28泊目
「こんな感じでいい? 母様」
「うん、大丈夫」
ユリスちゃんが裏庭の空いている場所に見たこともない複雑な魔方陣を木の棒を使って地面に描いた。
「なんですか? それって」
「えっとね、『契約の魔方陣』って言うんだけど、主に使うのは奴隷とかを契約主から離れられない様にするのに使うかな」
「え?!」
それを聞いて後ずさった。
「主にだけどね、別の用途もあるんだよ? 例えば精霊と契約したりとかね」
「精霊と契約?」
そんな事出来るの?
「後二、三年もすれば教えてくれるし、実際に契約するんじゃないかな? でも十人やって、一人契約出来るかどうかだけどね」
「え! 少ない!?」
「気まぐれだからね、んーと......とりあえずあの子を呼べばいいかな? 『我の願いに答えよ、そして姿を現せ』『精霊召喚』」
スミカさんが呪文? を唱えるといきなり光の柱が現れた。目が痛くなるほどの光を発している柱が収まるとそこには居たのは純白で一本の角が生えている翼の生えた馬だった。ゆっくりとその馬が瞼を開ける。
『ん? おお! 誰が我を呼んだかと思えばお主か、久しいの』
え! あ、頭の中で声がする!?
『おっと失礼、狐族の娘よ、我は念話でしか話せんのだ。逆に念じれば喋らずとも会話できる、さてスミカよ、何用だ? 顔を見たくて呼んだわけではあるまい?』
「話が早くて助かるよ、この娘と契約出来る精霊居ないかなって思ってね」
「あわわ!」
隣に立っていた私の両肩をスミカさんが掴んで、白い馬の前に突き出された。
『成る程、精霊魔法使いか......ん? ほー、面白い娘だな既に『精霊の加護』を授かっている、しかも『器』が大きい』
「器? ですか?」
『うむ、『器』というのは魂の余白だ、それが大きければ大きいほど強力な精霊と契約できる』
魂の余白? 私は首を傾げながら水の入ったコップを思い浮かべた。
「んー......半分くらい水の入ったコップにさらに水を注いでも溢れなければ大丈夫? って意味ですか?」
『半分の水が入ったコップが其方だとするなら注ぐ水は精霊と言う事だな? ふむ、間違いではないな、今はそう思っておけば良い、さて、お主に合う奴は......』
純白の馬が目を閉じて、鼻を鳴らしながら翼をはためかせると光る羽が数枚舞ってから地面に落ちる、すると溶けるように消えた。
『ふむ、うーむ......中々難しい』
「もうイフリートとかで良いんじゃない?」
『ダメだ、奴でもこの娘の『器』だと空きが出来る』
「うっそ、そんなに?」
『うむ、出来ればピッタリ収まる奴が良いのだが......ん? 何? お主が行くのか?! いや、ダメとは言わないが、大丈夫か? 確かに相性は良さそうだが......』
お馬さんが何かブツブツと頭の中で喋ってるんだけど。何かくすぐったい。
『娘よ』
「は、はい!」
『其方、名は?』
「ティナです! ティナ・サンシェットと言います!」
『そうか、ティナよ、お主と契約したいと言う奴がいるのだが......ちと、礼儀知らずで―――』
お馬さんの言葉を遮るようにボフンッと白い煙をたてながら黄色くて丸いモコモコした玉が突然現れた。何この毛玉?
「毛玉?」
「毛玉だー!」
「あー......」
私が首を傾げ、ユリスちゃんが目を輝かせながら尻尾を振る、何故かスミカさんが苦い顔をしていた。すると、毛玉が震えだしくるりと向きを変える、つぶらな紅い瞳にちょこんと突き出た口と黒い鼻先、うわー! 可愛い―――
「毛玉ァ、毛玉ァってェうるせぇんだよぉ、ああん? ぶち殺されてぇのかぁ おおん?」
可愛い見た目からは想像も出来ないドスの効いた声を発する毛玉を見て、私は目を擦って二度見する、ユリスちゃんの尻尾がしゅんと垂れ下がった。
『うっさいわ!』
サクッとお馬さんの角が毛玉に刺さった。
「ダァァァァアアアアアブラァァァァアアアアアア!?」
刺された毛玉が地面に急降下してぶつかって、地面をゴロゴロと左右に転がった。
『すまない、精霊の中でも一番の力の持ち主なのだが性格が曲がっておるのだ』
い、嫌な予感的中......
毛玉さんの声は若本ボイスで脳内補完してください......難しい




