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第4話 農業やってみるか

完成したものとは?

 頼んでいたアレが完成したとの報告を受けた俺は、作業班のゴブリン達に手を引かれ山へと入って行った。



「ホントに出来た…… やったなぁ、おい!」

 俺は、完成したソレを指差し声をあげた!


 念願の水路の完成だ!


 木をコの字型に加工した物をつなげた水路。

 俺の居る綺麗な湧き水の出てるトコから集落まで水路の設置が完了したのだ!


「組長、お願いします!」

 ゴブリンが俺の背中を押した。

 水路の水をせき止めている栓を外せとの事だ。

「皆が頑張って作業してくれたのに、俺なんかが最後のこの作業をして良いのかな?」

「いいから、早く、組長!」

「お、おう。 じゃぁ行くぞ!」

 ゴブリン達に急かされ、俺は栓を外した!


 水路を水が走り始めた!


「や、やった!」

 嬉しくて、俺は、いや、俺達は走る水を追いかけた!


 カーブや水路の継ぎ目も問題なく水が通過していく。

 そして、ゴブリン達と水は、俺を追い越し先に山を下りて行った。

 早いよ、みんな……


 水路の設置。

 この事は、俺達の集落にとって、とても大きな事だ。

 今迄、雨水を貯めておいたり、山の湧き水を汲みにいったりしていたのが無くなるんだからな!

 衛生的に怪しい水を摂取する事が無くなるし、綺麗な水を山から汲んで帰るのに4時間程度かかっていたその時間が浮く。

 浮いた時間で、別の作業が出来るようになる!


 集落発展にまた一歩前進した!



「ハァ、ハァ……」

 皆から大分遅れて俺は集落に到着。


 水路の端からちゃんと水が出てる!

 フラフラしながら、水路から出る水を受ける為に置いておいた水瓶のとこまで移動した。

 そして、手で掬って飲んでみた。


「ハハハ、冷たくて旨い!」

 声が出た。

 嬉しくて、疲れが吹っ飛んだ気がする。

 ……しかし、ホントに旨い水だな?



「水路の完成っスね、組長!」

 ヤスが俺のぞばにやってきた。


「おう! ヤスのおかげだぜ、ありがとな!」

 作業人員の割り振り、材料の加工や設置を指揮してくれたヤス。

 ヤスが居なかったら水路なんて引けなかっただろう。

 頼りになる奴だ。

 むしろ、俺なんて役立た…… いや、悲しくなるので、その事は考えないようにしよう。


「ところで、ヤス。 家の進捗状況は?」

「最初の家がもうすぐ完成ッスよ。

 ゴブリン達も慣れてきたので、次からは、人員を分けて複数の棟を同時に建てるつもりッス」

 ……凄いね。

 俺は、考えていた案をヤスに話す事にした。

 ヤスにアイデアを形にしてもらうのだ。

「あのさ、こんなのどうだ? これなら一気に住宅問題解決出来ないか?」

 俺は、地面に横長の長屋タイプの絵を描いた。

 ヤスが興味深そうに俺の絵を眺めているが、どうだろうか?

「組長、部屋の間は、壁で仕切ってるだけッスっか?」

「そうだよ、土間と部屋が一つありゃ良い」

「結構、単純な造りっスね。

 でも、これなら造りが単純だから作るのも短い期間で出来そうッス」

「だろう?

 一つ完成したら、数世帯のゴブリンが入居出来るからな、住宅問題が早く解決すると思うんだよね」

 取り敢えずは、簡単な建物で良いから、早く作ってもらう。

 戸建て住宅は追々作ればいい。


「それじゃ、今作ってる家が完成したら、すぐに取りかかってくれ。

 野宿に毛が生えた程度の住まいのゴブリン達を、早く「 家 」に住まわせてやりたい」

「了解ッス! 組長は、優しいッスね」

 ヤスが笑っている。

「文明的、文化的生活の第一歩だ!」

 生活環境の改善が着々となされているのを実感するな!


 取り敢えずは、住のめどはたった。

 次は、食だ!

「ヤス、鍬とか農具を用意出来るか、欲しいんだけど」

「大丈夫だと思うっスけど、畑でも、やるんですか?」

「そうだ、水が確保できた今、今度は畑を作って、自給率を高めていく!」

 俺は、力強く宣言した。

 ヤスよ、俺を尊敬しろ。

「じゃ、種とかも必要ですね」 

「当然だ! ……出来る?」

「いや、わかんないッス。 でも、駄目元じゃないッスか」

「お願いします」

 俺は、ヤスに頭を下げた。

 ……コメとか野菜をこの前出したよね?

 出来るだろ?


「う~~ん、う~~ん!」

 ヤスが、うんうん唸っている。


ボンッ!


 白い煙と破裂音!

 すると、農具と数種類の種が出現した!

 相変わらず、スケーな…… どうなってんだ?


「この前みたいに食べ物を出してもらえば良いかな?

 わざわざ苦労して畑なんてしなくても良いんじゃないかと思えてきた」

 農具とか出してもらって言うのもアレか。


「組長。

 楽して何でも手に入る。

 それは、ゴブリン達にとって、良い事っスかね?

 自分達で考え、失敗しても行動する。

 そうやって自立させるのが、集落の発展につながると思うっス」

 ヤスの癖にまともな事を……。


「……キャラ変わってんじゃん」

 アホキャラの癖に。

 ちょっと聞いてみただけなのに、何? 俺が怠け者みたいな雰囲気になってんじゃん。

 今の、無かった事にしよう。

 俺は、言ってない!

 うん。

「当たり前だろう?

 ヤス、すまん。

 試すような事を言って! 俺も全く同じ考えだ」

「流石、組長っス!」

 よし。

 長居は無用。

 地面の農具と種を持てるだけもって、その場を離れた。



◇◇◇


 手の空いてるゴブリンを集めた。

「では、今から、畑をつくる!」

 ゴブリン達に向かって俺が言ったら、ゴブリンがキョトンとしている。

「……あの、はたけって何ですか?」

 うん。

「そこからか!」

 これは、大変だぞ。


「こう!

 こう耕して、そっから畝を作って種をまくだろ? そしたら、食べ物が出来るんだよ」

 俺は、ミニサイズの畝を作りながら説明した。


「あ、人間達が作ってる奴だ!」

 小さいゴブリンが言った。

 なんだと?!


「そこの君、ちょっと前へ!」

 俺は、発言した小型ゴブリンを呼んだ。

「はい、組長」

 よし、素直そうだ。

「畑を見た事あるんだな、お前!」

「人間が、こんな感じで小山にした土をいじってました!」

 畝の事だろう。

「それが、畑だ。

 そして人間は、畑で食べ物を栽培しているのだよ」

 俺は先生のように教え諭した。 


「でも、こんな事しなくても、食べ物なら森に行って採ってこればいいんじゃないんですか?」

 ゴブリンが手をあげて質問してきた。

 

「そこゴブリン君、良い質問です。

 森には食べ物がありますが、毎回ちゃんと採取出来るとは限らないだろ?

 今日多く取れても明日はどうだ? つまり安定してないよね?

 危険な山に毎回多くの時間を使って入らなきゃなんない。

 その点、畑だと安全だし、収穫量とか大体の予測が立つだろうし、安定して採取出来る!」

 俺の説明に、ぽかんと聞いてるゴブリン達。

 ちゃんと解ってんのか?

 少々不安では、あるな。

 よし、もっと解り易いほうがいいな。


「とにかく、俺の指示通り作業しろ!」

「はい、組長!」

 ゴブリン達が元気に返事した。

 ゴチャゴチャ説明するより、この方が早かったな。


「こんなもんか!」

 ふう。

 俺は、みんなに指示をだして、見よう見まねの畑を作った。

 俺は都会育ちなので、農業なんてやった事ない。

 テレビで見た事はある。

 多分こんな感じだろう的にだが、頑張ってみました。

 こんなもん、適当だ、適当!


「組長、こんな感じで良かったんですか?」

 真っすぐな目で俺に聞いてくるゴブリン達。


「ん? まぁ…… 多分」

 ……適当って思ったが、良いのか?

 丸一日、沢山のゴブリンを働かせたのに、やっぱ駄目でしたってなったらどうしよう……

 急激に不安で、気持ち悪くなってきた。


「お、お疲れ! 今日は、ありがと、明日またな!」

 逃げるように、俺はその場を離れた。

 

 今日は、早く寝よう。



◇◇◇


次の日の朝――


「組長ー! 組長、起きてください!」

 ミドジが俺の部屋に入ってきた。


「眠い……」

 強引に外に連れ出される俺。

 一体なにがあった?

 


「見てください!」

 うつらうつらしてた俺は、ミドジのデカい声で目覚めた。

 やめて、心臓に悪いから…… ここ何処?


「……え?」

 俺の前には昨日作業した畑が……


「えーーー!!」

 昨日植えたばかりなのに、芽が出てるし!

 いくら、農業しらないっつても、流石に昨日植えて今日芽が出る訳が無いって解る!


「やりましたね、流石、組長!」

 ミドジに言われた。

「お、おう……」 

 でも、これはこれで助かる。

 食料問題の解決になるからな。


 もしや……

 俺に秘めたる農業の才能があったのでは?

 ほら、俺だから。


「そうと、決まれば…… ミドジ、昨日の農業班を集めろ!」

 ミドジに男らしく命じた。

 そう、俺は、ゴブリン達を使い畑の拡張を行う事に決めたのだ!



◇◇◇


更に次の日――


 昨日より、作物が成長していた。

 もう今日明日には収穫できんじゃね?


 俺は、疑念であった自身の秘められし天才的農業の才能を確信して震えた。

「俺に農業の才能があったなんて……」

 神の手ともいえる自分の手を見つめた俺は、決意に燃えた!


「そこ! ちゃんと、水をまくように!」

「そっちは、雑草を抜け!」

 俺によるゴブリン達への天才的農業指導。


「畑を拡張だぁー! 耕せ、皆の者ーー!」

 更に畑の拡張作業が行われる。

 土地なら、アホみたいにあるからな!



◇◇◇


 更に更に次の日――


 初の収穫を迎えた!


「スゲーー、スゲーー!」

 大量の野菜や、果物を手に入れた!


「組長、こんなに!」

 ゴブリン達が大喜び! 俺も嬉しい!

 地獄の収穫作業が待っているが、今は、ゴブリン達と喜びを分かち合った!

 大根をかじり、スイカを食べ、みんなの笑顔が集落に広がる!

 これだけあれば、ゴブリン達が飢えることも無かろう。


 収穫が進むにつれ、作物の山が出来る。


 明らかに余剰で過剰。

 だが、俺に考えあり!


 それは、売る事だ!

 安定した生活の先に訪れる人口増加に備えるのだ!

 はい。

 だから更に畑の拡張!



◇◇◇◇



時は流れ、数週間、数か月が過ぎ去った――



 集落には長屋のような建物がいくつも建っている。

 今や、全てのゴブリンが、長屋住まいだ。

 しかし、人口増加を見越してヤス棟梁の元、長屋の建設が続いている。

 俺の畑拡張路線によって畑は広大な面積となっていた。


 周辺のゴブリンの集落の者が藤澤組の噂を聞きつけやってきた。

 集落の人口が爆発的に増えたが、拡張政策のおかげで食料と住居は間に合った。

 

 集落の敷地は、とんでもない広さになっているが、更なる発展の為、俺は拡張を続ける。

 人は歩みを止めた時、成長が止まる! などと頭のイカれた思想の元、頑張った。


 やがて明らかに、人手が足りなくなってきた。

 当初から人手は足りていなかったのだが、このところその傾向が顕著に見受けられるようになった。

 目に見えて、ゴブリン達が疲弊しているからだ。



「ミドジ! ミドジはおるか!」

 俺の呼びかけに、ミドジがフラフラと畑から出てきた。

 管理者であるミドジまで……


「お前まで…… そこまで、手が足りないのか?」

「全然、人手が足りませんのじゃ……」

 これは、限界だな。


 よし!


「ミドジ、何人か連れていっていいから、野菜もって出かけろ!

 周辺や遠くのゴブリンの集落から人を集めろ!

 野菜配って、こんな美味しいモノが毎日食べれる楽園のような素晴らしい所ですとか言って集めてくるんだ!」

「なんで? せっかく作ったのに」

 野菜をタダで渡す事にミドジが難色を示す。

「バカめ!」

 既に収穫した作物は、食べきれない程の量になってるじゃん!

 捨てるくらいなら有効活用した方が良いのだ!


「ミドジいいか?

 つべこべ言わず、他の集落のゴブリンに野菜や果物を食わせろ!

 藤澤組に来たら、腹いっぱい食べれるって言え。

 ここいらの集落で話題になるくらい浸透したら、移住者がバンバンくるぞ! バンバンだそ! バンバン! そしたら、一人一人の負担が減って楽できるハズだ!」

「そんな、上手くいきますかね?」

 ミドジがぐずぐず言っていたが、半ば強引に出発させた。


◇◇◇


 そして、ミドジが出発して数週間が過ぎた頃……


 移住を求めて藤澤組にやってくる者が現れ始めた。

 ゴブリンやら、犬っぽいのとか、多種多様な種族がやって来るようになった。

 そして、また、来るように……


 俺達は、新規住民に住宅と仕事を世話する。

 公約通り腹いっぱい食える生活を与えたのだ。


「よしよし、ミドジ達、上手くやってくれたな!」

 後は、噂を聞きつけて、人がどんどん増えるはずだ……


 俺の望む文化的生活が近づいている。


 労働人口が凄く増えた。

 安定した生活は、人生に潤いを与える。

 趣味などに時間を使う奴がちらほら増えてきた。


「まだまだ、これから…… もっと、もっと文化的な生活と幸せを皆に!」


 俺は、目の前に広がる広大な畑と沢山の長屋を見ながら、みんなの幸せを願った。

人工が増えた集落にて、藤沢の次なる施策はいかに?


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