最終話 能力の秘密
今回で、最終回となります。
俺は、真っ白な部屋にいた。
何もない空間。
「……どこだ、ここは?」
俺は、ゴブリンの集落にいたハズだが?
『藤澤 博志』
えっ?!
突然頭の中に声が響いた。
「誰だ!」
俺は、何もない空間に呼び掛ける。
俺の名を呼んだ奴はどこにいる?
辺りを見渡すが人影どころか、上も下も真っ白な空間が広がっていた。
『私は、あなた達をこの世界に呼び寄せた者』
「まただ!」
俺の頭の中に、先程と同じ声が響いたが、今、何て言った?!
俺とヤスを、この声の主が異世界へと転移させたっていうのか?
混乱と不安が俺を襲う。
意味が解らない、なぜって事だけが頭の中をグルグル渦巻いた。
い、いや、その前に…… その前に言わなきゃ!
「あ、あの、殺されたところを助けていただきありがとうございます」
俺は、額を床に擦りつけながら、声の主に感謝の言葉を発した。
だって、別の世界とはいえ、生きてるんだもん!
涙がとめどなく出た。
生きてるって素晴らしい!
『あなた方の能力について、お話しするのが遅れました』
うん。
どこのどなたか知りませんが、お礼を言ってるのに無視ですか。
話を進めるんですね、どうぞ。
生き返らせて異世界に送る事が出来る存在にとって俺なんかが感動してても然程の事なんだろう。
ヤレヤレ……
「能力って、ヤスのでしょ?
いやーー、随分助けられましたよ! その力も貴方様が施してくださったのですね。
ありがとうござりまする」
俺は、土下座して感謝した。
そのおかげでホントにずいぶん助かってるのだから、当然の事ですよ!
『この世界に転移したヤスには、あらゆる物体を転移させる能力を備えました』
やっぱり。
「あれっ?
でも、出ない物もありましたよ?」
家とか。
『物体を召喚する物は、レベルによって上限があります。
過ぎたる力は、それ相応の精神と力を行使する者の人格が左右しますので……
ヤスが出せない物は、彼のレベルがそれを召喚するに足りないだけです。
彼のレベルが上がれば、おのずと物品転移許可が拡大されるハズなのですから』
そういう事か?
結構、けち臭いな。
『けち臭くありません。 普通に考えて過剰なくらいなサービスでしょう?』
ん?
今、俺の考えてる事に返事しなかったか、コイツ?
『コイツって、お前……』
「あっ、いや、その、ごめんなさい」
俺は、土下座して謝った。
うん。
完全に考えてる事も筒抜けなんだ、コイツ…… 様に!
『そうですよ』
返事した! ……怖っ!
『怖くありません』
「すいません、考えている事にいちいち反応されなくて、大丈夫ですんで……」
声の主にお願いした。
『それでは、話を進めますね。
世界の理を覆すかの如きヤスの能力を補足しますが、その能力の発動には、藤澤よ、貴方の力が必要なのですよ』
は?
いや、あんな無茶苦茶な能力だもん、一人の力で出来るような事じゃないだろう!
それに、ヤスだけが能力が備わってるって変だったもん。
なんだよ、俺にも能力あんじゃん!
もう、ちょっと、ヤスに引け目かんじてたじゃん!
「ふふふ、やっぱ、ヤス一人の力じゃないんですね! 俺が重要なファクターだと?」
良かった。
単なるお荷物なんじゃないかと俺、思ってた!
思わず笑顔になっちゃう。
『そうですよ。
ヤスが能力を使用する度に、あなたの寿命が減っていく事になっていますから』
「……ん?」
笑顔の俺、頭に?マーク。
何を言われたのかな?
『現在、5年3ヶ月分の寿命を使用しているようですね』
寿命?
5年使用した?
「は? えっ? いや、なんで? どうして?」
全くもって意味が解らない。
何を言い出してんだ?
は? え? 5年、俺の寿命が減ってるって?!
『使用した寿命は、ステータス画面で確認する事が出来ます』
俺の考えてる事解るくせに!
「いや、俺、混乱してるし、確認してるのに無視ですか! ちゃんと話を聞いてください」
『話は、以上です。 この世界で、精一杯生きてください。 さようなら』
ブツッっと言う音と共に、声が聞こえなくなった。
はぁ?
「いや、いや、いや、いや、ふざけんな!!」
都合が悪くなったから帰ったんだろ?
俺達を転移させた理由とかもっと話す事あんだろ?
いや、そんな事より、
「おい! なんで、ヤスが能力使うのに必要なのが俺の寿命なんだよ!
どんなシステムだ! ちゃんと答えろ、この野郎!」
力の限り叫んだが、返事はなかった。
汚ねぇな!
そして、俺の意識が途絶えた……
◇◇◇
朝――
ベッドの上で俺は目覚めた。
「なんだったんだ、……夢か?」
それにしては、リアルだった。
夢だったら、確実に悪夢だぜ……
だが、俺は、ソレを夢と割り切るほど楽観主義者でもなかった。
喉が渇く。
緊張?
俺は、怖いのか?
いや、普通に怖いよ…… 確かめるのが。
ゴクッ
「や、やってみるか……」
唾を飲みこみ、試す決意をした。
「ステータスオープン!」
俺は、呟いた。
「……」
俺の目の前に、半透明の板が現れた。
そこには、文字や数字が羅列されたものが表示されている。
「うっ!」
吐き気をもよおした。
半透明の板には、残り寿命と使用した寿命が表示されている。
頭がおかしくなりそうだ。
「お、おい、どういう事だよ?」
仕様寿命の数字がカシャカシャ進んでいってる!
「おいおいおいおい! ふざけんな! どんどん寿命使用値ってのが増えてんじゃねーか!」
言った次の瞬間には、青い顔の俺が靴も履かずに裸足で家を飛び出していた。
ヤスが能力を使う度に俺の寿命が減るシステムなら、どこかであのバカが能力を使っているって事だろ?
何をしてくれてんだよ!
「いたっ! って、おま…… 何してんの?!」
死ぬほど走ってヤスの近くまで行くと、ヤスが、ゴブリンの子供達に物品転移とやらで、俺の命を削ってお菓子を出してあげていた。
昨日までなら、子供にお菓子をあげてるって、ほほえましい光景だったろう。
だが、今じゃ、悪魔の所業に見えるぜ、ヤス!
「や、やめろ! ヤス! もう出すなぁーー!」
俺は、ヤスに飛びついた!
これ以上、物を出現させないからな!
「な、な、なんスか?」
「なんすかだと? 黙れ! この悪魔め!」
俺は、ヤスの口に手でふさいだ!
もごもご言ってるが、兎に角、落ち着けこの野郎!
「ヤス! 落ち着いて、よく聞け………」
・
・
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「そういう事だったんですか……」
俺は、ヤスに同じ説明を三回繰り返して、やっとのことで理解させた。
イラついて寿命が縮む思いをしたが、おかげ様で確実に寿命が縮んだ。
「あ、じゃぁ、物出さない方がいいじゃないですか!」
「うん、さっきからそう説明してるよね、ヤス」
「組長の説明、解りにくいんっスよね」
この野郎、ぶん殴ってやりたい。
「いいか、ヤス。
これからはな、俺の指示以外で物を出すな! 決まりだ! 絶対だ! 約束だ!」
俺は、まさに命がけ、必死でヤスに言った!
俺の寿命が縮まるのに、俺の意思じゃなくてヤスの意思で能力が使えるなど、理不尽極まりないぜ!
「……解りましたよ」
凄い、不服そう!
なんなの?
「俺の説明をちゃんと理解したよね、ヤス! お前が能力使うと、俺が早死にすんだよ?」
「はぁ」
不安な返事!
しかし、これでヤスのチート能力が使えなくなった。
いや、正確には、使えるんだけど、使わせるかよ!
「なぁ、ヤス。
この集落も、人口、規模、生産能力がかなり高くなったし、そんな能力が必要な場面なんて、この先そうそう無いだろう?
それに、この世界はこの世界に前からいる奴等のもんだ。
この先は、能力とかじゃなく、今まで以上にみんなと協力して、自分らの力でやってこうぜ!」
誰かの力に頼る発展は、借り物の発展だ。
そんなのその内、無理がきてダメになっちゃうもんだ。
皆が自分の力で精いっぱい生きてこそ世界が発展していくんだ。
少なくとも、今の俺は、そう思えるようになった。
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◇◇◇◇
懸案だった、人間の街へ藤野組から生産物の販売を始める事になった。
ゴブリン達が一生懸命作った農作物を大量に持って俺とヤスが販売しに人間の街に向かった。
異常なチートが使えなくなった今、金の力で集落の発展を目指す!
「いいか、ヤス! 金は、力だ!」
その言葉通り、俺とヤスは金をガンガン稼いだ。
そして、金が積みあがると、俺は物品販売員として人間を雇い入れ、更に各地の人間の街へと販売の手を広げた。
日本の野菜は優秀で、高評価と共に高価格で好調な販売が出来たのだ!
「ヤス! もっとだ、もっとガンガン稼ぐからな!」
「組長、儲けるっス!」
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◇◇◇
数年後――
集落は、見違えた。
集落で栽培した作物が、売れに売れ、大儲けしたのだ。
俺達は、その儲けを元手に更に、商売の手を広げた。
金が金を生む。
儲けの連鎖。
腰蓑だけの原始人みたいな格好をしたゴブリンなど、ここには、もういない。
皆洋服姿だ。
田舎貴族などには負けないくらい洗練した立ち居振る舞いが出来るゴブリン達だぜ!
教育にも金をかけ、知的水準は、この世界でトップクラスだろう。
識字率はほぼ100パーセント。
基本的な読み書き計算は設立した学校で無償で教えている。
各世帯の収入が上がり、各家庭が馬車をもつようになるころには集落は街へと変わっていた。
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◇◇◇
数百年後――
フジサワクミの街は、多くの人が行き交う一大商業都市として世界にその名を轟かせている。
世界の富は、フジサワクミに集まると言われる程に……
石畳に舗装された道路を進む自動車が庁舎に停車した。
第15代 藤澤組 組長 ガルバス・フジサワが数年ぶりに、このフジサワクミやってきたのだ。
自らの祖先でもある「ヒロシ フジサワ」
そして、その従者である「ヤス」が建国した始まりの地。
そんなフジサワクミの街に初代藤澤組長の銅像が建てられる事になった為、その除幕式に呼ばれたのであった。
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「では、我ら、ゴブリンの地位向上と発展の礎を築かれた、偉大なる指導者、フジサワ様とヤス様の銅像の除幕式を、おこないます!」
会場にアナウンスが流れて、除幕式が滞りなく進行された。
数時間後――
ガルバスは、静かになった会場で、銅像を見上げていた。
「見えますか、この発展を遂げたこの街の姿を!
ご先祖様のお陰で、ゴブリン達は、こんなに豊かになりましたよ」
そう、呟き、ガルバス・フジサワは一筋の涙を流すのであった……
「って、感じでこの先の未来にな、みんな幸せになるんだよ!
だから、今は、俺の言う事を聞いて、文句を言わずに、働け!!」
鍬を持つ俺は、不平を垂れたゴブリンに未来予想図を語ってやった。
「えぇ~、子孫が豊かでも、俺達は?」
「誰だよ、ガルバス・フジサワって?!」
「たまに手伝いに来てくれたと思ったら、そんな事いって…… サボってるんじゃないですか? 組長」
「うぐぐ、お前等……」
ゴブリン達が生意気にも俺に意見してきやがった。
「あのな、頑張れば、頑張るだけ、豊かになれるってもんなんだよ。
今だって、ちょっと前に比べりゃ天国だろう? なっ? ほら、理解したらちゃっちゃと働け、この野郎!」
心の広い俺は教え諭してやる。
「もう、組長ったら……」
「解りましたよ!」
「ほら、みんな、やらないと終わんないぞ!」
「組長のお守してる暇ないぞ!」
ゴブリン達が作業に戻っていった。
「……頑張れよ」
俺は、ポケットから煙草を取り出し吸った。
今日もいい天気だこと。
そうそう、俺の寿命だが、数年で恐ろしい事に20年近く減らされた。
なんだかんだ言って、ちょこちょこ必要だったからな。
だけど……
あの山の湧き水!
アレを飲むと俺の寿命が延びたのだ。
不思議な力が宿る水らしい。
ま、俺にだけみたいだけど。
俺達をこの世界に連れてきてくれた…… 神様? なのか何者かは知らないけど、俺にもちょっと優遇処置をしてくれてたって事だと思う。
そうじゃなきゃ、こんなご都合的な事が無いだろうからな。
でも、もうヤスの能力は出来るだけ使わない。
みんなで努力した発展じゃないと意味が無いからな。
張りぼてだ。
まやかしの発展なんぞ、俺やヤスが死んだら終わりってもんですよ。
おっと、そうそう、ゴブリン達に言ったが、現状に満足してもらっては困るぜ!
チートを使えない今、前に進むためには、ゴブリン達、そう皆の労働力が頼りだ。
豊かな生活を手にする為に、みんな! 貪欲に行こうぜ!
俺は、豊かで文化的で楽しい日々を送る為に、今日も、ゴブリン達を一生懸命働かせる。
そう、文化的な明日の為、俺は止まらないのだ!
今まで、読んでくださりありがとうございました。
短い間ですが、お付き合いいただき、ホントにありがとうございます!
また、読みたいとか、ご意見とかあれば、お気軽にお声かけください。
少ないですが、毎回見てくれた貴方、嬉しかったです。
よろしければ、自分の他の作品も見て、気に入ったらまた応援してください。
書いてて楽しかった。
では、まだ連載中の作品もありますので、小説家になろうで、これからも頑張ります。




