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「散弾」
「雨は空から降るだけのものではないと、やつらに教えてやれ」
――王国のカタパルト兵
地上で生きる者からすれば、空は仰ぎ見ることしかできない未踏の世界だ。
だからこそ、空から襲い来る脅威は恐ろしい。
上空から音もなく降下してくる猛禽に、上から弓を射る鳥人族。
夜闇にまぎれ忍び寄るコウモリに、炎を吐くドラゴン。
手を伸ばしても届かない位置からの攻撃に対し、人間はあまりに無力なのだ。
かといって弓や大砲で迎撃しようにも、翼を持つ者は素早く、逃げ場だらけの空で当てるのは難しい。
散弾は、そうした者たちに有効だ。
筒や袋に細かい石や鉄球などを詰め、それを投石機か大砲を用い上空に撃ち出すことで、回避困難なほど散らばった弾が標的に襲いかかる。
飛ぶために生えた翼は大きく、そして脆く。矢の数本は当たらずとも、地上から放たれた弾の雨には、なすすべもない。
なにより、上か下かは関係なく、雨を避けるのはどんな生き物でも難しいのだ。




