27泊目
「結構深いなー、少し染みるけど我慢してねユリス」
「うん!」
ユリスちゃんの袖をまくってから水で濡らしたたおるで少し乾いた血を拭き取ると、スミカさんが紅い液体の入った小瓶の蓋をとって中身を一気に振りかけた。
「ッ!――――――!」
ユリスちゃんが痛みに悶えながら食いしばっているのが伝わってくる。うわ......痛そう。すると、手慣れた様子で包帯を巻き終えたスミカさんがポケットからもう一本、紅い液体の入った小瓶を取り出した。
「これで良しっと、多分痕には残らないと思うけど、帰ったらこれ飲んでね?」
「うん! ユリス頑張ったよ! 痛いって言わなかった!」
「おーすごいすごい」
「んふふ!」
ユリスちゃんが満面の笑みでスミカさんに頭を撫でられていた。今私達が居るのは応接室って所で、普段は偉い人と話をする時とか仕入れ先の商人さんと話をするときに使う部屋だ。
「それで! スミカさん? どういうことですか? サーシャちゃんの他に子供居るんですか?」
「え、えっと......」
いつもならさくっと答えてくれるスミカさんが苦笑いしながら頬を掻いていると、ユリスちゃんが私の方を向いた。
「ユリスと兄様はね、母様、スミカ様に育てられたの」
「え?」
「孤児だから、捨てられて、泣いているところを拾ってくれた。だから母様」
「ほ、ほら。雨に濡れながら泣いててつい......」
ついって、子犬を拾ってくる感覚で子供拾ってきたんですか?!
「もしかしてサーシャちゃんも?」
「あ、サーシャは違うよ? 血は繋がってないけどね」
よ、よくわかんない。
「それで? 私の可愛いユリスに傷付けたアホはどんな奴だったの?」
サラッと私のって言った!?
「うんとね、黒くて、綺麗な剣持ってた」
「......」
それを聴いたスミカさんの眉がピクリと動いて冷たい視線を私に向けてきた。
「ティナ?」
「はい!?」
「もしかして『ステータスカード』作った?」
「え? あ、はい。作りましたけど......?」
私はごそごそっとポケットから銀色の板を取り出してスミカさんに手渡した。
「そ、それですけど?」
「......そうか、そういうことか」
ジッとカードを見つめたスミカさんが何かを納得したように呟くと、パキャンッと言う音と共にカードを握りつぶした。
「えええええ?!」
私が驚愕していると、カードは光の粒子になって消えちゃった。再発行に金貨三十枚なのに! そう思っているとスミカさんが真剣な表情で私を見つめてきた。
「カードを作った時に何か変わったこと無かった?」
「え? 変わったこと? ですか?」
突然言われて私は首を傾げた。んー? 何かあったっけ? 係の先生に教えてもらいながらやっただけだから変なことなんて一つも―――あ。
「あ、そういえば。私がカードを作ろうとした時に部屋の灯りが消えたんです」
「灯り? 灯りって光る石? それともランプ?」
「ランプです、黒いカーテンで囲われた部屋だったんで真っ暗になっちゃって、でも直ぐに先生がランプを付け直してくれたから全然気にしてなかったんですけど......」
あの時はビックリしたなー、リースちゃんとサラさんが悲鳴上げるくらいビックリしてたし、変えたばっかの新しいランプって先生も言ってたしね。
「そう、分かった。ありがとう」
いつも通りの明るい雰囲気に戻ったスミカさんほっとして、疑問だったことをユリスちゃんに聞いてみることにした。
「あ、あの、なんで私を守ってくれたの? ユリスちゃん」
「サーシャに言われたから」
「サーシャちゃんに?」
「うん、今日はサーシャの帰りが遅くなる、兄様とメイアはサーシャの付き添い、だから私が後を追った」
メイアさん? あ、もしかして背が高い人かな?
「あーそう言えば図書館に寄るから遅くなるって言われたっけ」
「うん、それでね、サーシャが言ってた最近見られてる気がするって、サーシャじゃなくて貴方が」
「私が? なんで?!」
「知らない、でも襲われたのは事実」
そ、そんなぁ......なんで襲われるの? 私、何もしてないのに!
「まー当分は襲ってこないと思うけど、ティナも自分を守る事が出来る様にならないといけないかな? サーシャやユリスがいつも側についてるって事は無理だし、学園内なら安全だとは思うけどね」
「うう、まだ精霊魔法も上手く使えないから無理ですよぉ......」
そういって頭を抱えるとスミカさんがぽんっと手を叩いた。
「あ! 良いこと思い付いた。仕込みは遅れてもいいからちょっと付き合って、ティナ」
「ふえ?」
椅子から立ち上がったスミカさんに笑顔で言われた。何か嫌な予感が......




