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街かど宿屋のドラゴンさん  作者: 抹茶さめ
2話
89/93

32泊目

 


「......」

「......」


 応接室にある時計が時間を刻む音が単調に響いていた。


 き、気まずい!


 応接室ある椅子に座っている私の目の前には黒いフルプレートメイルを着ていて、顔がまったく見えない兜を被った男の人が腕を組んで座っている。


 かれこれ三十分くらい向かい合ったままで会話がない。


 気まずい! 物凄く気まずい! 全然動かないから逆に怖いんだけど?!


『んーなんだぁこの圧迫面接ぅ?』

「っ!」


 いきなり頭に響いた声に私がビクッとする、すると騎士さんがピクリと反応した。


『ちょ、ちょっと!? いきなり話しかけてこないでよ! ビックリしたじゃんか!』

『念話でいきなり話しかけてぇ来るなって言うのはよぉ無理じゃねぇかいねぇ? 念じる話で念話なのによぉ?』

『うっさい! と言うか今まで何してたの? ラヴァちゃん』

『何って、寝てたんだよぉ? 嬢ちゃんの中でもなぁ、気持ちよく寝てたら何か慌ただしい感覚が伝わって来たって訳ぇ』


 ラヴァちゃんは普段は私の中に居る、どういう原理か分からないけど、一回だけ説明してもらったけど理解出来ませんでした。


 いや、理解しようしたんだよ? 話が長くて寝ちゃったんだよね。


『それでぇ? 目の前の厳つい騎士はなんなんだぁ? てか、どういう状況だこれぇ?』

『あ、えっとねさっきね―――』


 要点だけを念話でラヴァちゃんに伝える。


『ほぉー、嬢ちゃんがなんでぇ女王様に呼ばれたかは知らねぇがぁ、スミカが倒れたのは間違えなくぅ、龍熱のせいだっちぃー』

『りゅう、ねつ?』

『おうよぉ、ドラゴンだけが掛かる病でなぁ? 一年に一回は絶対発病するらしぃんだな、高熱だけらしぃんだが、数日は寝たきりだぞい』

『え?!』


 私が驚いて目を見開く、それと同時に応接室のドアが開いてサテラちゃんが疲れた表情で入ってきた。それを見た? 気付いたのか騎士さんが組んでいた腕をほどいてから兜がサテラちゃんに向く。


「む、サテラ殿、スミカ様の容態は?」

「ぬぅ......『龍熱』じゃな、間違い無いのう」

「馬鹿な......二ヶ月程早いぞ?」

「妾も驚いておる、今はサーシャが付いて看病をしている」


 そう言ってサテラちゃんが私の隣に腰かけた。


「っく、発症してしまったのは仕方がない、こればかりはどうにもならん」

「そうじゃな、数日はまともに会話もできんしな、あぁそうじゃった騎士長、人払いしてくれて助かったのじゃ」

「騎士として当然だ、だが......」

「なんじゃ?」


 サテラちゃんが背もたれに背中を預けてから騎士長って言うのかな? その人に視線を向ける。すると、騎士長さんが兜を脱いだ。顔に大きな斜めの傷痕、白髪混じりの黒髪をオールバックにした中年の男の人だった。


 あ、男の人って言うのは最初っからわかってたけどね、声で。


 脱いだ兜を床に置いて腕を組んだ。


「スミカ様が倒れられたのは現状最悪の展開なのだ」

「なに?」


 サテラちゃん目を細めて騎士長さんを睨む。睨まれた騎士長さんがそれを受け止めつつ、私の方を見てきた。


「ティナ・サンシェット嬢、いや、サンシェット殿」

「は、はい?!」

「我々がここに来たのは貴女をいち早く確保し、女王様とあって頂くためだ」

「は、はい?」

「じゃからその理由を説明せよと言っておるのじゃが? スミカが倒れた今、現状の報告役は妾じゃぞ?」

「......はぁ、そうだな」


 重い溜め息を吐いた騎士長さんが私達二人の方をしっかりと見据えた。


「二日ほど前だ、エメル公国の内乱が終結したという情報が飛び込んできた」

「え! 戦争が終わったんですか?!」


 私が少しだけ腰を浮かせて言うと騎士長さんが頷いた。


「あぁ、貴方の祖国の戦争は終わった。だが......」


 言いにくそうに言葉を切る騎士長さん。


「だが、最早エメル公国と言う国は存在しない」

「......え?」

「......ッチ、胸糞悪いのう」

『あぁ、そう言うとことかぁい』


 サテラちゃんが舌打ちして顔を反らした、ラヴァちゃんもその言葉で何かを把握したみたい。


「え、あ、あの、エメル公国が存在しないってどういう事......ですか?」

「言いたくは無い、だが言わないのは貴女にとっても辛いだろうが受け止めてくれ」

「は、はい」

「エメル公国の王が討たれ、反乱軍が勝利したのだ。その為、エメル公国は名前を変え、反乱軍の指揮をしていた男の名前を取って『サジェ王国』と名乗ったのだが―――」

「ッ!」


ズキッ! と頭痛が走って頭を抱えた。


「ティナ? どうかしたのかえ?」

「サンシェット殿?」

「あ、いえ、何でも無いです。続けて下さい......」

「では続けるぞ? サジェ王国と名乗り出した国の王、反乱軍を指揮していた男が我が国にある手紙を寄越してきた。内容は『ティナ・サンシェットと言う狐族の少女の引渡せ』という物だ」

「え......?」


気が抜けるような声が私の口から出た。






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