たった一つ、大きな樹が生えている。 大樹の枝は、太く長く。緑の葉を広げ、豊かに実った果実は、風に乗って甘い香りを麓(ふもと)まで運んでくる。 大樹の名は、首吊りの樹。 果実と一緒にゆらゆら揺れるのは、罪人の体。 罪を犯した者は、縄で首を括られ、大樹の枝に吊るされる。 死体はやがて腐り、熟れた果実のように地に落ちて、大樹の養分となる。 大樹も果実も、罪人の血と肉を吸って、大きく育つ。 今年も大樹と果実は豊かに実り、罪人と葉は静かに揺れる。