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「センザンコウ」

「なに!? ここに来ればセンザンコウが見られると聞いたのだが、技の名前ではなかったのか!?」

 ――強さを求める格闘家



 全身が鎧のように固い鱗で覆われた生き物。

 名前ほど姿形(すがたかたち)は知られておらず、それゆえ誤解の多い生物でもある。

 名だけを知った者たちが、必殺の技や名刀を求めて探しに来るが、事実に落胆して帰っていくことも、そう珍しいことではない。

 せめてもと腕試しに挑む者もいるが、その愛くるしい顔と想像以上の鱗の硬度に、戦意を喪失するのがほとんどだ。


 センザンコウの名だけを世界に広めた一匹が、北の霊峰にいる。

 ただし、とても古くからそこに住み、体も小さな山ほどもあることから、本当にセンザンコウであるかは怪しいようだ。

 

 大きさ以外はほぼセンザンコウであるその生き物は、霊峰の周りをうろついては、ときおり周囲の山を爪でほじくり返す。

 何かを探しているようだが、それを知る者はいない。

 

 かつてこのセンザンコウは、長い舌を伸ばした際、誤って人の集落を一撫でしてしまい、家屋を薙ぎ払ったことがある。

 それに驚き、丸くなった姿を見た旅人が、とぐろを巻いた蛇だと勘違いした。

 それこそが、北の霊峰には逆立った鱗を持つ大蛇が住むという、伝説の始まり。しかしその真実は、ただの見間違いなのだ。

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